見出し画像

第20話「蛇夜」

瞳に映った光景に目を逸らした。何故なら女性の人が、大人の女性が服を脱ぎ出したからだ。あの頃、俺が小四だった頃、袴田のおばちゃんは幾つぐらいの女性だったのだろうか?

五十代、五十代の後半ぐらい。とにかく母親以外で女性の裸を見たのは初めてだった。


一瞬、俺は小四の気持ちに戻って照れてしまう。いや、違うよな?俺は四十過ぎのおっさんなんだぜ。この歳まで独身の大人じゃないか。何を今さら、おばちゃんの裸なんかに動揺してるんだ。


こんな場面で全裸になる袴田のおばちゃん。目の前で蛇苺様は臭そうな鼻息を荒げている。蛇夜たちが女性たちの周りで激しく蠢いては、徐々に幅を狭めて行った。何かしようとしている?


すると、袴田のおばちゃんが甲高い声で意味不明の言葉を叫んだ!


その声に反応して、蛇夜の大群が一斉に袴田おばちゃんへ向かって飛びかかった!何十匹の蛇たちが雨のように降りかかる。あっという間に袴田のおばちゃんに覆い被さると、蛇たちは足元から腰回り、乳房に向かって這いながら登り始めた。


そんな状況でも袴田のおばちゃんは顔を上げて、手を広げながら奇声を発していた!蛇たちは巻きつきながら、身体中を蠢いている。そして、何匹かの蛇が袴田のおばちゃんの口元へ這いずり上がったとき、俺は一瞬だけ顔を背けた!


なんと、口元から次々と蛇たちが、袴田のおばちゃんの口の中へ吸い込まれるように入っていった。目を背けたくなる光景に、俺は思わず嗚咽が込み上がった。口の中へ蛇が入ってるのにも関わらず、袴田のおばちゃんの表情は幸福感に満ち溢れている。


一体、この状況は何なんだ!?


これが儀式ならば、袴田のおばちゃんが生け贄なのか?周りにいた蛇夜たちは足元から這いずり、だんだんと袴田のおばちゃんを隠すまでにした。

どれだけ袴田のおばちゃんの体内へと蛇が入ったのか、下腹が見る見るうちに大きくなっていく。まるで、妊婦さんみたいだ。


ぶくぶくぶくぶく太っていく。蛇たちは穴という穴から侵入して、袴田のおばちゃんの体内へと入り、耳からもケツの穴からも侵入した。眼球を潰して目から侵入する蛇もいた。

その光景は、異様で見るもの全てに恐怖を与えていた。


口元を押さえながら、俺は吐きそうになるのを我慢した。最後まで見たい。その一心で目を逸らさなかった。

そして、遂に蛇たちの重みに耐えられなくなったのか、ぶくぶくに膨らんだ袴田のおばちゃんが地面へ倒れた。


それでも周りの蛇夜たちは、袴田のおばちゃんに覆い被さって蠢いている。祖母たちは何食わぬ顔で、その様子を見守っていた。きっと、この異様な儀式は昔から行われていたんだ。知っているのは村の女だけ。


「蛇苺様、そろそろお召し上がりになりますか?」


突然、祖母はそう言って、地面に置いてある布袋を手にした。遂にあの中身が披露されるのか。一体、何が入ってるんだ?


より一層、鼻息の荒くなった蛇苺様。傍では袴田のおばちゃんが蛇夜たちで完全に隠れてしまっていた。祖母は大事そうに布袋の結び目を解いた。


ハラリと結び目が解けて、中身が露わになった。俺の瞳に映ったモノ。そして、その中身を蛇苺様へ差し上げる祖母。一瞬で全てを悟った瞬間でもあった。


俺は布袋の中身を見て、愕然として項垂れるしかなかった。


第21話につづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?