【エッセイ】 金木犀の香り
人間が忘れていく順番は、聴覚・視覚・触覚・味覚そして最後に嗅覚らしい。
小さい頃、庭の中心に大きな金木犀の木があった。祖母はそれが私が生まれるずーっと昔からある木だと教えてくれたことがある。
秋になると、大きな金木犀の木は緑から黄色に変わり、家中に金木犀の香りが充満する。木の枝を揺らすと黄色の小さな花がシャワーのように降ってくる。よく、枝を揺らしていた私は父親に怒られていたのを思い出す。
私はそんな実家の金木犀の木が大好きだった。
私が高校生の時庭の中心に咲く、あの黄色は