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僕はゴーストライター Story01.

 綾瀬柊介(あやせしゅうすけ)。それが僕の親父の名前だ。親父の職業は脚本家。十年前に脚本を書いた恋愛ドラマ「咲いて散るが如く」が大ヒットして以来、常に第一線を走り続けるトップランナーだ。緻密に作り込まれたストーリー、登場人物の揺れ動く心理描写など、脚本を書くドラマはいずれもヒットを飛ばし、社会現象になる作品さえある。
 近年は情報番組のコメンテーターとしてテレビに出ることも多くなった。もうすぐ年齢が五十だというのに、それを感じさせないハンサムなルックス。スーツが映える長身。そして、出演者や視聴者に嫌味を感じさせないくらいに絶妙なラインの柔らかな物腰で、鋭い意見をぶつける発信力。どれを取っても完璧、まさに天才脚本家。それが親父のパブリックイメージだ。
 昨年脚本を手掛けた恋愛ドラマ「花の匂い」は最高視聴率が二十%を超える大ヒットとなり、優れたドラマの脚本家に与えられる「向江敦子賞」という賞を受賞した。
 まさに僕の父親は「自慢の父親」である。さぞかし息子の僕は鼻が高いだろう。そう思うかもしれない。
 しかし、僕は声を大にして言いたい。その「花の匂い」の脚本を書いたのは僕であると。僕は、親父のゴーストライターだ。スランプに陥ったと言っている親父が僕にゴーストライターを頼んで来たのは、昨年の夏だった。十月から始まるドラマの脚本を書いてくれと依頼してきたのだ。それが「花の匂い」だ。この作品は僕の処女作だ。それにも関わらず、親父はメディアで作品について我が物顔で語っていた。非常に腹が立った。いつか親父にお灸をすえてやる。それが僕の脚本を執筆するモチベーションになっている。

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