経験も大事、でも妄想も大いに価値あり
実際にこの目で見たり体験することって、すごく大事だと思うのですが
その一方で、今はもう見ることの出来ないものに熱く思いを馳せたり、とことん妄想してみることも、すごく価値があると思っています
僕はこれまでのパン屋人生の30年弱の間で、自分のものはもちろん、国内外のいろんなパンを食べたり、素晴らしいパンが生み出されていく瞬間を沢山見せていただきました。
沢山の印象深い出会いがあったのですが、この中で僕がパン焼きの礎にしているもののひとつに、かつての上司〜フランスの方なんですが〜が聞かせてくれた、彼の子供の頃の話があります。
それを聞いたのは、多分僕がパン屋になって10年ほど、30歳くらい
彼は僕より20歳ほど上だと記憶してます
彼は小さい頃、学校から帰って、バゲットにミルクチョコを挟んで食べるのが、それはもう最高のおやつだったそうです。
それが楽しみで、いそいそと帰っていたそうですが笑笑
パンは、時にはパンオレであったり、パンヴィエノワであったりしたらしいです。
その話をしている時の、あまりにも幸せそうな彼の顔ったらなかった笑笑
帰って、ママンにおやつ何?って聞いて、バゲットにチョコ挟んで食べなさいって言われたら、うわーっ嬉しくてたまらなかったそうです
自分でそれを作るのも楽しかったと話してました。
もともと温和で朗らかで優しい方なのですが、故郷の、特に子供の頃の話をしてくれる彼の目は本当に優しくて
そうか、そんな子供時代を過ごしてきたから、こんな素敵な人になったんだなと、すごく腑に落ちたのを覚えています。
フランスではきっと当たり前の光景なんでしょうけど
当時の空気感を思うと、胸が温かくなって、自分もその場で一緒に齧り付いて微笑みあってみたかったなって思うんです
そこからパン屑を掃って、マグカップのミルクを飲みほして、遊びにいこーぜ!なんて😊
羨ましいのかな、なんて表現していいのかわからない感覚なんですけどね。
この何気ない日常感を、僕は自分のパン焼きに落とし込みたいとずっと思ってるんです。
パン屋さんとの距離が、暮らしの中で近い感じもいいですよね。
この妄想を、僕はずっと追い求めて、今もパンを焼いています。
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