野球少年(おじさん)が出来上がるまで③

 中学校を卒業し、都内の私立高校に入学した。
 中学で野球を辞めようとも思っていたが、入った高校には硬式、軟式両方の野球部があった。
 両方見学に行った結果「坊主にしなくてもいい」軟式野球部に入る事にした。我ながらなんとも志が低い。正直、元々運動に関して全くの自信が無い自分は「甲子園に行きたい!」とかいう目標も無かったし、単純に軟式の方が部活として楽しめそうだったのだ。

 中学では外野を守ったが、高校では元々やりたかった内野を希望、肩も弱かったのでセカンドになった(当時の好きな野球選手はスワローズの土橋選手である)。
 中学とは違って、チームには活気があった。
野球部特有の「声出し」とか有るんだもの。
 暖かい時期は勿論普通の練習、冬場は筋トレというような感じ。大会前は朝練とかある、っていう野球部としては普通だとは思うが、中学には無かった「野球部やってる感」を凄く感じられた。逆に体が痛くて、サボる口実として「数学の補習」に出てた気もする。今じゃあり得ない。

 当時、グローブは中学3年間で使ってたZ○TT製のをそのまま使っていたが、2ヵ月くらいであっという間にボロボロになってしまった。
 すぐにエ○ポートのセールでミ○ノ製の6000円くらいのを買って貰い、高校のチームメイトのグローブを見よう見まねで「型付け」をした。
 野球を知らない人の為に一応補足。野球のボールを取るグローブは基本的に新品の状態だと硬くてボールを取りづらい。その硬いグローブを揉んだり、叩いたりして自分なりの形を作るのが「型付け」である。「型付け」を仕事にする人も居るくらい野球をやる上で重要な準備のうちの一つだと僕は考えている。

 さて、自分で初めて型付けしたグローブはしっくり来た気がした。
 が、6000円のグローブも1年ほどでダメになってしまい、当時軟式で1番の高級品、24000円のミ○ノプロのグローブを買って貰う。
 最高級のグローブを使う腕は当時の自分には無かったと思う。けれどもどうしても欲しくなり、親にねだって買って貰った。型付けも満足行く出来になった。が、高級グローブ、型付けしても硬すぎる。軟式ボールを弾きまくった。「これが高級グローブのクオリティか!長持ちしそう!」っていう感想だったし、他社も含めてその頃にはグローブに詳しくなっていた。当時最先端の野球用語、「土手紐逆巻き」とか「湯揉み」とか「当て取り」とかもその頃覚えた。

 野球自体は最後まで決して上手だとは言えなかったと思う。けれども中学までとは違い、そこそこ真面目に練習した自分は3年間で足の速さと肩の強さには自信が付いた。両方とも高校3年生の全国平均を大きく超えられたから。10年越しに鈍足弱肩のコンプレックスを克服した。
 が、18歳。足の速さがそんなにステータスにならなくなっていた。

 ちなみに高校最後に買ってもらったミ○ノプロのグローブはまさかの弊社製の革を使用した上、まさかの波賀工場産(当時の波賀の工場長のお墨付き)。多分今同じグローブを買おうとしたら値段は倍以上に膨れ上がってるかもしれない。
 そりゃ最初のうちは硬いワケだ。15年以上経った今でも現役バリバリに使える。そのグローブは現在会社で飾って貰っている。

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