見出し画像

みんな何者かになりたいんだよな

先日自分たちの会社主催でコーヒーの競技会を開いた。コーヒー業界以外の人からすれば、コーヒーの競技会とは?と思うのではないだろうか。しかし世の中にはキューバサンドの世界大会もあるのだ。コーヒーにも競技会ぐらいある。

基本的にはSCAJと言われる協会が主催する大会が最もメジャーである。その中でもバリスタやハンドドリップ、焙煎の大会などが細分化されており、それぞれが世界大会に繋がっている。

最近のコーヒー業界の流れでは、SCAJ以外が開催するいわば草野球的な大会が多く開かれるようになっている。今回僕たちの会社が開いたエスプレッソの大会もその一つなのだが、100人を超えるバリスタが参加し、エスプレッソの技術を競いあった。

このような流れから僕が強く感じるのは、みんな何者かになりたいのだということである。
もちろん何かで優勝すれば有名になるきっかけになるかもしれないし、その結果自分の所得が上がるかもしれない。しかし、それ以上にみんな誰かに認められたい、そんな承認欲求を強く感じた。

バリスタやロースターの多くはコーヒーが好きで、より美味しいものを作り出そうとする探究心を強く持っている。その探究心からか、興味関心は自分の内側に向くことも多い。そのモチベーションは職人としては素晴らしいものだが、外側から見れば単なる一人であり、それは酷く孤独で寂しいものだと思う。

さらには、こんなことを言ってしまえば元も子もないが、コーヒーの美味しさなど人それぞれであり、言ってしまえば誰がいれてもほとんど変わらない。その中で、自分が作り出すものの素晴らしさを証明するためには、競技会で優勝してタイトルを得る方法しかないのだ。

そんな理由でメジャーリーグにも届かない草野球大会にみんなエントリーをする。一点明確にしておきたいのは、僕は彼らを見下しているのではない。なぜなら僕もそのうちの一人だと思うし、自分の好きなことから目を背けずに、何者かになるのを諦めていない人間はとても輝いているように見える。

きっとみんな自分だけは特別だと心の底では思っている。それを隠そうともせず、必死になって目指し続ける様子こそ生き様ではないだろうか。諦めずに必死に追い続ける全ての人々に拍手を送りたい。

死んでもやめんじゃねーぞと彼らに声をかけたいが、自分が好きなコーヒーという領域から負けて否定されるのが怖くて別の趣味に走っている自分が言う権利もないよなと思う。

好きなものと向き合い続けるってやっぱりしんどいものだよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?