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法務担当以外でも知っておきたい契約書チェックのポイント

今回は、契約書チェックのポイントというテーマでnoteを書いてみました。
特に、営業の方などフロント目線での契約書チェックについて、個人的に考えていることを記載してみました。

1.そもそも契約書をチェックする人は?

そもそも論ですが、契約書チェックというと、法務マターと思われる方も多いのではないでしょうか?
もちろん、これは何ら間違いではないのですが、実は、取引を円滑に進めるには、フロントレベル(営業の方など)でも契約書チェックをしておくことが重要だったりします。

契約書を締結するには、
①現場の担当者同士でやり取りを行い、基本的な条件を握る
②その条件を反映した契約書を作成
③法務担当が確認し、締結
という流れを辿るかと思います。

つまり、バックオフィスである法務担当が契約書をチェックするのは契約書締結前の最終段階のことが多く、法務担当のチェックで看過できないリスクが見つかった場合でも、その時点から取引内容をひっくり返し、契約書の修正を依頼することが難しかったりします。

なので、契約書チェックは、一次的に、基本的な条件を握る段階で現場の担当者レベルでも行っておくことが、取引を円滑に進めるうえでは望ましいということになると考えています。

そこで、このnoteでは、一法務担当の目線から、「ここだけでもチェックしておいてもらえれば、取引が円滑に進むんじゃないか」(言い換えれば、後から法務にひっくり返されることが少なくなるんじゃないか)という契約書チェックのポイントを見ていきたいと思います。

2.契約書の構成(取引ごとの内容と一般的な内容)

そもそも契約書は、どのような事項が記載されているのでしょうか?

大雑把に言えば、契約書には、
①取引ごとに内容を合意する必要のある内容
②多くの取引に共通して記載される一般的な内容
の2つが記載されています。

①については、
・取引ごとに内容を合意するので、現場の担当者同士で必ず話し合いをする内容である。
・話し合いの結果、一度、合意をしてしまうと後から内容をひっくり返すことが困難である
という特徴があると考えています。

一方、②については、
・多くの取引に共通して記載される内容なので、取引ごとに現場の担当者同士で必ず話し合いをする内容ではない。
・その結果、後からの微調整もしやすい。
という特徴があると考えています。

よって、以下では、この性質が異なる2つの内容を区別して見ていきたいと思います。

3.取引ごとの内容のチェックについて

3-1.例

例えば、デザインを外注する場合を例にとってみると、
①何のデザインをどの範囲まで外注し、
②それに対しいくらの報酬を支払うのか、
③制作にあたってのルールは?
などは、現場の担当者同士のやり取りで必ず決めるかと思います。

契約書はお互いの合意内容を残しておくための書面ですので、このような合意内容を契約書に記載する必要があります。

3-2.フロント目線でのチェックポイント

この取引ごとに異なる内容の契約書の記載については、約束した内容と契約書の内容に不一致がないかを確認することが重要です。
また、報酬の支払方法や時期などが、自社の経理の運用と馴染むかどうかという観点から、必要に応じ、経理と連携しながら確認することも重要かと思います。

ここに不一致があるにもかかわらず放置しておくと、後工程の法務チェックで指摘が入る可能性があり、合意した内容をひっくり返さないと契約書を締結できない可能性も出てきてしまいます(少なくとも、契約書締結までのスピードは遅れてしまいます)。

(3-3.法務目線のチェック)

ちなみに、取引ごとの内容について、法務目線としては、フロントの担当者からヒアリングした取引内容と契約書内容に齟齬がないか、法務観点からWチェックします(一義的な解釈ができるようになっているか等、契約書特有の表現を踏まえてチェックします)。

このチェックは実際の取引内容を把握していないとできないものなので、契約書チェックの依頼フォームには取引内容等を記載する欄を設ける等し、積極的に取引内容を把握しにいくのが重要なポイントです。

4.一般的な内容のチェックについて

4-1.例

① 秘密保持条項
② 解除条項
③ 損害賠償条項
④ 合意管轄条項
等が、どの契約書にも記載される一般的な内容です(ちなみに、この一般的な内容の条項には法律用語を使うことが多いため、ここから契約書への苦手意識が生まれてしまうのではないかと思っています)。

4-2.フロント目線でのチェックポイント

一般的な内容については、どのひな型にもあるような条項ですし、現場の担当者のやり取りで予め合意するような性質の条項ではないかと思います(例えば、現場のやり取りで「解除条項のこの事由は、●●の理由で削除してほしい」などとやり取りすることは通常、考えられないかと思います(笑))。
よって、ここら辺の内容については、法的なリスクがないかを法務がチェックすることで足りることが多いと思います。

ただし、このような一般的な内容については、片面的な条項(片方だけが有利になっていたり不利になっていたりする条項)になっていることが多く、その点だけは予めチェックしておくと良いかと思います。

【片面的な条項の見分け方】
例えば、「甲は、乙が本契約に違反したときは、本契約を解除することができる。」という記載は、乙からの解除が認められないこととなっていますので片面的な条項です。
この場合、「甲及び乙は、相手方が本契約に違反したときは、本契約を解除することができる。」とすれば、乙からの解除も可能となりますので、平等な契約条件となります。

(4-3.法務目線のチェック)

ちなみに、一般的な内容について、法務としては、当該案件の取引内容を前提としたうえで、その一般的な条項が自社にとって許容できるリスクの範囲に収まっているのか等を検討します。

例えば、自社の重要な情報をこちらから多く渡す取引にもかかわらず、秘密保持条項において、秘密保持の対象が「秘密として明示されたもの」に限定されている場合には、ヒューマンエラーで秘密として明示し忘れた場合等のリスクが大きいので、そのような限定を削除する修正などを検討します(逆に言えば、重要な情報を渡さないのであれば、秘密保持条項を厳密に検討する必要はなくなると言えます)。

5.まとめ

以上、とても大雑把にですが、法務担当以外でも知っておきたい契約書チェックのポイントとして個人的に考えることを書いてみました。
次回は、「とはいえ契約書の用語が難しくて読む気にならない」という方を対象に、(いつになるかは分かりませんが、)難解な契約書用語をできる限り分かりやすく解説するnoteを書きたいと思います!

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と、ここまで書いて、「フロントがやるのであれば契約書チェックにおける法務の役割ってあまりないのでは?」と思われるかもなとふと思いましたので、以下では、契約書チェックにおける法務の役割について思うところをついでに書いてみようと思います。興味がある方はご覧いただければと思います。

・・・契約書チェックというと、もしかすると、「画一的なルールがあり、それに当てはめてやるだけのものだ。」と思われている方もいるかもしれないのですが、それは法務が法務のプロとして行う契約書チェックではない(それだけだと不十分である)と考えています。

では、法務のプロとして行う契約書チェックとはどういうものか?
それは、個々の案件に応じたリスクを適切に洗い出し、契約書においてそのリスクヘッジをする(場合によっては、リスクテイクをする)というものだと考えています。

企業の法務部や、特に顧問弁護士は、会社内外で生じる様々なトラブルを経験しているので、当該案件に潜む見えないリスクを適切に洗い出すという点でバリューを持っていると思います。よって、当該案件に潜む見えないリスクを適切に洗い出し契約書においてヘッジするという点に法務のバリューがある(法務として行う契約書チェックだ)と考えています。
そして、そのリスクを洗い出すには、当該案件への深い理解が必要です。例えば、上記4-3でも記載したとおり、個々の取引内容をきちんと把握しなければ、当該案件から発生し得るリスクを適切に評価・検討することはできません。なので、仮に、現場へのヒアリングもなく契約書チェックが終わっていることがあるとすれば、それは法務として、契約書チェックに関し、あまりバリューを発揮できていないのでは、と思います。

以上、契約書チェックといってもフロントと法務とでは違う観点から契約書チェックを行っているということ、法務としての契約書チェックの役割について思うところを書いてみました。
自らこのようなチェックができているとはまだまだ言えませんが、ビジネスをリスクなく、かつ、迅速に進められるよう法務としてサポートすべく日々研鑽したいと思います。

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※一連の記事は、執筆者個人の見解であり、執筆者が所属する団体とは一切関係がありません。

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