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『存在と時間』を読む その3 ダーザインとはなにか


美人姉妹


親友の高辻、麗しの岡本さんからメッセージをいただいた。

「NHKの『鶴瓶の家族に乾杯』で、掛川が放送されるぜ」

もちろん岡本さんは「されるぜ」などとは言わない。語尾は上品な「ますよ」である。

2週にわたり地元、掛川が特集された。
狂喜乱舞である。

『どうする家康』で於愛の方を演じる広瀬アリスさんと鶴瓶師匠のコンビが、ディープな掛川を映してくれた。於愛の方の故郷が掛川市だったのだ。アリスさんは気さくに冗談を言う女優で、そこも驚きである。

昔、うちの塾に美人姉妹がいた。

ある日、妹の方が、

「私は広瀬すずとアリスで例えると、アリス」
「ギャグキャラなのよ」

と話していた。

姉はおしとやかな美人だが、妹は鼻にティッシュを詰め変顔で写真を撮らせる面白人間だ。

例えを聞き、

「広瀬アリスで謙遜とは、謙遜してんのに高飛車か」

と、女の恐ろしさに震えを感じた。

今回の放送で理解したが、アリスさんもギャグキャラなのだ。卒業した美人姉妹を懐かしく思い、たくましいお笑い美人もいいなと思った。

いくらなんでも女優にはならないだろうが、バラエティーに活路を見出す意気で頑張って欲しい。計画通り生きるなど、本当の美人にしかできやしない。予期せぬ成功をつかめるかなのだ、そこそこの美人が生きる道は。

君にはお笑いキャラがある。

教え子として、これだけは覚えておいて欲しい。


ダーザイン



『存在と時間』の出版以来、人類はダーザイン(Dasein)が何かを捉えられずにいた。「現存在」と訳語が与えられているが、訳したところでどうともならない。

ドレイフェスによれば、ダーザイン(Dasein)はドイツ語の口語で、「日常的な人間存在」の意味だという。ドイツ語を直訳すると「ここにいる」の意になる。

『精神現象学』(ヘーゲル)『純粋理性批判』(カント)と共に、世界三大難書に数えられる書籍『存在と時間』。

形而上学的形而上学。超難解でありながら日常性を重視し、日常性を謳いながら難解ぶりを加速させるとは小憎らしい。

ドレイフェスの著書から、ダーザインが何か仮説を立てよう。

これまでの科学は、コンテクスト(文脈)のない法則を作ろうとしてきた。だが、理論というものに限界が見えた。意味や文脈を見つけるため、解釈学的な方法に光が当たっている。

"Being-in-the-world"(ドレイフェス)より

「私は神を信じています」という告白に科学は客観性を求めてしまう。

「それってあなたの感想ですよね」

フッサールの現象学は「神はいますね」と応え、懐が深い。ハイデガーは「あなたにとって神とはどんな意味を持っていますか」と問う。解釈学的現象学と呼ばれる所以である。

人に存在意味を付与するものは、信じることと解釈することである。客観的な科学ではない。

フッサールは、既存の科学が「意志(志のようなもの)」を扱っていないと批判した。

"Being-in-the-world"(ドレイフェス)より

フッサールはハイデガーの師匠。現象学は主観を扱う学問となる。

ハイデガーは、意思や志より根本的なものがあると考えた。志がなくとも我らがただ存在していることにすら意味があると。

"Being-in-the-world"(ドレイフェス)より

肩書きでもない。
行いですらない。
ただ存在すること。

「ただ存在すること」に意味を見出す基盤。それがダーザイン(Dasein)である。

ゆえにデカルトを否定している。
我思う、ゆえに我あり、ではない。

我あり、ゆえに我思う。
これがハイデガーの思想となる。

"Being-in-the-world"(ドレイフェス)より

ドレイファスはそう語る。
ハイデガーの現象学が、存在論的現象学とも呼ばれる所以である。

科学の否定すべき特徴 5つ


存在するだけで価値がある。基礎を為すのがダーザインだという。

極めてありがたい話だ、存在論とは。ダーザインが何かは後述させていただくが、このありがたい存在論を成立させない力がある。我らを不安に陥れる要因が。

既往の科学の中にそれがある。科学の否定すべきその特徴を、ドレイフェスは5つに分類した。

1.明白性
2.精神の重視
3.理論や法則による世界の支配
4.客観性
5.個人主義

この5つだ。

1.明白性


一番目、「明白性」はハイデガーによってどう否定されたか。
少し詳しく見ていただきたい。

法則や原理を適用すれば、世界(や人間の生活)はしっかりコントロールできると考えられてきた。そんなものは幻想に過ぎない。ソクラテスからカント、ハーバーマスまで同様に考えてきたが、違う。

"Being-in-the-world"(ドレイフェス)より

日常的な技能、実際的な知識、実践こそが人を社会化し、主体的に人生を理解させるものになる。

"Being-in-the-world"(ドレイフェス)より

「上手く行かないこと」「苦闘」が生活のメインである必要がある。計画や予想に間違いがないと考えてしまうと、内省(critical reflection)しなくなってしまう。

なにより、実践に真剣味がなくなってしまう。生きることに真剣でなくなってしまう。

"Being-in-the-world"(ドレイフェス)より

明確にできないものがなければ、批判的内省などできはしない。ゆえに既往の科学では批判的内省にアクセスできないのだ。明白でないものこそ自らを振り返る鍵なのだから。

確実なものが人を理解させるのではなく、不確実なものこそが「私は誰だ」という問いに答えを出す。

"Being-in-the-world"(ドレイフェス)より

「私は誰だ」という問いこそ、起業家となるために最も重要なことだとエフェクチュエーションは教える。

・法則や計画ではなく、日常的な実践こそが自分自身を理解させる。
・維新の志士のように燃えるような情熱で行動するわけではない。
・日常的に存在するだけで価値を見出され、そこに実践があるもの。

それは何なのか。

2.精神重視


ハイデガーが否定した科学の特徴、2つ目を見てみたい。

精神重視である。

信念や願望が人間の行動を基礎づけているわけではない。曖昧なものこそが人の行動を基礎付けている。そんな考え方だ。

3.理論や法則による支配


ハイデガーが否定した科学の特徴、その3つ目。

理論や法則が世界を支配していること。

ハイデガーは絶対知や大統一法則を求めるのではなく、日々の生活に回帰すべきと解いた。神の手より人の手が大切だと。人は近代において神を目指したが、ハイデガーは「人は人となれ」と説く。

4.客観性

ハイデガーが否定した科学の特徴、その4つめ。

客観性

「客観的理論からの視座が、社会での実践的な視座より優れている」

この思想を否定した。

近代は「危険から逃れ、安全地帯にいること」、客観的にあることで真実を見抜けるとしたが、そうではない。

冒険を恐れ、ひとり楽園で暮らすことでは自己を見つめられないのだ。

5.個人主義


ハイデガーが否定した科学の特徴、その5つめ。

方法論的個人主義

ハイデガーはヴィルヘルム・ディルタイに倣い、文化の担い手と文化の意味が社会科学の基盤だとし、個人を基盤としてはならないと強調した。

存在に対する誤解


ドレイフェスは「存在は抽象物だと捉えられているが、それは誤解」だとする。

「抽象ではなく、相似」

とするのだ。

「存在は定義できない」

よく見かけるこの説明も、誤解だと述べる。

「存在は他者と関係を作るための構造であり、意味形成をする」

ハイデガーは、ダーザイン経由で存在の問題に近づこうとした。

自らの可能性を問うものがダーザインであるとドレイフェスは語る。存在は縁起的なもので、関係性の上で捉えられるものだ、と。

人は個人主義で捉えられる存在ではないのである。

人工知能Poeに聞くと、こう教えてくれた。

Daseinは自己の存在を問いかけることで、世界との関係や意味の構造化を可能にさせる存在です。

Poeより

AIに問う、ダーザインとは何か


以上をまとめ、ダーザインが何かを考えてみたい。
諸兄姉もぜひ挑まれたい。私が正解しているとは思わないようにされたい。

以下の条件を満たすものとは何なのだろうか。
それがダーザインである可能性が高い。

ダーザインとは、、、

・日常のもの。
・「ここにいる」という意味を持つもの。
・文脈を持つ。
・意思や志よりさらに根本的。
・単に存在するだけでも意味を付与できる。
・法則や原理ではない。
・日常的な技能、実際的な知識、実践を伴い人間を社会化する。
・上手くいかないことや苦闘を伴う。
・批判的な内省をさせる。
・「神でなく、人になろうとしているか」と問う。
・客観的ではない。
・安全な視座から眺めさせるものではない。
・個人主義的ではない。
・抽象的ではなく、相似的なもの。
・定義することが可能。
・自己の存在を問いかけることによって、世界との関係や意味の構造化を可能にさせる。

これをAIに問うてみた。

1. Claude

まずはClaudeに。

この特徴から判断すると、ダーザインとは人間存在を指すと思われます。

ハイデッガーの『存在と時間』では、ダーザインとは人間の存在そのものを意味します。人間は「世界の中にいる」存在です。

・・・後略・・・

Claudeの答え

「世界内存在」がダーザインとは、流石Chat GPTを超えると言われるクロード。学問的に正しい答えはこれである。

2. GTP 4

次はGPT 4。

どうだろうか。面目躍如と行けるだろうか。

ダーザインはドイツ語で「存在すること」または「存在するもの」を意味しますが、ハイデガーはこの概念をより具体的で特殊な意味で使います。ハイデガーの哲学におけるダーザインは、人間の存在そのものを指します。

・・・後略・・・

GTP 4の答え

説明として弱い。この勝負、クロードに軍配を上げたい。


3. PaLM

そして、Google PaLMはどうか。

ダーザインとは、人間存在のあり方のことです。
・・・後略・・・

少し浅いだろう、Google PaLMよ。


4. Lama 2

参考になったのはFacebook社(Meta社)のLama2である。

ハイデガーの「ダゼイン」概念は、人間が世界に存在し、物事を経験する方法を指す。それは以下のようないくつかの特徴を持っている:

日常性: 日常性:ダーザインは日常世界の一部であり、現実的でありふれた経験によって特徴づけられる。
存在: ダーザインは、人間が世界に存在し、"ここにいる "という感覚を持っていることを指す。
文脈性: ダゼインは常に特定の文脈の中に位置し、環境や周囲の人々から影響を受ける。
根源性: Daseinは抽象的な概念や原理よりも根源的なものであり、規則や法則によって定義されるものではない。
実践性: ダゼインは日常生活の一部である実践的な技術、知識、行動によって特徴づけられる。
闘争: Daseinはしばしば闘争や障害や困難を克服する必要性と関連している。
反省: ダゼインは、自分自身の存在や私たちを取り巻く世界に対する批判的な内省を伴う。
真正性: 社会的規範や期待に合わせるのではなく、自分自身と自分の経験に忠実であることを意味する。
非客観性: Daseinは客観的な概念ではなく、個人の存在に根ざした主観的な経験である。
自己認識: Daseinには、自己認識の高まりと、自分自身の存在と人生の意味を問う能力が含まれる。

全体として、Daseinの概念は、人間の存在と経験の重要性、そして私たちが世界に位置し、周囲の環境と相互作用する方法を強調している。ハイデガー哲学の中心的概念であり、実存哲学や心理学にも大きな影響を与えている。

4人の専門家の意見を伺っているようだ。書籍を読む上で、AIへの相談は無くてはならないものになっている。

『家族に乾杯』


『家族に乾杯』は最高だった。鶴瓶師匠の人たらしぶりが凄い。流石の広瀬アリスさんも、ほんの少しだけ悔しそうだった。

「俺もこんな風にできればなぁ」

私はわりあい堅苦しい人間なのだ。

掛川人の日常を美しく引き出してくれる。気負うでも頑張るでもなく自然。彼はまるで大自然だ。

「鶴瓶師匠スゲェ」
「みんな家族みたいに話してるわ」
「自然が何より素敵だな」
「俺、この人ガチで師匠にしよう」

すぐ惚れるタチなのだ。デザイン思考的にも間違いでない気がする。

「待てよ、、、」
「ダーザインってさ、、、」

「家族じゃね?」

・日常のもの。
・「ここにいる」という意味を持つもの。
・文脈を持つ。
・意思や志よりさらに根本的。
・単に存在するだけでも意味を付与できる。
・法則や原理ではない。
・日常的な技能、実際的な知識、実践を伴い人間を社会化する。
・上手くいかないことや苦闘を伴う。
・批判的な内省をさせる。
・「神でなく、人になろうとしているか」と問う。
・客観的ではない。
・安全な視座から眺めさせるものではない。
・個人主義的ではない。
・抽象的ではなく、相似的なもの。
・定義することが可能。
・自己の存在を問いかけることによって、世界との関係や意味の構造化を可能にさせる。

「抽象的でなく相似的なもの」
・・・相似とは親子や兄弟姉妹だ。

「批判的内省」とは「批判的な異性」
・・・かーちゃんのことだろう。

すべてに当てはまるではないか。
冗談みたいな話だ。

天才を欲しいままにする哲学者、マルクス・ガブリエル。彼はNHKの『欲望の時代の哲学』でこう語っていた。

私たちは「存在」の喪失を嘆いているのです。さまざまな方法でね。

いかなる残酷な戦争も近代の病もすべて「存在」を失ったことに対する一種の嘆きなのです。

『欲望の時代の哲学』より
『欲望の時代の哲学』より

「存在」を「家族」と言い換えてみたい。

私たちは「家族」の喪失を嘆いているのです。さまざまな方法でね。

いかなる残酷な戦争も近代の病もすべて「家族」を失ったことに対する一種の嘆きなのです。

言い得て妙である。

企業も昭和の家族的な時代には革新性があった。スモールビジネスでも、家族を晒して経営するお店は長寿なのだ。ラーメン店にしても美容室にしても建築業でもそうである。

「ダーザインって家族だったんだ」

「高辻、岡本さん」
「鶴瓶師匠と於愛の方、、」
「そして掛川の人たち」

「ありがとう」

諸兄姉は如何だろうか。
是非、あなた自身のダーザインについても語って頂きたいのです。

お読みくださいまして、誠にありがとうございます!
めっちゃ嬉しいです😃

起業家研究所・学習塾omiiko 代表 松井勇人(まつい はやと)

下のリンクで拙著の前書きを全文公開させていただきました。

あなたの墓標には何を刻みたいですか。
「死」があなたを目覚めさせる。

そんなテーマです。是非ぜひお読みくださいませm(_ _)m


どん底からの復活を描いた書籍『逆転人生』。

彼は中学の時からの親友で、中二の時に俺が陸上部全員から無視された時「もう松井を無視するのはやめた」と、皆の前で庇ってくれた恩人である。

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是非ご覧ください(^○^)


こちらが処女作です。

トラウマを力に変える起業論、がテーマ。

起業家はトラウマに陥りやすい人種です。トラウマから立ち上がるとき、自らがせねばならない仕事に目覚め、それを種に起業します。

起業論の専門用語でエピファニーと呼ばれるもの。エピファニーの起こし方を、14歳にも分かるよう詳述させて頂きました。

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サポートありがとうございます!とっても嬉しいです(^▽^)/