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感傷の旅、京都

2021年7月11日、僕は京都に帰ってきた。前日、尊敬する中桐万里子さまにひたすら愚痴るという失態を犯してしまったけれど、破門はおろか何も気にしておられなかったのは、大物の親分を持った子分の特権である。

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大阪のホテルを発って京都に着くと、レンタサイクルを生まれて初めて試すことにした。アプリのインストールやら課金のしかたやら、めちゃ面倒だったけれど、2回目からは楽に乗り出せる種のものだと思う。

やはり学習塾の先生だから、西院の駅からまず北野天満宮に行った。しかし北野天満宮の写真はない。京都は南から北に向かうにつれ、緩やかだけれど地味にキツい勾配が続く。

90キロのデブに箱根駅伝の山の神、柏原竜ニの魂が乗り移ったことで、私は天満宮までなんとか辿り着くことができた。しかし柏原がゴールで気を失ってしまったように、私も天満宮の写真を撮る余裕をなくしてしまったのだ。

思えば西院に住んでいた峰が大学時代に痩せていたのは、この勾配の賜物に違いないと思う。

天満宮に行く途中、昔の私の寝ぐら、千本丸太町のプチモンド京都のすぐ近くを通る。しかし完全無視することに決めた。

同じく千本通りを上がってゆくから、千本今出川モンテベルデエイト、すなわち高辻の寝ぐらの近くも通る。だが完全無視することに決めた。

もうその辺では死にそうだったのだ。

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見違えるほど新しくなった京都だけれど、僕は思い出にしか興味がない。昼飯は小西と高辻と3人でよく行った白梅町の王将。

時々今利も来てくれたけれど、Qちゃんは頑として来ようとしなかった。もっとオシャレな店に連れて行けという意味だと思う。

ここは当時、明らかに元ヤンっぽい店主が切り盛りしていた。

「今日もいれば昔話ができるかもしれない」

そんな風に思っていた。

いや、店主はあいも変わらず、20年以上たってもまだ、そこにいてくれた。だけど今日もまた、新人バイトを思い切り叱り飛ばしていたのだ。話しかける隙などはない。

「あのおっかねぇオヤジ、まだおっかねぇまんまなのかよ」
「変わんねぇなぁ」

当時は正直言って、店主の声を荒げる姿を見て頭にきていたのだけれど、20年たって私も変わった。感情移入できるのである。

「ああやってヤキを入れてもらえないと、絶対使えない奴になっちまうんだよなぁ」

新人バイトくんは多分、立命館の学生だと思う。こう言うのは憚られるけれど、頭が良さそうだったのだ。おおかた夏休みにバイトでもしようと働き出したところで、煉獄の洗礼を受けることになったのだろう。

「そこは冷凍庫だ、冷蔵庫じゃない」
「麺場の準備、本当にしたか?」
「できてなかったら俺らに迷惑がかかるんじゃない。お前が火の車になるんだからな」
「いい加減、細麺と中太麺、どの料理に使うのか覚えろ」

兎に角、矢のような怒声が矢継ぎ早にバイトくんに浴びせかけられている。

「あいも変わらず緊張する店だな」
「でもあのバイトくん、見込みあるな。目つきがいい」

彼は昔の私のように先輩にキレることも、店長にガンを飛ばすことも、一斗缶を蹴り飛ばすことも、キョドって何が何だか分からなくなることも無かった。

「む〜、流石は後輩だけのことはある」

私は自分たちが築いてきた歴史に深い感動を覚えたのだった。

「懐かしかったわ〜」

あとは店主に過去の常連だということを、さりげなく聞こえるように言って会計を済ませた。

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王将で充電を済ませた私は、次は南へと下って、かつての寝ぐらを見てみることにした。

大学で何かを教えてもらった記憶はほとんどないけれど、ここに集まった仲間とともに巻き込まれた数々のドラマの方は、確実に血肉になっている。

「なんかさ、大学時代って何にも困ることないじゃん」
「なのに、なんであんなに困ってたんだろうなぁ」
「モテなかったからじゃないの?」

本当にその通りかもしれない。私がなぜ学問をし続けているのか、その原点はモテるためだからだ。生徒にはよく言う。

「学問はモテるぞ」
「嵐で一番人気があるのは誰だ?」
「桜井くんだろ」
「頭が良さそうだからだ」

「野球選手が結婚するのは誰だ?」
「女子アナだろ?」
「頭が良さそうだからだ」

そう、それは真実なのである。

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次に向かったのは中華そばの店「ちいふ」。文字通り私の気が狂ってしまった時、毎日通った店。

だから、どうしても外せないのだ。

毎日通っていたにもかかわらず、店主とはメニュー以外の言葉を交わしたことがない。やたらと甲高い声の店主も僕のことを哀れに思ってくれているのは、店の中にいるだけで伝わってきた。

「将来俺がクソほど喋れる奴になって、新婚旅行に行くときには、無理を言って奥さんにもこの店に来てもらおう」

そう思っていたのだけれど、店主が高齢だったからだろう。もう俺が引きこもっていた10年くらい前に、店を閉められてしまった。

残念ながらもう、あの懐かしいラーメンは食べられない。だけど、今日行った時に店の中からいつものテレビの音がして、エアコンの室外機が動いていたから、店主は今も元気なんだろうと思う。

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自転車は諦めることにした。

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上賀茂神社さまへ伺った。なぜそんな遠くかと言うと、バスの中で少しでも休みたかったからだ。

新幹線の時刻は5時56分。

「それより前に乗ってしまうと、全額支払いになってしまいますよ」
「嘘でしょ❣️」

帰る気満々で駅まで言ってそう言われたのだ。時間はあと、4時間以上あった。

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夏の特別拝観で本殿を直接見せて頂いた時、突如として大雨が降り出して、本殿のすぐ横に雷が落ちた。

上賀茂神社さまの御祭神は雷の神さまだ。

「ヤベェ、またキレられたのかも」

そして宝物殿も何もかも停電になってしまった。

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境内の木が燃え出して、異常な数の消防車がやってきた。

「火消しをしてくれるとは‼️」
「助かった❣️」

流石は国宝の上賀茂神社。一瞬にして恐るべき数の消防車がやってきた。

「あぁ、俺が炎上させてしまっても、火消しの道の達人に頼ってしまえばいいんだ‼️」

ガチのガチで私は、世界を覇道の世から王道の世に変えたいと思っている。

そのためには諸葛孔明とか渋沢栄一とか、関羽や張飛、そんなすごい人たちに仲間になって頂きたいと心から願っている。

そして今日、改めて気づいたのだ。火消しの達人も仲間にしなければならない、と。

この京都傷心旅行、やはり素晴らしい知恵を与えてくれたものだ。またここに住めるよう、まったく縁のないお金の方も稼ごうと思う。

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お読みくださいまして、誠にありがとうございます!
めっちゃ嬉しいです😃

起業家研究所・学習塾omiiko 代表 松井勇人(まつい はやと)

下のリンクの書籍出させていただきました。
ご感想いただけましたら、この上ない幸いです😃

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