魔法のような夜
人間は二種類にわけられる。
介護施設で夜勤を経験したことがある人とない人にだ。
これはもう感覚めいたものになってしまうが、夜勤帯というのは説明のしようがない事が起きてしまうのだ。それを体験したかどうかで、人間に対する価値観が根底から変わってしまう。そう、まるで魔法にかかったんじゃないかというほどに。
コツン、コツンと音がする。
とあるおばあさんが居室から出てきて、こちらに向かって歩いてくる。
歩いてくる?…あのおばあさんってたしか、足首を骨折してギプス巻いてて立つことすら難しいんじゃなかったっけ…
コツン、コツンはギプスの音だった。
こっちに座っているおばあさんは普段全然喋らない人。発語なし、だなんてシートに書かれている。
めちゃくちゃ話しかけてくる。俺、書き物めっちゃ溜まってるんやけど…お構い無しに喋ってくる。好きな物や故郷の話。その声を聞いて別のおばあさんがまた出てきたよ。
それを昼間是非とも医療職の前で見せるんだよ、おばあさん。
そう、お年寄りは昼と夜では別人のようになってしまうのだ。夜用ADLとでも言おうか。
無論一部に限られるのだろうが、これを認められないと夜勤をこなすことはできないだろう。
そんなことあるはずないって??
俺もそう思いたい。
だが、今日の夜勤帯。普段何も食べず、飲み物を促すのに四苦八苦する百歳越えの長老が、目を爛々と輝かせてナースコールを連打していた。
仕方がないのでフロアで過ごしてもらうと元気一杯。コーヒー牛乳を三本一瞬で飲み干すという現実に出くわしたんだ。
わかるかな?昼間はほぼ全介助のご老人なんだよこの方は。
まさに魔法のような夜だった。
だがそれは、介護施設で夜勤をやったことがある人にとっては、確かな現実だ。科学的介護はこれをどう評するのだろうか。人には未だに理解できない領域がある。そのような余白を含む科学であることを望む。
さぁ君も、魔法のような夜を体験しよう。
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