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電気回路における重ね合わせの原理と双対性

オーディオパワーアンプの回路を設計する際に、特に押さえておきたいポイントをまとめてみます。回路の設計には、重ね合わせの原理と双対性という考え方が関連しています。

  1. 差動電圧と同相電圧

  2. 直流と交流の重畳

  3. 静電結合と磁気結合

差動電圧と同相電圧がわかりにくいのは、回路は通常、差動電圧を中心に設計しているためです。
意図しない同相電圧の経路(寄生要素とアースに関する経路など)に関して発生するノイズは、物理的な回路として実装する場合にはかならず存在するので、常に考慮する必要があります。

直流と交流の重畳は、回路においてコイルやコンデンサの振る舞いを理解するための簡単なモデルですが、これも時間に関する電流の微分と電圧の微分が双対関係にあるためです。

静電結合と磁気結合は、回路を離れて空間を伝播する電磁波領域の話になってきますが、これも意図しない経路として、ノイズや発振の原因になります。

スイッチング回路を用いない古典的なオーディオ回路(実際は商用電源をダイオードブリッジなどで整流している回路はスイッチング回路)では、シングルエンドの回路として特段、同相電圧の影響(CMRR)を考慮しなくても無視できるくらいの影響(とはいえ電源のトランスのうなりやハムノイズは無視できませんが)とみなして楽観的な設計にとどまっているのが通常です。

しかし、現代では周りはスイッチング回路(PC)や電磁波源(スマホ)モーター(エアコン、冷蔵庫、洗濯機、EV)があふれています。
なので、そのような古典的な設計では、十分な耐ノイズ性能(EMC)が実現できないのは当然です。

また、電気回路での差別化(アナログ回路の設計技術)が難しいため、デジタル回路や機械的差別化(物量投入による限界的性能向上)が行き過ぎて、いわゆるハイエンドオーディオに至っては、さながら工芸品やアート作品とかしていて、値段も普通の消費者が手に取れる価格ではありません。

ただ、これまで数年間いろいろリサーチや実験、製作を通して試行錯誤を続けてきた結果、電気回路の設計によって、容易に解決できるアプローチがある程度見えてきたものもあります。

それらは主にスイッチング回路のノイズ対策(対策ではなく最初から設計として組み込む)として、通常は論じられていますが、オーディオパワーアンプの回路としては、定跡化できると感じています。

というわけで、これまで実装してきて完成の域に達したと思われるアプローチを、現代オーディオパワーアンプの設計技法として体系化すべく、しばらく記事を書きたいと思います


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