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ちょっと贅沢な悩み

現在私達夫婦は一戸建ての貸家に住んでいる。築年数がそこそこいってるので、家賃はお得な感じだ。と言っても借り上げ社宅だから、私達の負担はゼロという有難い状態である。
不動産屋さんも親切で、何か不具合があってもすぐに対応してくれるし、言うことはない。良い物件に住めて幸せやね、と夫と常々話している。
ここの前に住んでいたマンションの具合の悪さと言ったら酷かったので、それに比べたらここは天国のようだ。

しかしこの家は古いせいか、時折ちょこちょこと具合の悪いことが発生する。
最近のささやかな不具合は、トイレで起きている。
以前の住まいはウオッシュレットがなく、やむを得ず自前で購入したものを装着して使っていたのだが、この家はちゃんと備え付けだった。若干古い機種ではあったが、音楽が流れたり温風が出たり勝手に蓋が閉まったり、といった余分な機能は特に必要ないので、動きさえすればこれで十分やんな、と夫と二人喜んでいた。
ところがここ数週間、このウオッシュレットの調子がおかしいのである。何回かに一回の割合で、『おしり』が勝手に『ビデ』に切り替わってしまう。
たいしたことではないかも知れないが、ちょっと不便である。

『ビデ』は多用し過ぎると、大事な所に常在菌が居なくなって悪い菌が増えてしまい、かえって身体に良くない、と聞いたことがあるので私はあまり使わない。夫は用事がないだろう。
たまには『ビデ』も使用しても良いが、『おしり』のつもりで待機しているのに、見当違いのところに水が当たるのは困る。やり直すと何回目かでやっと『おしり』になってくれるのだが、朝急いでいる時などは物凄く焦る。無防備な姿で便座に腰かけたまま、何度も『おしり』ボタンを懸命に押している様子は、誰にも見られることはないけれど、さぞかし滑稽だろうと思う。
『おしり』ボタンを押して『ビデ』が出た瞬間のやられた感ったらない。さあ、今日は何回押せば『おしり』に切り替わってくれるかな、と心ならずも身構えつつ、ボタンを連打することになる。ちょっと情けない。
と言って、修理が必要なほど何度も切り替わってしまう訳ではない。そもそもお腹の具合を悪くでもしない限り、そんなに『おしり』ボタンを使用しない。なので夫と相談して、今のところだましだまし使い続けている。しかしいつ『おしり』ボタンが利かなくなるのか、ちょっとスリリングではある。

この家のトイレは、ドアを開けて中にある電気のスイッチを点けると、自動的に換気扇と連動する仕組みになっている。中に人が居る間は換気扇が回らず室内灯が点いており、スイッチを入れたまま人がドアを閉めて出て行くと室内灯が消えて換気扇が回りだすという塩梅だ。こちらは壊れている訳ではない。
私としては自分がいる間にも換気扇を回したいのだが、上記の仕組み上、無理なのである。おかげで、誰かのいた直後に誰かが入る時など、時折夫婦で揉める一因になっている。
何故こんな仕組みにしたのか、ちょっと理解に苦しむ。静かに用を足させてあげよう、という住宅メーカーの配慮なのだろうか。だとしたら見当違いも良いところだ。
窓はついており、開け放しても目隠しはしっかりしてあるから大丈夫そうだが、トイレがあるのは一階である。窓のすぐ前にはまあまあの通行量のある道路が通っていて、時折人の話し声なども間近に聞こえる。
窓をガラ空きにしながら用を足すのは、いくら五十代半ばのオバハンでもちょっと気が引ける。外から見えることはないだろうが、なんだか落ち着かない。やっぱり換気扇を回したい。

ここに越してきた時は、前に住んでいたマンションとのあまりの違いに『すごーい!!』と感動していたものだったが、慣れるとこういうところが目につくようになる。贅沢なものだ。
換気扇は慣れるしかない。もうややおかしい状態だけれど、ウオッシュレットがどうかちょっとでも長持ちしますように、と祈っている。