見出し画像

妙に元気

我が家の横には小さな植え込みがある。鳥が落としていった種から生えたであろう、ヒイラギと名前のわからない木は年中青々としているし、先住者が植えたであろう水仙、フリージア、チューリップなども春には目を楽しませてくれる。
勿論自分でも季節ごとに色んなものを植えては楽しんでいる。昨夏は朝顔が沢山大きな花をつけ、ご近所との会話のきっかけを作ってくれたものだった。
今年も沢山の花を咲かせてくれることを期待して、種を蒔いた。発芽率は七割と袋に書いてあったがその通りで、十粒蒔いた内の七粒が発芽した。
無事に大きくなって、最近は毎朝少しずつ花を咲かせてくれている。

しかし、である。
この朝顔、やたら元気なのだ。良いではないか、と言われそうだが、元気度合いに問題がある。
何故か蔓ばかりびょんびょん伸びる。勢いが凄くて、成長の瞬間が肉眼で見えそうなくらいだ。折角張ったネットも、伸びた蔓がぎゅっと一つに束ねてしまい、鈴緒のような紐状になってしまっている。これでは意味がないが、もう解きようがないくらい絡まっている。
蔓の先端は洗面所の窓の内側まではみ出て挟まり、窓が締めづらくなってしまった。しょうがないのでバシバシカットする。防犯上困るので、加賀千代女のような悠長なことは言っていられない。
葉も大きすぎる。子供の顔くらいある。おかげで折角咲いた花が葉に隠れて見えない。だから遠くから見ると、朝顔の辺りは一面緑色だ。これでは一見、ゴーヤを植えたのと変わらない。
こちらも葉をむしりまくっている。虫食いがあったり、少し色が変わったものなどは優先的に取り除いているが、次々と葉がデカくなるので追いつかない状態だ。
何故こんなに蔓と葉だけ元気なのだろう。花は特に小さいこともないが、普通の大きさだ。数も少なめだ。まあ一応咲けば綺麗ではあるのだが。

どうしてこんなことになったかは大体推測がつく。選んだ種のせいだ。
昨年は種苗店に行って、良さそうなのを吟味して買ってきて蒔いた。こんなにエライ勢いで蔓は伸びなかったし、葉もこんなにデカくならなかった。花は大きいのが沢山ついて、近所の方からも「素敵ねえ」なんてよく声をかけられた。
この店は品ぞろえが豊富で、いつ行っても大勢の人で賑わっている。店員も皆愛想が良く、何を聞いても気軽に丁寧に教えてくれる。昨年も親切な店員さんに相談して、買う種を決めた。
しょっちゅう行きたいのは山々なのだが、我が家からは少し距離がある。車で行かねばならない。田舎の一本道なら私の拙い運転でも平気だが、片側三車線が普通の、馴染みのない交通量の多い道路を運転する勇気は私にはない。で、夫の気が向いたときのみ、連れて行ってもらうことにしている。
今年はタイミングを逃して、ここに行けなかった。しょうがないのですぐ近所で種を売っているところを探したが、生憎ホームセンターも遠く、結局ダ○ソーしかなかった。本当に発芽するかどうか、怪しみながら蒔いたので、芽が出ただけでめっけもんなのだが、やっぱり『良い種』ではなかったようだ。朝顔には申し訳ないが、百円は百円なのだろう、と諦めている。

今日は徹底的に伸びすぎた蔓をカットし、多すぎる葉を取って少しスッキリした。咲いた後の花が種を作らないようにしないと、栄養がそっちに取られてキレイな花が咲かないそうなので、こちらも次々とむしった。
それにしても、昨年とは花の数が桁違いだ。夫は「これでも十分綺麗」などと言うけど、私はやや不満である。この暑い折、朝顔の可憐な花をたくさん見て、朝から爽やかな気分を味わいたいというのに。
やっぱり無理をしてでも種苗屋さんに行っておくんだった。悔やんでも悔やみきれない。安い種だったけど、こんなに楽しめないのでは意味がない。得した気分になれない。
今年はもうしょうがないけれど、来年の朝顔はちゃんと種苗屋さんに行って選ぶぞ!と今から決心している。