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【連載】西洋美術雑感

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西洋美術から作品を取り上げてエッセイ評論を書いています。13世紀の前期ルネサンスのジョットーから始まって、印象派、そして現代美術まで、気ままに選んでお届けします。
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#マリア

西洋美術雑感 25:コズメ・ツーラ「ピエタ」

コズメ・ツーラはルネサンス初期の画家の中でもとりわけ奇妙な絵を残した画家である。前回、ミケランジェロの彫刻のピエタを取り上げたが、このツーラの絵も同じくピエタであるが、この感触の違いは、もう果てしない距離があると言えないだろうか。ちなみに、このツーラの作はミケランジェロのピエタのおよそ40年前、ルネサンス盛期と呼ばれる時期の始まり、そしてルネサンス前期の終わりに位置している。 このツーラの絵を見てみよう。まず、十字架から下ろされた死せるキリストは、まるで発育不全のように小

西洋美術雑感 22:シモーネ・マルティーニ「受胎告知」

フィレンツェはいわずと知れたルネサンス美術の中心地である。誰でも知っているレオナルド・ダ・ビンチ、ミケランジェロ、ボッティチェリといった人たちはここで活躍したのである。前にも紹介した、ルネサンスの夜明けに相当するジョットもここフィレンツェである。 そんなルネサンスな街は、行ってみるとコンパクトで親しみやすい感じの街だった。そしてそこにかの有名なウフィツィ美術館がある。本拠地にある大美術館のコレクションは、まさにルネサンスの殿堂のようなところだ。 前にも書いたように僕は