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【連載】西洋美術雑感

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西洋美術から作品を取り上げてエッセイ評論を書いています。13世紀の前期ルネサンスのジョットーから始まって、印象派、そして現代美術まで、気ままに選んでお届けします。
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#ピエタ

西洋美術雑感 25:コズメ・ツーラ「ピエタ」

コズメ・ツーラはルネサンス初期の画家の中でもとりわけ奇妙な絵を残した画家である。前回、ミケランジェロの彫刻のピエタを取り上げたが、このツーラの絵も同じくピエタであるが、この感触の違いは、もう果てしない距離があると言えないだろうか。ちなみに、このツーラの作はミケランジェロのピエタのおよそ40年前、ルネサンス盛期と呼ばれる時期の始まり、そしてルネサンス前期の終わりに位置している。 このツーラの絵を見てみよう。まず、十字架から下ろされた死せるキリストは、まるで発育不全のように小

西洋美術雑感 24:ミケランジェロ「ピエタ」

バチカンのサン・ピエトロ寺院にあるミケランジェロの彫刻「ピエタ」である。これは恐らく西洋美術における彫刻の頂点として永遠に残る作品であろう。 これまで、自分は最盛期ルネサンスが苦手だとずっと言ってきたが、それは、その理知的で開放的、完全にコントロールされた表現の調和、したがって健康的で明るい、という性質が自分の好みに合わないからであった。試しにその反対の要素を並べてみると分かるかもしれない。感覚的で、時に内向的、なにかに異様に執着して誇張されたいびつな表現の不調和、したが