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【連載】西洋美術雑感

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西洋美術から作品を取り上げてエッセイ評論を書いています。13世紀の前期ルネサンスのジョットーから始まって、印象派、そして現代美術まで、気ままに選んでお届けします。
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#キリスト

西洋美術雑感 25:コズメ・ツーラ「ピエタ」

コズメ・ツーラはルネサンス初期の画家の中でもとりわけ奇妙な絵を残した画家である。前回、ミケランジェロの彫刻のピエタを取り上げたが、このツーラの絵も同じくピエタであるが、この感触の違いは、もう果てしない距離があると言えないだろうか。ちなみに、このツーラの作はミケランジェロのピエタのおよそ40年前、ルネサンス盛期と呼ばれる時期の始まり、そしてルネサンス前期の終わりに位置している。 このツーラの絵を見てみよう。まず、十字架から下ろされた死せるキリストは、まるで発育不全のように小

西洋美術雑感 19:ドゥッチオ「十字架から下ろされるキリスト」

キリストの受難劇は、数限りなくある宗教画でもっともよく描かれたもので、その中でも、この、十字架から下ろされるキリストは、さんざんいろんな画家が描いている。 ここに上げたのは、ジョットと並ぶ、ルネサンス前期のイタリアのシエナの大画家ドゥッチオのもので、その受難劇は全部で26枚あって、これはその中の一枚である。実は、僕は、西洋に数ある受難劇の絵の中で、彼のものをもっとも愛しているのである。 母マリアをはじめとする女たちの純一な悲しみの表現と、はしごをかけてイエスを降ろした