地方のドラマ5

◯内海四方見峠(昼)
  けたたましいエンジン音と共に車が峠を駆け上がってくる。
  道の両側に駐車場があり、人気の様で車やバイクが停まっていて賑わっている様子が伺える。
 ちとせ、車を駐車場に入れる。
 柏崎、停車を確認して下車。
柏崎「おぉぉ…すごい」
 柏崎、感嘆の声。
 小高い山に囲まれた内海が広がる。
 遠くには小規模な町が見えて自然と人々の共存が少し見えて取れる。
ちとせ「四方見峠なんだから…」
 ちとせ、元気は無い。
柏崎「なぁ…彼女居たのショックなん?」
ちとせ「いや…そりゃね…若いし、カッコいいから…居るんだろうなぁ…って思いましたよ…柏崎さんもあるでしょ?…好きな女優さんがあの俳優さんと“お手繋ぎデート”とか報道されたら…ショック受けません?ねぇ?…」
 柏崎、話半分で四方見峠からの景色を見てる。
  四方見峠の頂上に一際目立つ建物がある。
柏崎「“パティスリー ロード”」
ちとせ「ここですね…」
柏崎「ここかぁ…」
 柏崎達、二人で建物へ向かう。
ちとせ「いっぱい食べられますかね?」
柏崎「やっぱり食うのね?」

◯パティスリー“ロード”(昼)
  室内はウッドデッキで張り巡らされている。
  天井には大型の扇風機が回っていていかにも高級感が溢れている。
  客層はスイーツ店からか女性が多め。しかし、男性も居ない訳ではない。が、ほぼバイクで来た人達が団らんしている。
 柏崎達、入店して室内を見回す。
柏崎「…いっぱいだなぁ…」
ちとせ「柏崎さん、こういう所抵抗無いんです  
 か?」
柏崎「何で?」
ちとせ「政治畑だったんですよね?入社以来…」
柏崎「まぁな…」
ちとせ「しんどかったら…私一人で取材…」
柏崎「俺も仕事だ」
 柏崎、ちとせに最後まで言わさず店員を呼び止め取材交渉。
 ちとせ、柏崎の後ろからついていく。
◯パティスリー“ロード”(夕方)
  建物の二階。ちょっとした広場になっておりそこでもロードのスイーツが食べられる。
  柏崎達、スイーツは食べ終わり、仁王立ちで夕日を見つめている。
  見つめる夕方。赤く焼けて美しい。
 柏崎「いい所だな」
 ちとせ「今日は何か…染みます」
 柏崎「そりゃね…」
  夕日を見つめる二人の背後に男性が来る。
 男性「あの…」
  柏崎達、振り返る。
 柏崎「すいません!」
 ちとせ「もしかして…」
 男性「お待たせしました。ロードのチーフパティシエ片山孝次です」
 片山、お辞儀する。
 柏崎達、お辞儀。
 柏崎「柏崎です」
 ちとせ「大間ちとせです」
  名刺を出して交換する。
◯同“店内”(夜)
  暖色系の店内。
  先程も高級感はあったが、夜になり割り増しな感じの高級感が溢れている。何処を切り取っても映える写真が撮れそう。
 フロアの奥がカウンターになっていて更に奥が厨房。そこからスイーツがドンドンと出されてくる。
  ちとせ、スイーツを並べてカメラでドンドン撮っていく。
  柏崎、ちとせの補助をしつつスイーツを頬張っている。
 ちとせ「何やってるんですか?私も食べるから置いておいて下さい」
 柏崎「大間、これウマイぞ!」
 ちとせ「もう(怒)うーん!」
  ちとせ、我慢できずに撮影終わったスイーツを頬張る。
 ちとせ「美味しい…すごく美味しいです」
  片山、一段落ついて、小振りなスイーツを2つ片手に持ってくる。
 片山「良かったです…でも…」
 ちとせ「でも?」
 片山「その辺りはオーソドックスなスイーツですから…美味しいのは当たり前というか…」
 柏崎「…なるほど」
  片山、片手に持っているスイーツを、ちとせと柏崎に見せる。
 片山「このスイーツを是非取材して下さい」
 柏崎「…これは?」
 片山「ここ◯◯県で作られてるモノだけを使ってつくったスイーツなんです」
 ちとせ「地産地消的な…」
 片山「少し違う気もしますが…」
 柏崎「そうか…地産他消かな?」
 片山「そうですね…◯◯県のモノを使う事によって◯◯県をより知れる事になると思うんです。そうしたら県外の人達にも何か提案出来るのでは?と思ったりして…」
 柏崎「自分達を知れば他県への売り込みも出来るかぁ…」
 片山「そうですね…それが第一に必要だと…」
 ちとせ「頂いても?」
 片山「どうぞ…売るほどありますから…」
  大きさは小振りの大きさ。
  柑橘類のオレンジ色をしていて、ケーキというよりもお菓子感覚が合いそうなスイーツ。
 柏崎達、一口で食べる。
 柏崎「…これ…すごく柑橘が鼻に来ますね」
 片山「一番拘りました。◯◯県といえばこの柑橘ですからね…」
 ちとせ「本当だ!すごい…でもクセになりそうですね」
 片山「でしょ?」
  柏崎達、もう一つづつ食べる。

◯ちとせの車内(夜)
  ちとせ、前を見てしっかり運転している。
  柏崎、何やらメモを見ている。
 ちとせ「何してるんですか?」
 柏崎「…イヤ何でもない」
  ちとせ、横目で手元を見ようとする。
 ちとせ「そのノートは?」
 柏崎「政治部時代のだよ」
 ちとせ「…すごい…汚いっすね」
 柏崎「外観?字?どっち?」
 ノート、確かに中の字が汚くノート自体も手あか、色んなメモで汚れている。
 ちとせ「…字…ですかね…」
  ちとせ、恐る恐る言う。
 柏崎「なに!!!」
  柏崎、一瞬キレた素振りをするが…すぐ正気に戻る。
 柏崎「もうね…この歳になって字もきれいに書く気にはならないよね…」
 ちとせ「よかったぁ…何言ったらアウトなんですか?」
 柏崎「…字読めたらアウトだったね…」
 ちとせ「読めないですよ…」
  ちとせ、改めて運転に集中。
 (ナレ)ちとせ「…言わないでよかったぁ…汚いノートの端に“片山孝次”って何でメモったんですか?でも待って…あのメモノート…昨日今日のヤツじゃないよね…うわっ!気になる…聞きたい」
 ちとせ「あの…」
  ちとせ、聞こうとする刹那…
 柏崎「総支局着いたら教えて…寝るから…」
  柏崎、寝入る。
 ちとせ「はい…」
  ちとせ、車を静かに走らせる。
                
                  つづく

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