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(童話)「半獣王β版 第二章」
二章
まだ夜が明けない、未明。眠ったふりをしていたラフティは、行動を起こす。予め準備して隠しておいた旅の荷物を取り出し、隣で眠る母親を起こさぬよう、そっと家を出る。ラフティの大きな旅が始まろうとしていた。
薄暗い歩きなれた道を歩き、村の出口までやってくる。門をくぐると、ラフティは母親への未練を断ち切るように全力で地面を蹴り走り出す。
振り向いてはいけない。今はまだ、前を向いて進まな
(童話)「半獣王β版 第一章」
一章
「いいかい、ラフティ。決して熊の形になってはいけないよ。耳と尻尾を出すのもだめ。ずーっと、いつだって人間の姿でいるんだよ」
母親が口癖のように言う言葉で、ラフティは目を覚ます。どうやら母親のその言葉を夢に見ていたようだ。
「あれ……」
いつのまにか、両耳がふさふさと毛の生えた熊の耳になっている。お尻には黒く丸い尻尾まで生えていた。どうやら寝ている間に、半獣体になってしまっていた