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Animato Espressivo 〜生き生きと表情豊かに

誕生日兼最終営業日である30日は全スタッフが出勤したため、事務所内には久々に躍動感が充溢し、なんとなく嬉しくなる。

今年の締めくくりであることに加え、誕生日を迎えた本人が周囲の人々に何かしらを振る舞うというミャンマーの風習に倣い、スタッフたちに心ばかりのプレゼントを配った。

日本製菓業界の至宝と評すべき、王道のラインナップ。すべて捌ききった後、うまい棒を1本くらいくすねておけばよかったと、一抹の後悔すらよぎった。

また、多くの方々からお祝いのメッセージをいただき、風景の変わらない“箱入り生活”の中でも、タイム・ランドマークをしっかり感じとることができた。本当に感謝するばかりだ。

翌31日は、今年最後のオンライン家庭教師を無事に終えた。来年(といっても数日後)の予定もあらかた伝え、2020年はお役御免。対面からオンラインへスムーズに移行でき、学びを継続できたことに胸を撫で下ろす。

気づけば夕暮れ。
夏の黄昏を想起させる雰囲気の中、いつも通り淡々と過ごし、時差2時間半の日本の年明けをネット上で眺めながら、打ち鳴らされる花火でミャンマーの新年を知る。時間帯的には夜間外出禁止令発動中だが、選挙の時と同じ「無礼講」なのかと、そのまま眠りに落ちる。

新年の朝食はチョコクリスピーとパン。正月に向けて特別にあつらえたものではなく、いつも通りのルーティンだ。
ここ4年ばかりは海外で年越しを迎えているため、お節も雑煮とも無縁の正月を送っている。それにしても、SNSで流れてくるお節料理の「博覧会」を目の当たりにするたび、日本にいる方々はもちろん、海外にいながら圧倒的なクオリティーを現出するみなさんの心意気に、ひたすら感服する。

自分で作ったことはないが、手間隙がかかることはよく分かる。事前準備の段階から投下したコストはすさまじいはずなのに、それに言及すると、当の本人たちは「今年は手抜いちゃったー(笑)」と、軽やかにいなしてくる。
こういうのを「粋」と言うんだろうなと、畏敬の念を抱きながら、正月気分を味わった。

頭の冴える朝のうちに、年初に読もうと決めていた、福沢諭吉の『学問のすすめ』と『福翁自伝』を開いた。

版元を変えながらとはいえ、通読するのはかれこれ4度目となる。しかし、何度読んでもその時々で沸き立つ意味合いが変わり、都度鮮烈な感覚を覚える。まさに名著。これこそが古典の魅力だ。

「一身独立して一国独立」
「人間交際」
「浮世の事を軽く見る」
「殻威張の群に入るべからず」

日本がその姿を大きく変えた局面で放たれた、福沢渾身のメッセージである『学問のすすめ』と、福沢自らがその生涯を書き連ねた『福翁自伝』。
ど真剣に語りながらも、不思議と説教くささを感じさせない独特の「かろみ」が隠し味としてよく効いている。特に後者は、読み物として抜群におもしろい。

現代語訳ではなく、文語体の原書を選んだのもよかった。現代語版は親切ではあるものの、原書の方がなぜかすんなり頭に入ってくる。
年初から、清々しさの中にじんわり闘志が湧くような、そんな心地になった。

さて、今年はどんな1年になることやら。
1月から国際線が飛ぶという淡い期待はあっさり砕かれ、早速不確実性を突きつけられた2021年。

何がどうなるかなんて、誰にも分からないのだ。そうだとするならば、生き生きと、感性を存分に奮わせて、毎日時を刻むだけ。
そう、幕末から明治という激動の時代を駆け抜けた、在りし日の福沢翁のように。

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