見出し画像

協賛企業賞 受賞コピーをいかにして書いたか?【第60回 宣伝会議賞】

はじめましての方ははじめまして。
そうでない方は、いつもありがとうございます。
コピーライターのハヤサカです。

■第60回宣伝会議賞で協賛企業賞を受賞!

だいぶ時間が空きましたが、
国内最大のキャッチコピーCM公募賞・第60回宣伝会議賞が終わりました。
取り組まれた方、改めましてお疲れさまでした…。

今回自分が応募したコピー、CM案の本数や通過数をまとめると

●応募:2658本
●一次通過:41本(うちラジオCM1本)
●二次通過:7本
●三次通過:1本
※一次通過率1.54%(全体の平均通過率1.06%)

という結果。
前回の第59回では1141本応募し、22本が一次通過、うち1本が二次・三次通過だったので、二次通過が大幅に増えたのはひとつ成長◎通過率は落ちたし、三次通過数は変わらずですが…。
切り口を多く出す力はローラーさん主催のコピグラ(※)で鍛えられましたし、コピグラ仲間も頑張っているんだと意識することで応募本数を倍以上に伸ばせました。大感謝。Respect. ただ、一次通過数は50本以上、通称コピモン(コピグラ周りで使われている称号)を目指していたので個人的には少し悔しい結果となりました。

(※)…宣伝会議賞をはじめ公募賞を多数受賞されているローラーさん(Twitter:@ro_ra_)が主催する、ツイッターキャッチコピーグランプリのこと。お題に対してのキャッチコピーをツイートで投稿する形式。いまはお休み中。

また、第50回宣伝会議賞でグランプリを受賞された日野原さんがnoteで販売されている「宣伝会議賞コピー技法66」も大変助けになりました。宣伝会議賞の受賞作を、コピーの型ごとに分析・分類してまとめた記事なのですが、宣伝会議賞に限らずコピーを書くうえでとてもタメになります。オススメ◎


そしてここからが本題。
一次通過41本のうちの1本が、ヤマハ様の協賛企業賞を受賞しました!!


課題は「ヤマハのエレキギターを選びたくなるアイデア」
求められるのは、ギブソンにフェンダーと根強い定番ブランド信仰があるエレキギター市場において、ヤマハを選択肢のひとつに加えたくなるアイデア。そんな課題に応えるコピーとして選ばれたのがこちら。↓


「定番狂わせ。」

「『エレキギターといえば』という選択肢に風穴をあけてやろう」という想いを込めた、定番+番狂わせを組み合わせた造語コピーです。この造語、過去にも使われていそうで、実は探してみるとあまりないんですよね。ありそうでなさそうなコピーを書けたということ、それを評価いただいたことが大変嬉しいです!

ただ「被りそうだなぁ〜」とも思っており、いざ誌面で発表されたらやはり被っていたという笑 同じ課題に向き合い、同じ答えに辿り着いた方がいると思うと感慨深かったです◎

■考えていたのは「対象とトーンを揃える」こと

せっかく賞をいただいたので、どんな考えでコピーを書いているかなど伝えられればいいかな、と思いこの記事を書くことにしました。とはいえ、伝えられるような大層なノウハウはないですが…搾り出して言語化してみます。

今回受賞したコピーも含め、自分が常に気をつけているのは
「企業や商品とトーンを揃えたコピーを書く」ということ。

「そんなん言われなくても分かるわ!やってるわ!」と感じる方も多いと思いますが、コピーを書くのが面白くなってきた頃こそ見失いがちなポイントだと思っています。コピーって、良いこと言いたくなるんですよね。格言的というか、学びになること、多少嘘っぽくてもキレイなことを言いたくなる。「ウマい!」「感動した!」って思ってもらいたくて。名コピーライター・谷山雅計さんも著書「広告コピーってこう書くんだ!読本」で話されていた、「人はコピーでウソをつく」というやつです。

もちろん、興味をひいたり魅力を伝えるために表現を工夫することは大事ですが、対象の企業や商品とトーンが合っていなければ、いくら良いことを言っていてもうまく噛み合わないように感じます。

たとえば、社会的な意義が大きかったり、シリアスな問題がテーマの場合、レトリック(言葉遊び要素)などに頼りすぎるのは、かえって小手先感が出てしまう気がします。「ウマいこと言って誤魔化してない?」と思われるというか…政治家が掲げるなら、こねくり回した言い回しよりまっすぐ誠実そうな言葉の方が信用できそうですよね。

逆に、遊び心がある企業や商品の場合は真面目なトーンは合わないと思います。お菓子のCMとか、商品説明そっちのけで楽しく踊ったりするのが多いですし。まあ、ガリガリ君の値上げ広告(アイスのガリガリ君の値上げを社員一同で謝罪するというシュールなもの)のように、あえて大真面目な表現をすることで「シリアスな笑い」を生むこともありますが。

ちなみに、宣伝会議賞でよくある「正直言って何をしているのかあまり分からない企業」の課題に対しては、レトリックなどの印象の強さを重視したコピーが通過しやすいように感じました。あまり言いたくはないですが、俗に言う「おもしろいコピー」というか。これ、おそらく「審査員もその会社についてよく知らないから」だと思っています。よく分からないからこそ、コピー自体の強さ、印象が肝になるのではないかなと。

今回の課題でたとえると、私は嘉穂無線様の課題でレトリックをいれたコピーを書きまくりました。私自身は企業研究もしたのである程度は分かりますが、嘉穂無線様は企業名と事業内容に大きいギャップがあるため(アマチュア無線の事業から始まったが、現在はホームセンター事業などがメイン)、初めてこの企業を知る人に対して「何をしている会社なのか」をコピーで伝えるのは難しいと考え、レトリックに頼ることにしたわけです。とにかく会社の名前を知ってもらおう!面白い表現で興味を持ってもらおう!そんな力業のインパクト頼りで。
そのおかげか、嘉穂無線様の課題における一次審査の通過数は全参加者で一番多い7本でした◎コピーライティングというより、宣伝会議賞におけるノウハウの話ですね。(実際の広告ならボディコピーで伝えていくのがいいと思います)


さて本題、今回のヤマハ様の課題は、ざっくりと言うと

「定番ブランドに勝ちたい」

という話です。
となると想起するのは「下剋上」「ジャイアントキリング」「挑戦」などのイメージだなと。さらにはエレキギター=ロックというイメージもあるので、コピーを書くなら「荒々しさを意識しよう」と考えていました。

エレキギターの良さをこんこんと語ったり、ヤマハのエレキギターの特徴を説明するよりも、勢いよく!短く!ドン!って感じのコピーがいいなと。なので「ぶっ倒してやる」「追う立場の方が倒しがいあるぜ」的な、「ヤマハのエレキギターを擬人化したら言いそうな言葉」を意識してコピーを書いていました。

その中で「定番狂わせ。」はちょっとこねくり回した感はありますが、その短さゆえの勢いや、「狂」の文字から伝わるロックな印象から選んでいただけたのかなと思います。なんでも社内会議でダントツ人気だったそうで、嬉しい限り…。
まあ、実はこの課題では受賞コピーも含めて47本中2本しか通過していないので、この考えが良いかどうか自信はないんですが、、方向性は良くても、コピー自体が上手くまとめられていなかった故かなと思います。一応受賞はしているので、信じてください!

■アイデアを考えても浮かばない→歩いてみると浮かぶ→でも考える時間は必要だよという話

先日、ラジオ番組「オードリーのオールナイトニッポン」で、芸人の若林正恭さんがネタ作りに関して「机の前で考えてる時にはなかなか浮かばないけど、ふと外を歩いたりして刺激を受けるとネタを思いつくことが多い。でも最初から刺激ばっかり受けたら浮かぶかというと、そうでもない。」という話をされていました。

これを聴いた時、「まさに自分が思っていることだ」と勝手に感動したんですよね。というのも最近、オードリーにいまさら激ハマりしてて…(脱線)

自分もコピーや企画を考える時、まずは対象についての知識を集めて学んで、そこからうんうんと座って考えます。そうすると…大抵普通のアイデアしか出てきません。そのうち何も思いつかなくなってきて…ついには手詰まり。「あ〜しんどい」とそんな停滞状態にもやもやしつつ、買い物などの用事で外出をすると、なぜか歩いているうちにぽんぽんとアイデアが湧いてきたりするのです。

なぜなのかと考えてみましたが、きっと「自分以外の色んな人を見ることは刺激になる」のではないかなと思っています。コピーにしても企画にしても、対象は世の中の多くの人。外を歩いてみると、その世の中の人たちを多く目にします。子ども、営業マン、ご老人、主婦、タバコを吸ってる人、会話しながら歩いてる親子…たとえ考えているコピーや企画に関係のない人たちだとしても、人間にとっては人間が一番の刺激になるのではないかな、という持論です。
あとは、歩いてる時って「足を動かす」「周りを見る」「階段を登る」「ぶつかりそうになったら避ける」という動きを無意識に行うので、単純に脳が活性化するのかなとも思います。ただ座っているよりも脳がほぐれてきて色々と思いつきやすくなるのかも。かもかも。

じゃあ最初から外を歩けばいいのかというと、若林さんが仰るようにそれでは浮かばなかったり。アイデアの材料となる基本的な情報や思考の集積=「基礎」がないと、いくら刺激を与えてもうまく結びつきません。うんうんとありきたりなアイデアを出し続けて基礎を固める、その時間が大切なんだろうなと。

あの稀代の落語家・立川談志師匠も「型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる。型ができてない者が芝居をすると型なしになる。型をつくるには稽古しかない。」と仰っていたそうですが、コピーライティングでいうと先ほどあげた「基礎」が型なのではないかなと。
誰も知らない新しいゴールは、スタート地点から逆走したところとかにあるのではなく、正しいルートを進んだ先のちょっとはずれたところにあるものだと思っています。

■オリエンシートは読まない?

「宣伝会議賞で受賞したいならオリエンシートなんて読むな」
と言う方もいます。良いアイデアならオリエンや企業側が想像する課題を飛び越えていくから、という話だったかなと。

ただこれ、単に最初から無視しろというわけではなく「一旦忘れろ」という話だと解釈しています。まずはオリエンを読み込み、必要な知識を学び、考えて、そのうえで一旦忘れる、距離をおいてみる。そうしないと、ついついオリエンを意識しすぎてしまうんですね。

課題はこれ!こういう答えがほしい!と言われると、つい視野が限定的になってしまい、オリエンに引っ張られた案になりがち。結果、他の応募者と被りまくるありふれた案になってしまいがち。これが仕事の場合、課題に応えていればごくごくオーソドックスな提案でもいいと思うのですが、宣伝会議賞のような公募だとそうはいきません。
そのオリエンが見つめている視野の範囲から意図して視線を離せる人はそう多くないと思うので、「読むな」と言うのも分かります。

第59回でコピーゴールドを受賞された丸山さんも「この商品に興味のない人の気持ちに近づくため」にあえて商品を手に取らない、その良さを疑ってかかると仰っていましたが、あれは目から鱗でした…。それらの目鱗ノウハウがもりだくさんの丸山さんの記事を勝手にここに置いておきます、自分の記事を読むより何倍もタメになりますので。(怒られたら消します!!!)

あとは、対象について長く触れているとつい「対象について知識がある前提」で考えてしまいがちになるという話もあります。コピーのターゲットは、その対象について知らない消費者が基本なので「知識ゼロの人側」に立った表現をしないといけないのですが、その対象について長く考えているとだんだん(ここは当然のことだから言わなくていいか…)とか考えてきてしまいます。かつての純粋無垢だったあの頃を忘れてしまうのです。

対象について詳しくなるとその商品や企業側に感情移入してきたりもしますが、そこから一歩ひいた目線を持った方がいいというのは難しいところですね。アツくなりすぎないというか。思い入れのある企業の課題で結果がふるわず、そこまで思い入れはない企業の課題でなぜか良い結果が出たりして…宣伝会議賞あるあるです。

ただ個人的には、オリエンに応えることからは離れたくないなと思います。それはイコール企業側の想いなので。まあ、無視しろというのはあくまで公募限定の話ですね。オリエンを踏まえつつ尊重しつつ、オリエンを超えていくような提案をするのが理想なんじゃないかな、と。

■協賛企業賞はストレート、ファイナリストは魔球

オリエンから一歩引くのが大事でぇ〜〜とか言っていましたが、今回自分が受賞したコピーはごりごりのごりにオリエンに沿ったコピー。「定番」という企業側が用いているワードがそのまま入ってますしね。

あれれぇ〜?言ってることちがくない?となりますが、先ほど言っていたような「オリエンより一歩先にいく提案」は、ファイナリスト以上までいくようなコピーにたどり着く道筋だと個人的に思っています。

ファイナリスト作品はそうそうたるレジェンドコピーライターの方々が選出するものですが、協賛企業賞は企業側が一次通過以上の応募作の中から選ぶもの。実際、私の受賞作も一次通過止まりのものです。本職のコピーライターの方々が「これはすごい」と選ぶファイナリストともなるとこれまでにない視点、いわゆる魔球のようなアイデアが出てきますが、それに対して協賛企業賞はコピーに関して詳しくはない企業の方が選ぶ以上、分かりやすくストレートなものが多くなる傾向にあります。

宣伝会議賞に挑戦している以上、「協賛企業賞を狙うぞ!」という方はあまりいないのではないかなと。やっぱり皆目指しているのはグランプリであって、そのために魔球の開発にいそしむわけです。しかし、魔球を投げるのにもまずはストレートを投げられてこそ。魔球開発の過程でいつの間にかいいストレートを自然と投げられるようになっていました、というのが宣伝会議賞のような公募への参加を通じて得られるメリットの一つなのではないかなと思います。

■協賛企業賞はコピーのプロとして嬉しい

受賞の発表後、コピーライター養成講座で同期だった方や、前職で同僚だった友人のコピーライターからお祝いのメッセージをもらいました。久しぶりの方からお祝いの連絡が来て、少しやり取りしたりして…というのも受賞の醍醐味ですね、嬉しい◎

そんなやりとりの中、友人のコピーライターからもらった言葉に、「プロのコピーライターなら協賛企業賞を穫るべき。お客様に選ばれるものを作るのがプロだから。」「協賛企業賞を数回取ることはグランプリを取るのと同じぐらい、あるいはそれ以上褒められるべきこと。」というのがありました。その友人曰く、あるコピーライターの方が言っていたことだと。

先ほども書いた通り、協賛企業賞は協賛企業の方が選ぶものです。それに選ばれるということは、企業側の目線で「課題を解決する良いアイデア」と認めていただいたということ。これ、仕事だとしたら確かに理想的だよなと思いました。(もちろん、本当の理想はそのアイデアで結果を出すことですが)
私も端くれながらプロのコピーライターとして宣伝会議賞に参加しているので、この言葉をもらったことでより受賞の嬉しさが増しました。プロとして嬉しい賞をいただいたんだなと。

これから先もグランプリを目指して宣伝会議賞に取り組んでいくことは変わらないのですが、改めて思ったのは「プロとして、クライアントの課題にストレートに応えよう」ということ。
宣伝会議賞のファイナリスト以上の作品は、コピーへの造詣がないと一見理解できない魔球が多く放たれます。それは斬新な切り口を求めていく性質上自然なことではあるのですが、自分は「誰が見てもストレートに伝わる、それでいて斬新」なコピーでファイナリスト、それ以上にまで行きたいと思い始めました。つまりは「グランプリ&協賛企業賞のダブル受賞」ですね。

ある審査員の方が言っていましたが、このダブル受賞はこれまで例がないそうで。じゃあその初の快挙を成し遂げちゃいますか、というのを目標にこれからも精進していく所存です。

* * * * * * * * * * * * * * *

長々〜〜と語らせていただきました。疲れた……ここまで長くなるとは思っていなかった…伝えたいことは全部盛り込みたい人間なのでこうなります。この記事がこれから宣伝会議賞に挑戦してみようとしている人、もしくは挑戦していて「次も頑張ろう」と思っている人、はたまたコピーを書くうえでの考え方を学んでいる方の助けになればこれ幸いです。

最後に、この記事を読まれる方は同業の方がほとんどでしょうが一応宣伝◎キャッチコピー/ボディコピー/ネーミングなどの制作を個人で請け負っておりますので、お困りの際にはぜひご相談ください!お値段は要相談です。
こちらのコメントででも、Twitter(@hayasaka_copy)からでもご連絡お待ちしております!

それではまた。

コピーライター
ハヤサカ

#宣伝会議賞   #コピーライター   #キャッチコピー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?