トルストイ 「戦争と平和」を読んで
定年退職したら、じっくり長編小説を読んでみたいと思っていました。
図書館のロシア文学のコーナーに、トルストイ(以下、作家)の「戦争と平和」を見つけた。
岩波文庫のワイド版で、字も大きく読みやすいです。
高校時代に、作家の「アンナカレーニナ」を読みました。
内容をほとんど覚えていませんが、ともかく読み終えたことは記憶しています。
この小説の読み通せるかなと思い、お借りしました。
小説の内容
19世紀前半、ナポレオンのモスクワ侵攻した当時のロシア社会を、作家は5年という年月を重ねて書き上げました。
普段読む小説は、何人かの主要人物の生活、出来事、内面を描くことが多かったと思います。
この小説は、当時の貴族社会の20人以上の人物や、多数の歴史上の人物も登場します。
人物描写、心理描写が的確で、その時代の人間模様を描いています。
長編小説を読む楽しみ
多くの登場人物は、小説の中で、年を重ね、幸福であったかと思うと不幸が訪れ、病気や戦争で死んでいきます。
私は、裕福な貴族の若き青年が、軍務経験が少ないのに、いきなり第一戦線に出て、命を落とすページを思い出します。
最初は命のはかなさを感じましたが、この時代には、青年が大志を抱いて取りうる行動であったのだ、と思えてきます。
読み終わった後も、何人もの主要人物の半生が、私の頭の中を縦横無尽に駆け巡り、その時代を一緒に生きていたような錯覚に陥いります。
長編小説を読む楽しみはここにあるのかなと、感じました。
作家の試み
ナポレオンが、何故、フランスから遠方のロシアに侵略戦争を引き起こしたかを、作家の所見を踏まえ、歴史学的、政治学的、実証的に考察しています。
作家は、何故、そんな試みができたのでしょうか。
作家自身が、地主貴族として自分の農地経営に取り組み、農民の生活を詳しかったこと、軍隊に属し戦争経験もあったことなど、自分の属する貴族社会以外の社会全体を理解していました。
当時の学問がまだ細分化されておらず、一人の人間が多くの学問の骨子を学ぶことができ、網羅的にその時代の全体像を精緻に把握できたのではないでしょうか。
読後思うこと
世界的に有名な小説を理解できたかと言えば、私はほんの一部に過ぎないはずです。
自分なりに消化していくしかないです。
この小説を読み終えてから時間が経過すると、自分は今の時代に他者と繋がって生きている、この時代は以前より進歩していることもある、また、以前と変わらない問題を抱えているのかもしれない、と感じます。
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