シェア
速水涙子
2024年7月18日 22:52
店内は白熱灯の明かりでほの暗く、絶えず耳なじみのないピアノ曲が流れている。私が住んでいる村にはこんな小洒落た喫茶店などなかったから、どうにも居心地が悪かった。 それでも、ここが待ち合わせ相手の指定する店なのだから仕方がない。私は落ち着かない心持ちで周囲を見回した。 壁には一幅の絵がかかっている。若い女性が描かれた写実的な絵だ。後ろ姿なので顔は見えない。それでも途端に嫌な気持ちになって、私