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速水涙子
2024年6月30日 23:54
ひそひそと言葉が交わされている。家主が席を外している間に、口さがない客人たちがうわさ話でもしていたのだろう。それを廊下でうっかり耳にしてしまった。 己のことはどう言われようとかまわない。しかし、彼女のことを悪く言われるのは心が痛んだ。 わざとらしく咳払いをすると、声は息を飲むようにぴたりと止まる。相手が取り繕う間を与えてから襖を開ければ、澄ました顔の客人に迎えられた。 ただ、私の中に