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最敬礼【テニス】


 声をかけられたから覚えていた。
 このクラスのレギュラーは誰かと聞かれて答えると「ですよね」と返ってきた。

「ありがとうございました」

 10も20も年上に思える人がする最敬礼。その人は別の日、初級にいた。もう一人、何度か今いるクラスに来ていた人もやっぱり別の時間帯の初級で見かけた。
 自分に何が足りなくて何が必要か。それを補えるところに向かう。目的があることで同じ環境でも見えるものが変わり、得るものが変わる。誰にでも平等に与えられるものから、個人が渇望したものに。本来「それ」を得るために対価、時間を差し出しているはずで、真ん中を、自分をきちんと見つめることのできる人は素直にすごいと思う。

 別に初級中級に上下の概念はない。けれどいい年齢の男性だからこそ、
 私自身、何よりプライドを大事にしているからこそ、自らプライドをぶち折れる人には敬意しかない。最敬礼。するのは私の側だ。





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