話すことがないのは、その人に興味がないから
シャンプーを流し、ドライヤーを当て終わるまでの長い沈黙を破って、美容師が唐突に僕に質問を投げかけた。
別に僕は髪を切られながら料理雑誌を読んでいたわけでも、エプロンをつけていたわけでもない。つまり、なんの脈絡もない。
僕は数年に一回しか美容院に行かない。数年に一回なので、行きつけの美容院も特になく、馴染みの美容師もいない。当然、この発言をした美容師とは初対面だ。これまで料理の話をしたことがあるわけでもない。
それなのに、美容師は料理の話を切り出し、不器用にもその話を継続