少女は誰が為に剣を振るう 1話

第1話 終焉

私の名前はユナ。まぁ、自分で言うのもなんだけど結構強い方だ。
1人で森の中で生きる技術や知識もあるし、話しやすい雰囲気もあるって言われる。
世渡り上手ってやつだ。あと村では一番の美人だってよく言われてたかな。小顔だし。目もパッチリだし。赤髪だし。
あ、そうそう強さね。まあ住んでた村では一番強かったかな。
剣もまあまあ扱えるし、あと魔法も使える。
本とか読んでめっちゃ練習したし。
で、もっと世界を知りたくて15歳で旅に出たの。両親?いや分かんない。気がつけば教会で育てられてたし。でもそのおかげで色んな人や知識を知れたからいいかな。
でも、ちょうど良かった。15歳で教会を出なきゃいけないから。

で、森に入って腕試しに戦ってたんだよね。
小さいモンスター相手に。そしたらね、山賊に出会っちゃって。
相手は多分10人近くいたね。でもね私、負けそうになってたの。
だってしょうがないじゃん。そんな大人数と戦ったことないもん。
本気でヤバいと思った。あ、死ぬなこれ。って。色々されて死ぬなって。だから最後に助けを求めたんだよね、絶対来ないけどね、大体。

だけどその人は来た。

一瞬だった。私が叫んだ瞬間、その人はまるで、、なんて言うのかな一言で言うと、、、
疾風怒濤?、、、うーん、、早すぎてよく見えなかったんだよね、動きが。
あれ?本当に人間かなって。人ってこんなに早く動けるんだって初めて知ったよ。

全身真っ黒の服を着て、ヒラヒラのポンチョをなびかせて。多分刀で斬ってるんだけど太刀筋も何もかもが一瞬で早すぎて見えなかった。全員一太刀で命が事切れてた。操り人形の糸が切れるように。実際って斬り合ったりって無いのかな?必殺って意味を初めて知った気がする。

気がつけばリーダー格の男以外は全員死んでた。死ぬ時って足の指をぶつけるときより叫ぶものだと思ってだけど違った。

ああ、人が死ぬ時ってこんなに静かなんだ、、、。

そして他人が目の前で死ぬのってこんなにも無感情なんだね。
私はその人とリーダー格の山賊が見合っているその立ち姿に釘付けになってたんだ、、。

一瞬で終わるんだろうな、、、。なんて事を考えていた。

私の名前はアンナ。、、、えっと何を言おうかな。
気が付けば戦っていた。スプーンやフォークを持つのと同じ様に。
子供の頃から剣を手にしていた。食材を取りに山へ行き、動物の命を奪うのと同じくらい、戦場で人間の命を奪っていた。
人を殺してんのに色んな事を考えねえのか?そんな事を言ってたじーさんが前にいたかな。すぐに死んだけど。
余計な事を考えてたら次は自分が奪われる側だ。ま、考えてなくても運が悪い時ってやつがある。
そして今回はたまたまそっち側だった。

私は死ななかったけどね。だからこうして話してるんだけど。

馬車に揺られ、どこかの街を目指している。2人は分かっているが、私には良く分からない。
聞いても多分分からない。あんまり街の名前とか分かんない。常識ってやつ?それがかなり無い。だってあんまり考えたことないから。どこで戦うとか、どこに向かうとかは団の上の人達だし。あたしらは流されてままに、命令されるままに。

あ、飲む酒と食べ物は自分で決めるけどね。

「あっという間だったな。」
額から血を流したのだろう。応急的に適当な布を頭にしばり止血している男。
布は既に血液が滲んでいる。舞う砂埃、衛生的とはいえない環境の中で汚れておりドス黒い色になっている。傷だらけのそんな姿なのにやけに様になっている。
年齢は40代といったところか。体は細いが、戦の中で自然と鍛えられた体には無駄がない。

「ああ、、、ま、潮時っちゃ潮時か。良い夢みせてもらったぜ、この団にはよ。」
気の良さそうな男が何本か歯のない口で笑いながら言う。人にすぐ好かれそうな雰囲気や表情だ。体格はまあまあ鍛えてあるが、強さはあまり感じられない。

「はは、全くだ、バディ。最強とかなんとか言われてても終わりは呆気ねえよな。」
「ま、俺たちはその日暮らしみてえなもんだからよ。また新しい雇い主を見つけて戦稼業していこうぜ、ラルフ。」
「だな。まあ、楽しかったぜ。でもよ、まさかアンナが生きてるとはね、、」
「ぎゃははは!本当だぜ!なんせ先陣切って斬り込む1番隊は全滅したと思ってたのによ!」
歯の無い男がどんよりときた空気を吹き飛ばすかのように大声で笑う。

「お前どうやって生き延びたんだ?」
アンナと呼ばれる女性にラルフと呼ばれる男が話しかけられる。
黒のスキニーパンツ、フード付きのポンチョ。少女の隣には日本刀のような鞘に収まった剣がある。前髪は眉毛あたりでパッツン、顎先あたりの長さのボブカットに切りそろえられた髪型。
髪の色は黒を基調にややグレーがかかっている。他の仲間と違い、全身黒ずくめだった。武器も全て黒ずくめ。
「どうって、、、最初はね良い感じだったんだよ。かなりうまく切り込めてたんだ。あ、今回の仕事思ったより楽勝かなって。そしたらなんか気付いたら仲間がどんどん死んでて、、途中から自分の後方から敵が切り込んできてる感じがしたんだよ。だからね、あ、これヤバいなと思って逃げた。」

「完全に攻め込むタイミング、方向を読まれてたんだな今回。俺たちの団の横っ腹からドカドカ攻め込まれたからな」

「油断もあったんだろうな。最近の俺たちゃ連戦連勝。最強ってやつ?に1番近かったんじゃねえかな」
歯の無い男がおもむろに懐から酒の入った鉄製の入れ物のフタを開け飲む。

「じゃあアンナ、オメー団長がどうなったか知らねえのか?」
「知ってるわけないじゃん。最前線で戦っててどうやって連絡取るのよバーカ。」

「だよなー、側面から一気に攻め込まれてソッコーで首狩られてたわ」

「あちゃー、、ごりんじゅーさま」

「バカ、そうゆう時はご愁傷様って言うんだよ!ぎゃははは!ホントオメーはバカだな!」

その後も3人は負けた後の与太話に興じ、気がつけば馬車は街に到着していた。

多分、わたしは初めて街を意識して見ていた。街の人達が活気溢れて仕事していて何だか良いなぁと思ったり。私はこれからどうしようかな、、、馬車から降りるとラルフが明るく口を開く。

「そんじゃこっからは別行動だ。楽しかったぜ、兄弟」
「ぎゃははは!馬鹿野郎、俺たちゃいつでも楽しくがモットーだろ?」
「うん、楽しかったよ。ありがとう、ラルフ、バディ」
3人でハグをする。

「次に会う時は、、、まぁ、殺し合いたくはねえなあ」

「おい、辛気くせぇ事言うなよ。先の事なんか誰にも分かんねえよそん時決めようぜ、ぎゃははは」
「だね。2人はまたどこかの団に入るの?」

「んー、まあ色々見てからだな。つーかアンナ、おめえはどうするんだ?」

「私は、、、当分は1人って言うか団には所属しないで生きていこうと思う。もうああゆう生き方は良いや。気がついたら常識っていうの?そうゆうの全然ないし。これからは自分で考えて行動してみようかな。」

「なるほど、、、、まあ、それも良いかもしれねえな。そろそろテメエの為の生き方ってのも見つけてもよ。おめぇ、金はあんのか?」

「いや全然」

「ちっ、だろうと思ったぜ。おい、バディ。」

「ほらよ」

バディが小さな袋をアンナに投げ渡す。

「少ねえけど取っとけ。餞別だ。」

「、、、、、ありがとう。」

「まあ一気に使うなよ?おめえレベルなら森に入れば食料ぐれえすぐ調達できんだろ?おめえは常識ってやつが本当無いまま今まで来ちまったからな」

「うん、ありがとう。大事に使うよ。まあ、、、頑張ってみるよ」

「じゃあな。」

「お、最後だからあれやっとくか。生きて帰る為のゲン担ぎ」
「いいね」
「おお?戦いしか知らねえ野郎が珍しいじゃねえか、くくく。」

3人で拳をつきあわせる。

「「「死なずに気楽に行こうぜ!クソ野郎共!」」」

2人と別れた後、お腹が減ったから初めて露店で甘い食べ物を買った。
人生で初めての買い物は、、恥ずかしいけどなんか感激した。

その後、森のモンスターがどのくらい強いやつがいるのか視察に行き、食料になりそうな山菜や獲物をを取りにいったら意外にも結構残ってて、この食材で鍋でも、、、って思ったら私、携帯用の調理器具全然持ってなかったんだよね。しょうがないから食材を宿に持ち込んで作ってもらおうかなと思ったら、近くで声がしたの。
「死ぬううううぅぅぅぅ〜〜〜っっっっ!!!!ぎぃやあああああああ!!!」

聞こえた瞬間、めっちゃ笑った。死ぬ時にここまで叫ぶ人いるのかって。
笑ったのなんかいつぶりだろ。
久々に笑わせてもらったし、本当に死にそうなら助けてあげても良いかなぁって思って駆けつけたら本当に襲われてた。

山賊達は完全に獲物を見つけて夢中になっていたから、ラッキーだった。不意を突くほど楽勝な事はない。最初が肝心だ。

アンナは叫んでいた子の背後から飛び出して1番近くにいた3人を一気に斬りふせる。
血しぶきをあげて死ぬ3人。全員斬られてから反撃しようと思ってはいるのだが出来ないでいる。出血性ショックにより急激な血圧の低下により失神してしまうからだ
怯んだ奴等ほど弱いものはない。数の暴力という圧倒的な有利な場面を覆す。

そして今に至る。
リーダー格の男はもう半分くらい戦意を喪失していた。
まあ、仲間が一気に全滅すればそうだよね。1番早いのはリーダー格殺せばすぐ終わるんだけどね。駆けつけた位置が正面だったから無理だったんだよね。
私はリーダー格の男に話しかける。

「えーと、、、やる気無いならやめといた方がいいよ。私大怪我にするとか手加減できないから。絶対殺しちゃうから。」
リーダー格の男はビビりながらもこちらを警戒しながら威嚇する
「ふざけんな!!こっちは仲間全滅させられてんだ!後には引けねえ!」

「え?そうなの?悪いけど、、絶対死ぬよ。あんたの見え見えの太刀筋じゃ。あんたが動いた瞬間に殺せるけど、、、いいの?葬い合戦だっていうなら止めないけど、、どうする?」

「ほ、本当に見逃してくれんのか?」

「うん、だってもう助けたようなもんだし。だから良いよ。私もお腹減ってきたし、動くとお腹減るじゃん?えーと、、節約?したほうが良いって昔の仲間に言われたからさ。今日はもう戦いたくないかな。」

「わ、分かった!見逃してくれ!」

「うん、じゃあバイバイ。気をつけてね」

リーダー格の男は一気に森の中へ逃げ出す。

「な、なんなのアンタ、、、」
これがユナとアンナの初めての出会いであった。

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