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驚愕

幼少期から歌うことが大好きだった。

記憶を辿れば、幼稚園に入る前から歌というものにとてつもない執着が合った。

初めて歌手を志したのは5歳。
その頃から音感には自信があって、父によくカラオケに連れていって貰っていた。

正しく言えば褒めて伸びるタイプではないのだが、父に褒めてもらえる度に次連れてきて貰う時にもっと驚かせたいという願望があって古い曲を覚えたり、難しい曲を覚えたり、とにかく歌い続ける毎日だった。

11歳の夏、青森に帰省した渋谷家一行は祖母にカラオケがついている古びれた飲み屋に連れて行って貰った。私はまたここで、褒められる準備をしていた。常に最高の力を出して、私という存在の記憶を更新させたい。この頃から私の一番の敵は自分だった。

秦基博さんの『ひまわりの約束』を歌うと、隣の卓で飲んでいた20代程の男女の集まりから絶大な褒め言葉を貰った。それが心底うれしくて、驚いてくれるのは父だけじゃないのかもしれないと夢が深まった日だったから今でもよく覚えている。

この頃から音楽で驚きを得ることがとても好きだったのかもしれない。歌が上手い人を見る度に胸が高鳴り、私も同じことをしたい、と夢見る日々が続いた。

初めてギターを手にしたのは、12歳。
大原櫻子さんの影響だった。
彼女のまっすぐ伸びる声に恍惚し、弾き語りをすればみんな驚くかもしれないと夢を見た。

ずっと、驚かせる、喜ばせることが大好きだった。それは今でも形を変えずに私の中で一番大事なものとなっている。

驚くことも好きだ。
私が好きな音楽は、ほとんどが驚いたものだ。
そんなことある?!という音の旋律、狂う程気持ち良く当てはめられたリズム、歌声の魅力、本当に音楽が大好きだ。

バンドを始めたことによって、音楽の解像度が深まった。楽器が上手く聴こえるようになってきて、驚きの毎日である。

ずっと密かに夢を見ていた歌手に、今年は沢山近づくことができた気がする。
自分の曲を人前に立って歌うことが当たり前になり、昨日まで知らなかったような人達が私の曲を知っている。それを共に一曲にしてくれる仲間もいる。

そして、セブンス・ベガの初ライブを見に来てくれた父をやっとお世辞や親子フィルター越しではなく驚かせることができた。それが、私の中でかなり嬉しかった。音楽を教えてくれた憧れの存在を感動させることが出来た。最近は実家に帰ると、妹と一緒に私の曲を口ずさんでいる。
照れ隠しに鈍いツッコミを入れるが、実はかなり嬉しい。

私はこれが出来たことで人生に悔いはない。と言いたいところだが、出来ることなら私のこの音楽愛でご飯を食べていけるようになってみたい。
次から次へとやりたい事が増えていく。
それを全部叶えることが私の夢だ。


だからもう暫し、私の夢にお付き合い下さい。
多分、もっと驚かせられる。

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