夏物語の一員になる
暑すぎる。
気が付いたらもう7月も中盤に差し掛かっていて、氷菓がよく似合う、正真正銘の夏が来てしまった。
BGMは、ネオンサインが呼んでいる/evening cinema
私は夏が嫌いだった。
雪国生まれのせいか、暑さに弱い。
毎年軽度の熱中症でのぼせにのぼせている。
私は夏が嫌いだった。
どこに遊びに行っても、何をしても、
夜が来ても、暑い。
街中の薬局を通り過ぎる瞬間と、
冷房で隅々まで冷え切った部屋でタオルケットに包まるあの時間だけが至福。
私は夏が嫌いだった、はずだった。
でも夏は思っていたより楽しかった。
夜更かしをして、深夜に車中泊をしながら向かう旅行。
電車で都内を回るスタンプラリー。
夏休みの始まりを飾る、早朝のラジオ体操。
気になっていたアニメを日が昇るまで
一気見する、長い夜。
ゴールデンタイムのバラエティ番組を見ながら
すする冷たい素麺。
ひんやりとした部屋で読む、夏休みの課題図。
思い出や情緒が働くのはむしろ夏。
案外好きだったのかもしれない。
好きと言えば、
夏休みの課題図書で1番好きだったのは
『カンナ道の向こうへ』
夏物語にはなんとも言えない不思議な魅力が
ある。まるで自分が冒険しているかのような臨場感。大人になってどこでも行けるようになってしまった私でも、あの頃と変わらない感性で読みたいと思える、そんな物語だった。
今夏は何か一冊でも本を読んでみようかな。
今年はどうやら充実した一年になりそう。
10代最後の夏は、忘れられない夏になるだろう。
既にパターン化された"エモ"でもいいから、それを満遍なく味わってみたい。
好奇心旺盛な性格だけは、昔から何も変わっていないみたいだ。
全て過去の思い出に過ぎなく、とことん美化されているだけだと思っていた。
極限まで捻くれ、夏なんて暑いだけだという私の手には、汗をかいたスイカバー。
なんだ、夏楽しいじゃん。
シブヤカンナ
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