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独自研究

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私のオリジナル研究です。論文に近いスタイルで書いてあります。
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2020年3月の記事一覧

鬼押出し溶岩から発生した鎌原土石なだれ

1. 冷たい土砂の流れだった浅間山の1783年(天明三年)噴火は、その最終局面の8月5日10時に突然発生した土石なだれが鎌原村を襲って多数の死者が出たことでよく知られる。鎌原村を高速で通過した土石なだれはそのまま吾妻川に入って熱泥流となり、渋川で利根川に合流してその日のうちに江戸と銚子まで到達した。これに巻き込まれた死者は1490人を数える。 鎌原村を襲った土石なだれはマグマが噴出した火砕流ではなく、浅間山の山腹をつくっていた冷たい土砂の流れだった。ただし高温の岩石がわずか

浅間山の山体崩壊と土石なだれ

1. 黒斑山が崩壊してできた湯の平小諸市の高峰高原から黒斑山を目指して登山すると、2時間足らずで森を抜けて山頂に立つことができる。東側は断崖になっていて、目前の前掛山との間に湯の平が大きく広がる。2万4300年前に当時の浅間山だった黒斑山が東に大きく崩れてできた地形である。そのあと誕生した前掛山の中心火道が東に2kmずれていたために成長しても黒斑山を覆いつくすことができず、湯の平に広い窪地が残った。 荒牧重雄は1962年の地質図で、佐久市塚原に展開する多数の流れ山を黒斑山東