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スーパーで2個入りケーキを買える男になりたい

なぜ、2つなのか。君らはなぜ、生まれた時から2人で1つみたいな顔をしてこちらを見てくるのか。

スーパーでの買い物の途中、スイーツ売り場にいる2個入りケーキと目が合う。3秒見つめる。ニーチェは「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」と言うように、きっとケーキもこちらを見つめている。

彼らは僕を見つめ、背後にある生活まで見透かしてくる気がして、さっと目をそらす。胸にざらっとしたものが残る。



大丈夫、心配しないでほしい。さすがに買い物の度にこんな妄想はしてない。癖のある書き出しをやってみたらケーキと対峙するヤバい20代独身男性が生まれてしまっただけ。最近noteを読んでる両親に心配されるのでこの辺にしておきたい。


とはいえ、あのスーパーの2個入りケーキというやつはなんなんだ。ケーキ屋に行くほどではないけどデザートにちょっと甘いものでも食べたいな、と思ってスイーツ売り場に足を運ぶも、20代独身男性にとっては絶妙に手を出しづらい価格設定をしている。

2つ入って、320円。

「いやいや、2つ入ってて320円だよ?ケーキ屋さんで買うより普通にコスパ良いでしょ」とケーキが言う。いや、3日前にZoomで話した大学の同期だったかもしれないけれど、どっちでもいい。


わかってる。安い。でも高い。だって隣に100円のシュークリームがいらっしゃる。

んーーーーーー。

4秒考え、120円のコーヒーゼリーを手に取った。


***

そもそも、なぜ2つなのか。単純計算したら1つ160円。それなら手が出る。何も悩まず、もはやノールック、カートをドライブスルーしながら手に取る自信がある。


はたまた百歩譲って2個なのは許す。しかしなぜ、同じのをセットにした。マクドナルドだってコンビはハンバーガーとドリンクだ。ハンバーガーとハンバーガーをコンビにして売りはしないだろう。

なのに、あいつらはチーズケーキとチーズケーキを、ミルクレープとミルクレープを一つの容器に詰め、「お得でしょ?」という顔をしている。


じゃかあしいわ!(大阪弁で「やかましい」)


これが違うケーキのコンビだったら、「まあ、チーズケーキは今日食べて、ミルクレープは明日の朝にでも食べればいっか♪」と罪悪感なく買えるだろうに。

ちなみに、チーズケーキとミルクレープは好きなケーキランキング上位に入ります。あとモンブランも好きです。

「え?次の日に食べるのアリなら、夕飯でチーズケーキ1個食べて、翌朝もチーズケーキ食べればよくない?」と思ったそこのあなた。


じゃかあしいわ!

それをすると、あの、あれがすごいんや。
敗北感ってやつや…。(知らんがな)


ここまで書いてやっと気づいた。おそらく僕は、商品のターゲットから外れている。

***

もし月収が100万あったら、余裕であいつらを我が家に迎え一晩で貪り食ってやるところだけど、そうはいかないのが現実だ。

グーグル先生に「一人暮らし男性の1か月の食費はどれくらいですか?」と聞くと、総務省の2019年家計調査のデータから「だいたい4.5万円です」と教えてくれた。「え、そんなにみんな食費にかけてるんですか!?」と聞き返したら、年収450万円の設定だった。ないない。

自分の年収で計算しなおすと、大体3万円ちょっとが平均的らしい。

3万円の予算に320円のケーキ(2個)を組み込むのを小さな贅沢だと感じる人は、きっと同志なので連絡をください。幸せになろう。


ちなみに、20代の一人暮らし世帯は2015年の国勢調査の時点でおよそ300万世帯くらいで、これは20代の人口全体の4分の1にあたる。

つまり3日前にZoomで話した同期を除いても、多くの同志「スーパー2個入りケーキ難民」がこの国には存在している可能性がある。仲間は多い方が心強い。繰り返すが同志はぜひ名乗り出てほしい。


さて、そんな同志、特に男性陣に朗報がある。
どうやら我々は「モテる」らしい。

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ほんの少しだけ恣意的な検索の結果、上から2つ目のサイトを参考にすると一人暮らしの男性に女性が期待するものは、

「精神的自立と強い心」、「経済的自立と金銭感覚」、「自己管理能力と家事スキル」の3つ。

理性で欲を抑えスーパーで2個入りケーキではなく100円のシュークリームを選べる一人暮らし男性は、上の3つを持ち合わせているはずだ。

僕らはたしかに2個入りケーキのターゲットではないのだろう。
でも一人暮らしで培った強い心を持てば、それを気に病む必要など元々なかったのだ。


***

そうして考えるに、僕はモテる可能性が高い。なぜなら次の4月で一人暮らしが10年目になるから。ベテラン、とまではいかなくてもきっと中堅くらいにはなってくる。

精神的に自立してるはずだし、家事スキルもそこそこの自信がある。

だけど、流石に飽きてきたというのも正直な気持ちだ。家に帰ったら誰かいたり、誰かの帰りを夕飯の支度をしながら待つような暮らしに憧れを持っている。

それに、モテる可能性が高いとは言ったが、モテているとは言ってない。そう、「同志」などと呼んで仲間を募ったけれど、実際は寂しさの裏返しなのだ。

本当は、スーパーで2個入りのケーキを自信をもって手に取れる男になりたい。仕事を終えて家についたら「ケーキ買ってきたんだけど」と言えるような暮らしがしてみたい。ずっと、そう思っていた。




これまでは。





さて、長い前置きをおいてのご報告です。

この度、一人暮らしを卒業いたします。


2個入りのケーキを素敵に分け合えるような出会いを経て、その方とこれから2人暮らしを始めます。

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一緒に食事をしたり、「この前はチーズケーキだったからミルクレープにしようよ」「いや今日はちょっと贅沢して、ケーキ屋さんいかない?」とデザート会議をしたり、時にはお酒でも飲みながら真面目な話を遅くまでしたり。

スーパーで一つの箱に仲睦まじく収まっているあのケーキのように、お互いの凸と凹をうまくかみ合わせ、楽しい暮らしを作っていこうと思います。

同志たちよ、すまない。少し先に進むよ。
スーパーで2個入りケーキを買える男に、僕はやっとなれたんだ。
これからの2人を見守ってくれると嬉しいです。














嘘です。






嘘つきました。すみません。












5LDKの1軒家を勢いで借りてしまいました。

今月末から、多分、4,5人で暮らします。
離れと庭を使って住み開きもします。




これはほんとですよ。
ホールケーキ、買えちゃうぜ。


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引越しの話↓



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