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山雅開幕直前!宮崎を予習する

長いようで短かったオフシーズンも残り1週間となり、ついに24年度のJ3シーズンが来週から幕を開ける。

ただし、山雅を熱心に追っている人でも対戦相手の情報までは追えてないという人がほとんどではないか……(僕もそう)。そこでそろそろ開幕戦の対戦相手となるテゲバジャーロ宮崎の情報を予習し、来週に備えていこう!という企画。


■これまでの対戦・成績

昨シーズンは北九州に次ぐ、ワースト2位の19位。
J3昇格年で3位と躍進したが、それ以降9位、19位と成績は振るわず。監督も内藤監督→髙崎監督→松田監督と慌ただしく変わっており、今オフも前横浜F・マリノスユース監督の大熊裕司氏が新監督に就任。またしても新体制でのスタートとなっている。

対戦は一昨年の初対戦からこの2年で4度行っており、成績は1勝2分け1敗(アウェイでは1勝1敗)。

2022.04.10 ホーム 2対2 △
<松本>3分:横山、90分+4:榎本
<宮崎>85分・90分+1:岡田

2022.11.13 アウェイ 1対4 ●
<松本>34分:菊井
<宮崎>41分・50分:岡田、77分:薗田、85分:橋本

2023.03.26 ホーム 1対1 △
<松本>65分:菊井
<宮崎>76分:南野

2023.09.17 アウェイ 1対0 〇
<松本>33分:村越
<宮崎>

直近の試合ではアウェイの地で初勝利をあげて対戦成績を五分に戻すことができた。さらに興味深いのは4度の対戦全てで山雅は先制点を奪うところまでは成功している

裏を返すと、その内で3回も追いつかれたり、逆転されたりという試合になっているともいえる。また順位では山雅が上にいるにも関わらず、直接の対戦成績では五分になっていることから、やや"苦手意識"が強くなっているのも無理はないかもしれない。

■今オフの主なインアウト

・GK

GKでは唯一出番がなかった古株の石井(九州リーグ時代から7年間在籍)が移籍するも、正守護神のルーキー青木とその座を争っていた植田は残留。そこに沖縄SVから日本代表を父に持つ名良橋が加入。山雅の安永父と夢の場外乱闘(?)も期待したい。

・DF

CBはリーグの半分先発してきた西岡が引退するも、経験豊富で軸になることが期待される大武が福島から加入。さらに高さのある黒木を金沢から、ムキムキのレフティー辻岡をレンタルでいわきから補強。これまでネックだった最終ラインの高さ・強さは一気にスケールアップに成功した。

SBは右では不動だった青山が残留、固まらなかった左は最も出場数の多かった北村を放出。加入では大卒1年目から福島で活躍して山形に個人昇格した吉田、元々は前線の選手として期待されてきたがプロ入り後はサイドのユーティリティとしてプレーする吉永(→大宮、昨年は愛媛)ら推進力のある選手を補強。こちらもCB同様、これまでのイメージとは違うタイプを加えている。

・MF

ボランチは大黒柱の下澤をFC大阪にレンタル移籍。本人の希望ではなかったようなので疑問の声は多く挙がっていた。

一方で、明治大時代には須貝や常本、小柏らと2年連続関東制覇を果たして黄金世代を築いた力安(→金沢)や、世代別キャプテンの19歳・坂井(→鳥栖よりレンタル)を補強。プロでの実績こそ少ないが育成年代で活躍してきた選手たちの抜群のポテンシャルに賭ける。

2列目は、大卒1年目で5G3Aと結果を残した左の永田が八戸に移籍。終盤トップ下に定着していた東出も鳥取に移籍した他、ベテランの石津も引退。主力は北村を残して総入れ替えとなったのは不安要素。

しかし、加入ではC大阪時代に大熊新監督の下でプレーしていた魚里(→藤枝)大渕(→長崎よりレンタル)や東京Vからのレンタルで昨季北信越1部MVPの阿野、大学時代にはJ1からも興味を寄せられていたスピードスターの楠、さらに徳島ユースの至宝・藤原(レンタル)らが加わって一気に若返った印象。個の打開力に長けた選手が多く、縦へのスピード感がある。

・FW

FWは2桁得点でエースに成長した南野がレンタルバック(→今年は栃木にレンタル)。さらに山崎や青戸も放出に。昨年は長きにわたって離脱していたターゲット役の橋本が軸としてチームに残った。

さらに、いわきでは途中出場を中心に25試合に出場して2G3Aの吉澤JFL得点ランキング2位タイの点取り屋・上野と対抗馬も強力。いずれもパワーのあるフィニッシャーとなっている。

■勝手に今季の特徴を考える

①オーナー変更で「育成型クラブ」に

今季の大きな動きとしてまず起きたのは「オーナーの変更」。

「いちごグループ」が実質的にオーナー企業となったことで「育成型地域スポーツクラブを目指す」という方針が打ち出され、いちごグループからテゲバジャーロ宮崎へスポーツビジネスを推進する人財を投入、クラブの編成を充実させることにまずは着手し、さらに選手を取り巻く強化環境を整えると説明がされている。

その中で監督にはセレッソやマリノスの育成年代で活躍してきた大熊監督が就任。補強も、実際にその人脈を生かした加入やJ1やJ2からの若手選手が多く集められ、今季の目標として「優勝を含むプレーオフ圏内(6位以内)」「若い、可能性のある選手を集め、育てていく」ことが掲げられている。

実際、プロでの実績は少ない若手選手が多い分、チームとしても個人としても伸びしろは十分にあり、大熊監督のやりたいサッカーがハマればJ3の環境も味方して躍進もありえる

一方、開幕戦までの時間で相互理解や戦術の完成度を上げるのは(2年目の山雅と比べると)難しいというマイナス面も。開幕までの短い準備期間でどれだけチームのやり方を整理して若い選手たちに仕込めているか。

②縦への速さと90分の強度

目指すのは「アグレッシブでハイテンポ、ハイプレス、スピーディーな攻撃的なサッカー」。

『昨季まで目指した「攻守にアグレッシブなサッカー」に「速さ」を加え、選手には90分間戦える体力や、走る速さと判断の速さを求める』と新体制発表会で監督自ら述べている。

編成上も、センターラインには強さや高いインテンシティを出せる面々を、サイドにはスピード感のある選手が揃えた印象がある。

ハイプレスが生命線で、保持時は後ろから繋いでいきたい山雅にとってはそのスピード感に呑み込まれると苦しい展開に持っていかれかねない。相手の速さや強さに動じず、自信を持って自分たちの戦いを貫きたい。

③最適解の未知さとブレイク候補

総勢32人のうち半数以上の18人が新加入なことに加えて、ユーティリティ性に長けた選手が多く、あらゆるメンバーや組み合わせが考えられる

既存戦力では大熊や田中純、北村知が代表的。前2人は昨年はボランチと左SBでの起用。特に監督の甥にあたる大熊はWGでも起用可能で、キッカーとしても優秀。北村知は前線ならどこでもプレーができ、運動量の豊富さは引き続き重宝されそう。

新戦力でも、J3経験が豊富で監督の勝手を知ってる魚里が左右どのポジションでも起用可能なのは厄介。吉永も愛媛では出番は少なかったが途中から複数のポジションで起用されていたので戦い方の幅を広げてくれる存在である。DFの辻岡は大学時代は183cm183kgの体格を生かした左利きCBだったがいわきでは左SBでの起用に。恐らくCBと想定しているが異質の大型SBとしても面白い存在。

さらにTMでは大武をボランチ、代をSBで試した試合も。まだまだ各選手の適性を見極め、意識的に可能性を広げていく時期なのかもしれない

ブレイク候補はあげればキリはないが、TMでも早速結果を残してる楠は開幕戦から驚異になる可能性が高い。鹿島とのTMでは果敢に縦への勝負を仕掛け、格上相手に奮闘。裏をケアしなければいけない龍平や樋口にとっては厄介な相手となるだろう。
 
さらにいわきからレンタルの吉澤も野性味があって怖さのあるストライカー。高さこそないものの、体付きはがっちりとしており、パワフルなプレーが持ち味。いわき時代は途中から出てきて流れを変えるのも得意としていたので宮崎でもまずはそのようなタスクが任される可能性も。

新体制で誰がどこでの起用になるかは読めないので、序盤は特に不確定要素が多い。対して山雅は手の内がある程度バレているので、開幕戦でのスカウティング・対策は宮崎側に利があるはず。立ち上がりは注意して臨みたい。

■勝手にメンバー考察

システムは「4-2-3-1が基本」と明言されており、それを元にメンバーを並べてみた。ただし、上記のように複数ポジションできる選手も多く、状況に応じていくつかのポジションを兼任する選手も出てきそう。

ちなみにトレーニングマッチでは楠がチーム得点王。上野、高瀬、大武がそれに続く。

GKと最終ラインは既存戦力が中心と予想。DFリーダーになれる大武が軸になることで一気にバランスは良くなったように見える。右は青山が負傷で出遅れ。左は一旦大熊と予想したがスタイルに合致しそうな吉田も捨てがたい。

ボランチは昨年の主力である江口を中心に、相方は新加入の力安や坂井の仕上がり次第か。場合によっては大熊らユーティリティの選手が入るかも。田中純も負傷で出遅れ中。

2列目は並び含めて流動的。魚里や楠は一歩リードできそうな雰囲気はあるが……全く確証は持てない。特徴を持った選手が多いので、切り札起用も含めて注目したい。

トップはフィジカルを武器に起点となれるストライカーが揃う。以前から在籍の榎本、JFLからの上野、J2からの吉澤とそれぞれ違う背景を持った3人で力関係も読みづらいのが正直なところ……。状態の良さが重視されるのではないか。

■勝手に試合展望(2/24更新)

さて、それでは山雅との開幕戦の展望に…。

・「仕組み・柔軟性」vs「ハードワーク」

ただ正直なところ、初戦ということで「どのようなサッカーをするのか?」は散りばめられた断片的な情報から探っていくしかない。1つはっきりと言えることはキャンプで構築してきた「自分たちのサッカー」をまずはぶつける意識は強そうということくらいか。

システムは宮崎が4-2-3-1と明言されてるのに対し、山雅も同じく4-2-3-1で噛み合う形。

互いに「縦への早さ」「アグレッシブさ」は大事にしており、「ハイプレスからのショートカウンター」が主体。開幕戦ということで固く入ることなく、激しい展開になるのではないか。

相手の良さを消すというよりは自分たちの良さを出す展開になりやすい中で、互いにキャンプでやってきたこと、これまで書いてきたが宮崎は「90分でのハードワーク」、山雅は「点を取る仕組みと柔軟性」を出し合う事になるだろう。

高さや速さを生かして大味な展開に持ち込んできそうな宮崎に対して、山雅は頭を使いながら、保持・非保持ともにゲームをコントロールできるか。

特に山雅の保持に対して、宮崎がガンガンにプレスをかける構図は狙いたいはず。出会い頭の得点が生まれやすい早い時間で喰らわないように注意したい。

・「守備の二面性」vs「前線の高さ・速さ」

逆に山雅も宮崎の保持に対してハイプレスを仕掛けて高い位置から攻撃を仕掛ける狙いは持ちたいはず。ただし、宮崎の場合は前線にターゲット役が豊富。過去山雅を苦しめたターゲットマン・榎本を始め、吉澤、上野もロングボールの競り合いは得意。

さらにここまで書いてきたように、サイドにスピードのある選手が複数いるのも厄介な点。高い位置を取る山雅のSBの特性上、その裏は泣き所にもなるのでそこを突いてくる可能性は大いにある。

そこで高い位置からの守備が思うように機能しなかった場合、今年キャンプで取り組んできた守備の二面性、つまり「ハイプレスと撤退守備の切り替え」を行うこともあるのではないか。

もちろん得点を奪うことを考えると、引くことによって攻撃のスタート位置が低くなり、かえって試合が難しくなる可能性も出てくるが、先制点を取られると余計にカウンター戦術の沼にハメられてしまう。

そこの切り替えは、システマティックにやるよりも中での柔軟性……勝負勘やサッカーIQのような部分が必要になってくるかもしれないが、そのための補強や準備はやってきている。勢いを上回る"完成度"を見せたい。

・「セットプレー」vs「セットプレー」

そして、小松らが抜けて"弱点"にも、今オフに力を入れて"新たな強力な武器"にもなりうる「セットプレー」は攻守共に注目したい。

攻撃ではまずはキッカー。候補は多いのに加えてあらゆるタイプの球質を蹴るキッカーがいるのも特徴的なので誰が務める、どう使い分けるか。

そして、ターゲットは純粋な高さでは常田・野々村のみという状況もありえるので、もしかするとこの試合に向けたトリックプレーなども仕込んでくるかも。試合の一発目から油断(?)はできない。

逆に守備面は開幕戦という状況が難しくさせる。キッカーも山雅以上に読めない。そして、平均身長こそ高くないが、以前セットプレーから山雅相手に得点を挙げている榎本やお馴染みの大武は190近い高さで、相方候補のCB陣もターゲットとして計算が立つ。ゴール前の高さでは宮崎に分がありそうなのでCB陣を中心にうまく守らなければならないだろう。

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宮崎戦のプレビューは以上。
通常より"予想"の範囲は広いが、ノー勉強で望むよりは試合全体の動きや両者の狙いが見やすくなるはず(多分)。

38分の1とは言え、今年の霜田山雅は昨年以上に「優勝」への意識が強く、最初から走らなければいけない立場。当然開幕戦も落とせない。宮崎の「若さ」を上回る「成熟度」を見せて、結果内容ともに充実した試合にしたい。

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