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松本山雅全選手の個人総括やってみる<GK・DF編>

初めてのJ3での戦いとなった2022シーズンも終了。
残念ながら昇格は叶わず、特に後半戦は苦しい時期が長かった。

ただ決して悪いことばかりではなく、去年から良くなった点、ここ2年との違いも見せられたシーズンでもあったように思う。それらと反省点を踏まえて「まずはチーム総括を……」と早めに書き始めたが、クラブからの発表や総括などもリアルタイムに続々と発表され、なかなか先に進まない、書き直すということが多々あったのでまずは個人総括から進めていこうと思う。

<個人総括>

※登録ポジション別、出場時間順

■GK

・ビクトル

出場試合:32試合(32)、出場時間:2880分
成績:0G1A、警告・退場:0枚・0枚

去年71失点した守備の立て直しと後ろからのリーダーシップを求められて、山形から完全移籍。20年には相模原に1年だけ在籍し、三浦コーチともに昇格を果たしているのでその経験やコネもあったかもしれない。

Jリーグ各クラブでこれまで定評があったシュートストップやコーチングは評判通り。7月・9月度月間MVPに選ばれるに相応しい活躍を残した。J3全体のベストイレブンでは藤枝の内山が選ばれたが、"セーブ部門"があればビクトルが選ばれていたのではないかと密かに思っている。警告・退場が0だったのも好印象。

「彼がいなかったらやられてたぞ」と思う場面や試合が多かったのはチーム的には不本意な部分ではあるが、裏を返せばそれを見越して補強に動いたのは的確だったのではないか。今年のやり方で考えるとまず残さなければいけない戦力にはなるが、もしもGKからのビルドアップを重視するのであればそこも再考の余地も出てくる。

・村山 智彦

出場試合:1試合(1)、出場時間:90分
成績:0G0A、警告・退場:1枚・0枚

在籍9年目。ビクトルがいたことで出場数は(リーグ戦では)1試合のみだったが、その最終節・相模原戦ではビックセーブや熱いコーチングを見せ、良い準備を続けていたことを示した。また、ベンチスタートになってもピッチ外からファイトする姿は印象的。コミュニケーションや姿勢を重視する監督にとってもありがたい存在だったに違いない。なんとなく性格も合いそうだったし。

来季残ることになれば10年目の大台に。あらゆる監督と組んできた経験もあるのはチームとしても強みになりそうだが、ビクトル同様に監督との相性がどうなるか。

・神田 渉馬

出場試合:1試合(1)、出場時間:90分
成績:0G0A、警告・退場:0枚・0枚

プロ2年目。コロナで活動停止後にスタメンに抜擢され、第19節八戸戦でJリーグデビュー。ある意味「持っている」という形で出番が回ってきたが、高校・大学と実績を持っている薄井とのポジション争いを制し、3番手を確保していたのは本人の頑張りがあってのこと。試合自体はあまり良い出来ではなかったかもしれないが、この経験を糧にしてほしい。14節、34節やカップ戦でもベンチ入りしているので、ビクトル・村山という高い壁がいる中で「それなりに経験の積めた1年」だったように感じる。

また足元のうまさも評価されており、監督交代やベテラン2人の動向次第で一気に序列を上げる可能性も秘めているが、3番手という序列もリセットになる。よほどのことがない限りは長い目で見られていくことになるはずなので、来季はレンタルで経験を積ませるという選択肢もある。クラブがどう育てていくかに注目。

・薄井 覇斗

出場無し

流通経済大学からのルーキーとして加入。
彼自身、高校では選手権決勝を経験、大学4年時にも関東大学リーグを12季ぶりに制したチームの主力選手で、何よりチームメイトはJ1~J3で初年度から大きなインパクトを残しているので、4番手で終わったのはもどかしさ・悔しさがあったことは想像に容易い。

大学時代のプレーを見て、個人的にも「J3で1年目からやれるのでは」という印象を受けたのでこの結果は予想外だった。実際のプレーは全然見れていないので、どういう課題があったのかはあまり感じ取れていないが、ボールを持つことも苦にしない点はこれまでのチームにない強みだと思うのでこれからの巻き返しに期待したい。

■DF

・大野 佑哉

出場試合:31試合(31)、出場時間:2729分
成績:0G0A、警告・退場:4枚・0枚

ここ2年、J2で順調に出場機会を重ねて経験値を積んできたが、今年はDFリーダーとして名波監督の信頼を掴み取り、さらに出場機会がアップ。FP全体で見ても下川の次となるチーム2位の出場数を残す。

今年の守備の肝だった縦ズレ横ズレの屋台骨となり、周りを動かすだけではなく、移動の激しい最終ラインでギャップにボールが流れた際はカバーに素早く入るなどまさしく守備の中心となり1年間出場し続けた。オープン展開になりやすいJ3では彼のスピードは頼もしく、簡単に当たり負けしない負けん気の強さも発揮されたシーズンでもあった。あとはチームの流れが悪い時のメンタル面の波は今後守備陣、チームの中心になる素質を持つべき選手としては直していきたいところ。

今オフに入ってすでに満了が発表されている。
大卒の生え抜き選手で3年間試合に出続け、最終的に守備陣を引っ張ってきた点も含め、全く違う中央CB像を作り出せたのは大野自身の成長があってこそ。この4年間の経験は次のチームでもプラスに働くはずだし、プロとして、即戦力CBとしての道を進んでいくことになるだろう。どういうキャリアを歩んでいくのか引き続き熱く見守っていきたい。

・常田 克人

出場試合:30試合(29)、出場時間:2588分
成績:4G3A、警告・退場:6枚・0枚

下川、大野に続く、第3位の出場数。
今年も守備面での高さ・強さだけでなく、攻撃時のビルドアップ、ロングフィードはこのチームのスペシャリティだった。得点数が伸びないチームで4G3Aという結果も立派な数字。

加入してから3年間左CBとして欠かせない存在になっている反面、彼の調子によって守備の安定性やビルドアップの出来が変わってしまうという、(常田だけのせいではないが)良くも悪くも生命線的な存在となっていたが、今年は明らかにここ2年とは違う姿を見せることができていたと思う。その象徴となっていたのはピッチ内外でのコミュニケーションの増加。さすがにプロ年数的にも実年齢的にも、上の方になってきているので大野とは違う役割でチームを引っ張っていく姿勢は多く見れた。そして意外に兄貴肌っぽい。

そうはいってもまだ波はあるのでそこは課題。備えている能力はもともと高く、相手云々より自分自身との闘いだと思うので、そこの波がより無くなってくれば1つ、2つとカテゴリーを上げていける可能性は山雅の中でも高い方。山雅にとっては引き留めの優先度は高い選手である。

・前 貴之

出場試合:16試合(15)、出場時間:1230分
成績:0G0A、警告・退場:2枚・0枚

名波監督が特に重要視して強くこだわっていたキャプテン、そしてピッチ上の通訳役として最重要な役職を任された今シーズン。はっきりと味方に指摘できる厳しさも兼ね備えており、チームを引き締める役としてもパウリーニョらとはまた一味違うキャプテンシーを発揮していた。

そして、プレーではSB、WB、ボランチ、アンカーのどのポジションに入っても高水準のプレーを続け、どちらかというとバランスを取ることが多かったが、可変システム、システム変更を頻繁に行っていた前半戦では欠かせないピースだったように思う。

【シーズン開幕前特別対談】名波浩監督×臥雲松本市長 ※全文 - 松本市ホームページ (city.matsumoto.nagano.jp)

マイナス点をあえてあげるとするならば、半年間でゴール・アシストを結局挙げることができなかった点か。数字がついてくればなお最高だった。

・宮部 大己

出場試合:27試合(11)、出場時間:1229分
成績:1G0A、警告・退場:2枚・0枚

名波監督就任以降、出番を増やした昨シーズンは1530分出場。今年も開幕レギュラーを掴み取り、5節までフル出場を続けるなど信頼を掴み取っていたが、それ以降は4バック時はCB大野やSB下川、3バック時はWB外山・下川、CB野々村とライバルたちの存在によりなかなか先発を掴み取ることができず。最終的には去年より少ない1229分に出番は留まった。

ただし、出場数でみると34節中27試合と約8割の試合に絡むことができており、守備職人・ドリブルキラーとしてバックアップやクローザーなどの立ち位置で常にポジション争いで惜しい位置にいた。守備面については監督も高く評価していて思い切って切れる交代カードの1枚でもあったので、攻撃で一皮剥けられればという課題は明確。

その攻撃面も去年に比べてレーン分けやボックス内への侵入の意識は格段に良くなったシーズンでもあったので、自陣から組み立てる際にどのように効果的に振舞えるかという部分を中心に、今後も成長を続けていきたい。来年はどのようなシステム・スカッドになるかは不明瞭だが、どういうチームになるにしてもスカッドに1人いたら助かる選手である。

・野々村 鷹人

出場試合:16試合(11)、出場時間:1136分
成績:0G2A、警告・退場:1枚・0枚

先発試合数や出場時間は宮部と同じくらいだった野々村だが、試合の出方は対照的。前半戦は出番が少なく、ベンチ外の日々が続いていたが、前貴之の移籍後から3バックに固定されて出番が激増。ポジションを一時完全に掴み取った。

今年行っていた守備はスライドのスピードや運動量も求められる上にHVは晒されやすくなるので、野々村にとっては得意とは言えない守り方だったが、その中で徐々に出場機会を増やしていったのは監督からの課題に真摯に向き合い、クリアしていった結果なのではないかと。

また、今年はビルドアップや攻撃参加の成長も目まぐるしかった。パススピードも早く、視野もそこそこ広いので終盤は左サイドでも詰まることなく底の位置から組み立てができていた。ただし、新たな課題として敵陣深くに入れば入るほど攻撃面の慣れなさが見られたので(そもそも学生時代からやってきてなさそうな形だが……)もしも今後HVで起用されるのであれば向上していきたい。

最後にセットプレーの流れからの2Aはどちらも常田への見事なお膳立てだったが、彼の目指すところを考えるとゴールももう少し求めたいところ。

・篠原 弘次郎

出場試合:5試合(5)、出場時間:398分
成績:0G0A、警告・退場:0枚・0枚

経験とリーダーシップ、そしてチームを引き締める厳しさなどプレー面以外にも山雅に足りてない要素を持っていたベテランとして活躍が期待されたが、去年6月に負傷&手術で1年2か月実戦から離脱。終盤戦になってようやくメンバーに名を連ね、29節岐阜戦~33節宮崎戦という1番の勝負所で先発が続いた。

途中で交代することが多かったことから、もしかするとまだ本調子というわけではなかったかもしれないが、攻守で存在感は強く、先発に値する充実のプレー内容だった。元々タイトに潰しきる守備、対人プレーには定評があったが、縦ズレ横ズレにも対応しており、一番強気に下川が出ていけたのも篠原の時だった(ダービーではやりすぎて代えられてしまったけど笑)

そして、特筆すべきは保持の安定感。左右どちらも使えるだけでなく、捨てるボールも少ないので不必要なロストはあまりなかった。攻撃時には相手の嫌がるような高い位置への攻撃参加やインナーラップをスムーズにできていたのでこのあたりは上カテの他チームでもHVをしていた経験が生きていたように感じる。

来年はキャンプから参加し、体作りから全体活動に参加できそうだが、年齢や監督交代で放出対象になっても不思議ではない。熱さと厳しさを示せる選手なので隼磨が引退した今、欲しいピースではある……。

・浜崎 拓磨

出場試合:8試合(3)、出場時間:387分
成績:0G1A、警告・退場:1枚・0枚

激しい上下動が必要なWB・SBではなく、今年はボランチでの勝負に。契約を未更新のまま新体制発表会を迎えたが、鹿児島戦でベンチ入り、相模原戦で45分出場、宮崎戦でスタメン入りと順調にアピール。しかし、その宮崎戦で守備の強度面の課題をチーム全体で露点。その後はパウリーニョや前貴之らがアンカーで起用されることが多くなり、球際や守備での予測がポジションで重視されるようになったのが出場時間が伸びなかった要因と思われる。ベンチ入りするも終盤リード時に使われないという試合も多かった。

しかし、保持に比重を置いたプランを持って臨んだ富山戦は久々に先発復帰してウノゼロ勝利に貢献。その後もピンポイント起用が多く、特にボールを保持して相手を動かしながらゲームを進めたいときは躊躇なく使われていたので、このあたりはそもそもの編成やコンセプトの被害者ともいえる。もう少しセットプレーで味方と合っていれば序列も違ったかもしれない。

これだけの実力者だとさすがに今の序列で残しておくのは難しいというのが現実的なところ。まだ来季以降の方針は見えてこないが、仮に引き留めるにも相当の説得力が必要。

・橋内 優也

出場試合:13試合(1)、出場時間:260分
成績:0G0A、警告・退場:0枚・0枚

今季は主に「締めの橋内」として絶大な安定感を誇り、逃げ切りに失敗した試合は0。カードも0。ベンチから出てきて若手に指導するシーンも多々見られ、出場時間以上の貢献度はあったのではないか。去年は負担が多かった分離脱も多かったが、この起用法もあってか、年間を通して大きな離脱もなくシーズンを走り切れたのは良かった点だと思う。

その一方、山雅に加入後6年でこれだけ出場時間数が限られた年はなかった。どの立場にしろ名波監督の側近として守備陣を指導する姿は何となく絵が浮かぶシーズンでもあったが、それも再びリセットとなったので来シーズンに向けて本人・クラブ共にどういう意思表示をするか。興味深い。

・山本 龍平

出場試合:7試合(1)、出場時間:157分
成績:0G0A、警告・退場:0枚・0枚

長野でJ3の経験を積んで山雅に帰還。とはいっても左サイドは外山下川安田、CBにも常田と上カテでの経験があるライバルもまた強力で「起用法がどうなるか?」は気になるシーズンだった。そんな中、これまでのプロ生活とは違うSHやインサイドとしてキャンプの段階から取り組んできた。山本が開幕戦から右SHでポジションを掴み取ったというのは1つのサプライズだった。

だが、その後はルーキーの住田・菊井がこのポジションで台頭。プロ年数は上だが、年齢では上にあたる2人が想像以上にチーム・プロの世界にフィットし、その地位を脅かすには至らなかった。鋭い左足のキックは同じレフティーの選手たちも持ってない彼のスペシャリティで、悔やまれるは決め手に欠け、救世主を求めていた鳥取戦や八戸戦での鋭いミドルが決まっていれば……と。

あらゆるポジションを経験し、クレバーな動きを見せられるのが彼の強みなので、チームにとって最適な起用法を見つけ出し、どこかでチャンスを掴み取りたい。

・安田 理大

出場試合:5試合(0)、出場時間:46分
成績:0G0A、警告・退場:0枚・0枚

名波監督から直電を貰い、始動後に加入発表。限られた枠の中での補強となったが、1人のプレイヤーとしてだけではなく、チーム全体のムードメイカーとしても機能し、多くの選手に影響を与えていたのは外部からも伝わってきた。強力な選手を揃えても和がなければチームのテイをなさないというのは学んだので、そのあたりも見越しての補強があったのは今年のチームにとっては良かったと思う。

プレー時間自体は多くの時間見れなかったので、リーグ戦での評価は難しいところがあるが、90分フル出場した天皇杯予選決勝では長野のレギュラー組を相手に、左SBとして好プレーを披露。レギュラー争いに食い込んでも不思議ではないような活躍をしていたので、前移籍以降は特に「横山やルカオのスピード感に最終ラインからついていかなければいけない3バックじゃなければ……」というのは感じる。

個人的には長く松本に関わっていてほしい人材だったので満了発表は残念に思うが、"監督交代"&"本人は現役でまだまだやっていきたい"ようなので良いキャリアの終えどころを見つけてほしい。

・田中 隼磨

出場試合:1試合(0)、出場時間:3分
成績:0G0A、警告・退場:0枚・0枚

引退が発表され、最終戦でついに初出場。
あまり語りすぎるとシーズン総括ではなくなってしまうが、ここにむけてキャンプから監督と擦り合わせ、調整してきたシーズンだったとのことで、人知れず戦ってきた1年でもあった。

3分+αというわずかな出場時間で、プレーも限られていた中だったが、相模原戦で見せた見事なクロスが決勝点に繋がる。1年間ここでの出場を目指してトレーニングを積み重ね、1度のチャンスで多くのサポの胸の中に「田中隼磨の偉大さ」を刻むことができたので(自身での心残りはあるとは思うが)やるべきことをやりきった1年間だったと総括したい。

・三ッ田 啓希

出場無し

去年岐阜でレギュラーを掴み取り、薄かった左CBのレギュラー争いに加わりたかったが、今年はリーグ戦での出場は0。天皇杯でも途中出場のみと苦しいシーズンのまま終わってしまった。どこかから「使わないなら……」という声も聞こえてきそうだが、左利きのCB、常田のバックアッパーは間違いなく欲していたので双方戻す/戻るならこのタイミングしかなかったというのが実情だったりする(常田も契約更新遅かったし)。

野々村の総括にも書いたようにHVとして起用する場合は機動力や攻撃性能がより求められるので、そのあたりが長身選手の中では優れている常田と比較すると厳しい面だったのかもしれない。かといってそれ以外のポジションに挑戦するのも1年では恐らく難しかった。

ただし、チーム次第でJ3でも通用することは岐阜でも証明できているのでこの1年で判断されるにはまだ早い。大卒3年目ということもあって契約満了になってしまったが、興味は持たれやすいタイプなのでここからの返り咲きに期待したい。

・二ノ宮 慈洋

出場無し

高卒1年目はベンチ入りすら叶わずにシーズンを終えた。彼もまたポテンシャル型の選手なので最終ラインでなかなか出番を与える余裕もなかったのは理解できる。しかし、(公式のHPを見る限りは)ほとんど離脱なく1年過ごせたようなのは好材料。J3にいながらJ1・J2の選手とこれだけTMできる高卒ルーキーはそういないと思うので「なんとか公式戦で1試合出る」よりも「1年間継続してトレーニングできた」ほうが価値は上だったりする……かも……。

来年もJ3でのプレーになるのか?レンタルがあるのか?は五分五分な気もするが、いずれにしろ2年目はプレー機会は掴みたい。


続く

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