女には向かない処刑業

確かに売れるためなら何でもするとは言った。言ったよ。確かに言った。
ただ、それは常識的に考えて、裸の撮影をOKするとか、局の偉い人と寝るとか、ちょっと危なめのとこにも営業するとかそういうレベルのつもりの意味だった。
だけど、空飛ぶギロチン部隊のマスコットガールを引き受けるなんていうのは、ちょっと想像の範疇を超えてる。だって死ぬじゃん。ギロチン部隊。せめて地上のやつであってほしかった。
空飛ぶ方のいいところって、死因が二種類選べるだけで、結局死ぬでしょ、お前わかってんのってマネージャーに喰ってかかったところで気付いた。
別にあたし自身が空飛ぶギロチン部隊に入隊するわけじゃないんだ。マスコットガールね。なーんだ。いいよいいよ、血塗れのキャラクターイメージが付くくらい、売れないままでいることより千倍マシ。オッケ。任せて。

って伝えた翌日。

わたしは完全ギロチン装備で空輸機の中にいた。流石に着替えさせられる時に気付くだろって思った人、甘い。昨日の晩ご飯、完全にクスリ混ぜられてた。ハンバーグ食べてる途中から完全意識ない。
ドッキリ?嘘でしょ?
混乱して立ち上がろうとしたら横の関取に腕を取られた。
「落ち着かんといけん、立ったら危ない」
関取?そう、関取。こちらも完全に戦闘衣装。紫の太いティーバック、軽く湯気の出てる身体。ここ、高度何m?とりあえず腕離して?痛いよ?
あたしの脳はバグりかけてる。
せ、せ、せ、関取は何でここにいる訳?
「おいの名前は大天空山でごつ。こんなところに連れてこられた心当たりは、四股名だけでもす。ただ、いつでも行けるようにしとります」
行ける?どこに?誰が?
なんて言ってるうちに後部ハッチがバタン、と開いた。内から外に物凄い風が吹く。バキバキと音を立ててギロチン装備が硬化してゆき、あたしの肩から外骨格が伸びた。

そしてお相撲さんがまず機外に吸い出された。
【続く】

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