【添削】シールドトンネルの異常出水

今回は、建設部門、R4年度の問Ⅱ-2ー2の添削事例です。



1.問題文を読み解く

地下水位の高い市街地において, 鉄道トンネルを整備するためシールドトンネルの発進立坑(長さ20mX幅20mX高さ25m)を構築中, 深さ15mまで掘削した時点でソイルセメント地下連続壁の壁面からの異常出水があり, 周辺の地盤にー部沈下が発生している。 このため連続壁内の水没, 道路の通行規制等の応急対応を行った後, エ事が中断している。 なお,立坑に隣接して作業の通行規制等の応急対応を行った後, エ事が中断している。

(1)異常出水の発生を受け検討すべき事項のうち重要と思われるものを3つ挙げ,その内容について説明せよ。

(2)掘削工事の早期再開を実現するために必要となる手順を示し, 現場責任者として,どのようにマネジメントするか,留意点を含めて述べよ。

(3)掘削工事再開後, 現場責任者として発揮すべきリーダーシップについて述べよ。

令和4年度技術士第二次試験問題〔建設部門〕(公社)日本技術士会

まず、見落としてはいけないのは、”地下水位が高い市街地”という現場条件です。現場条件は確認する癖を付けましょう。

2つ目は、マネジメント、リーダーシップとは何か。この2つは技術士会で定義されています。特にリーダーシップについては、一般的にイメージされる周りをグイグイ引っ張っていくリーダーシップとは少し異なるので、しっかり確認して頭に入れておきましょう。


2.総論

設問1に対する解答はよく書けていると思います。
設問2・3については、「マネジメント」、「リーダシップ」ということばの定義をきちんと理解しているのか、少し疑問が残ります。特に、設問3に関しては、「リーダーシップ」ではなく、「コミュニケーション」で終わっているのではないでしょうか。

設問2は手順と留意点と書いてあるので、まずは、しっかりと手順を書き、留意点は、「〇〇に留意する。」と明確に書けると、よりよくなると思います。

設問3は”掘削工事再開後”について書くようにしましょう。

3.調査・検討すべき事項

(答案)
1異常出水発生を受け検討すべき事項
①周辺への被害状況:立坑内への異常出水によって周辺地盤の沈下が発生しており、 周辺地域の沈下量を確認して建物等への被害を調査する。影響範囲を定めて測定点を設定し、沈下量の推移を記録する。ライフラインである埋設管等については管理者へ連絡し、 敷設位置や沈下量の許容等の確認を行い、必要によりバルブ等を閉鎖し、使用の制限を依頼する。
特にガス管は漏れによって、周辺への二次被害が発生する危険が高いので、至急な対応が必要となる。

②出水箇所・出水経路等原因の特定:現時点では立坑内は水没し、水圧によってこれ以上の出水は押えらている。異常出水が発生する箇所及び原因の特定が必要であり、壁面からの出水の原因は地下連続壁の施工不良個所、地下連続壁の根入れ下部からのパイピング等を想定し出水経路を調査する。

③止水対策工の検討:出水箇所及び原因が確認できた後、その箇所に対して止水を行う必要がある。止水対策工としては 出水箇所坑外の土留め近傍に水ガラス系注入材による薬液注入、それでも完全に止水されなければ土留め壁の背面に対してオールケ ーシング削孔機により削孔した中に生コンクリートを打設する。 その後も周辺地盤に薬液注入を実施する。
 地下連続壁の壁面が施工不良の場合、それを閉塞すれば出水は抑えられるが、現場が地質調査結果と異なったことから発生した場合は、根入れ深さや底面改良の必要性を検討する。

被害状況の確認→原因の特定→対策の検討ととてもスムーズな流れで書いてありよいと思います

が!、見出しが「①周辺への被害状況」、「②出水箇所・出水経路等原因の特定」、「③止水対策工の検討」となっていますが、違和感ありませんか?

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