見出し画像

スタートアップと大企業の提携で、やってはいけないこと

大企業とスタートアップの関係は敵対的なものではありません。むしろ、それぞれのアセットや技術を組み合わせることで、双方の成長を飛躍的なものにする関係であるべきでしょう。

HAXでも投資したスタートアップと大企業との協業を積極的にサポートしています。HAXが主に支援するのはシード〜アーリーステージにいるBtoBビジネスのハードウェア・スタートアップですが、これまでの実績から早期に大企業と組むことが重要だと考えています。

スタートアップが大企業と早い段階から関わるべき理由は三つあります。
一つ目は、プロダクトやサービスを作り込む前に、顧客となる企業のフィードバックを受けることで、軌道修正するコストを最小限に抑えながら、市場が求めるものに近づけるからです。

二つ目は企業から受託して売上を積み、企業活動のあるべきサイクルを経験することで、出資や融資などの資金調達のみに依存しない体質をつくることができます。

そして三つ目はM&A(企業買収)やIPO(株式上場)でイグジットする際には、大企業からのサポートが必要不可欠であり、早期から関係値を結ぶことは有利に働くからです。

避けるべき提携のパターン

BtoBビジネスのスタートアップにとって、顧客でありパートナーとなる企業の中から良い提携先を見つけ、成功の確度を上げることは生き残る上でも非常に重要です。
しかし、単純に大企業と提携すれば良いわけではなく、失敗する提携のパターンも存在します。HAXが大企業との提携をサポートする際に注意しているポイントを紹介します。

バズワードに飛びつく提携
「事業戦略とは関係ないが、流行っているからやってみる」という曖昧なスタンスで、スタートアップとの協業を模索するケースがまれにあります。

例えば「5Gが流行っているから、自分たちの事業と組み合わせて何ができるのか試してみたい」という起点から始める協業は危険です。バズワードと事業との関係を吟味せず、どのように市場に落とし込むかをイメージできないままスタートアップと組んでも、PoCや実証実験から先に進まず、双方にとって発展性の無い取組に終わります。

スタートアップとの提携を検討する大企業側にHAXがヒアリングする際には、キーワードとなる技術と事業との間にあるギャップを埋めるプロセスを確認します。このプロセスを大企業側がイメージできていないようであれば、実のあるビジネスにならず、プレスリリースを配信して終わるだけの結果になりかねません。

スタートアップをサポートする組織と仕組が大企業側にあるか
組織もスピードも異なる両者が提携する場合、大企業が体力に余裕のないスタートアップに歩みを合わせる必要があります。

スタートアップならではのアジャイルな開発手法に合わせるなど、スタートアップのスピードを落とさないための権限を持った専任チームが大企業側にあることが理想的です。

大企業が持つ既存のプロセスや体制ではスタートアップと噛み合わないことが多いのは世界共通です。協業をなめらかにするためにも、大企業の本流とスタートアップをつなぐ専任の組織の有無は確認したほうが良いでしょう。

日本の大企業の場合、担当者本人にどれだけ熱意があったとしても三年程度で他の事業部に異動することも珍しくありません。担当者が変わった途端にプロジェクトが進まなくなったということが無いように、スタートアップ側も協業の窓口責任者だけでなく、関わる事業のキーマンを積極的に探し、関係を構築する努力を怠らないようにしましょう。

形だけの協業にしないために大企業ができること

大企業とスタートアップの協業において、最も理想的な関係は単発ではなく、中・長期的な関係が築けることです。

イノベーションと呼べるような変革は一回きりのプロジェクトでは実現できません。さまざまな角度から成果を検証し、プロダクトに反映するというサイクルを高速に回すことを繰り返すことで、大きな成果につながります。それには一定以上の時間と労力、そして強い意志が必要です。

そして、お互いに信頼しあえる関係でなければなりません。スタートアップは下請けではなく、お互いの不足を補完しあうパートナーであるという認識を、大企業側の担当者だけでなく経営トップこそ持つべきです。

スタートアップの知財やノウハウだけを吸収しようとする提携は、スタートアップや両者を取り持つVCにとっても全くメリットがなく、結果的には誰も何も得られません。
「対等かつ発展性のある関係を築けるか」が提携において、最も重要なポイントだとHAXでは考えています。

HAX Tokyo オフィシャルウェブサイト https://www.hax.tokyo/
Twitter: https://twitter.com/HaxTokyo
Facebook: https://fb.me/haxtokyo

(取材・文:越智岳人