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研究者が知っておきたい「起業する際のポイント」


大学発のスタートアップが増加傾向にあり、経済産業省の調査によれば90年代半ばから伸び、上場まで果たした企業の合計時価総額は2兆円を超える規模に成長しています。

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出典:経済産業省

社会課題を解決するようなイノベーションを起こす可能性を秘める技術が日々研究されている一方で、アカデミアからビジネスにフィールドを変える際にはマインドチェンジが必要なポイントがいくつかあります。

HAX Tokyoのメンターで大学発スタートアップの動向にも詳しい岡島康憲氏と市村慶信氏に研究者が起業する際に知っておきたいことや誤解しがちなことについて伺いました。

「評価された論文=ビジネスで成功」ではない

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どんな優れた技術であっても、それがビジネスでの成功も約束されているわけではありません。その技術が解決できる社会課題があり、それを求める顧客が存在しなければ、ビジネスとしてスタートすることができません。

「自分たちの技術はいかに優れているのか」を説くのではなく、「自分の技術をいかしたプロダクト(サービス)は、どのような顧客の、どのような課題を、どのように解決できるのか」を説明できなければ、技術開発型ビジネスを成功させることは困難です。

また、投資家や企業に向けたプレゼンテーションの内容も学会での発表とは大きく異なります。研究内容を語るのではなく、その研究成果から生まれたプロダクトやサービスが解決する課題や、顧客に提供する価値について語る必要があります。

なぜならば、投資家や顧客となりうるような企業が見ているのは「研究内容がいかに素晴らしいか」ではなく、「そのプロダクトは売れるのか」であり、売れるためには顧客(市場)と、顧客が求めている課題が必要だからです。

「自分たちがどう成長したいか」でチームを作る

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研究者であるあなたが起業したとして、あなたが本質的にやりたいことは何でしょうか。
研究を続けたいのか、それともビジネスをしたいのか—それによって、必要な組織の形も変わります。

・研究開発に特化したビジネスにしたいのか、プロダクトやサービスをたくさん売っていくビジネスにしたいのか

・研究者として今後も研究や開発にコミットしたいのか、これまでの研究をビジネスにするべくビジョンづくりや組織づくりにコミットしたいのか

前者はビジネスモデルに対して、後者は起業したスタートアップの中での、あなたの役割に対する問いです。
この2つの答えによって、あなたの会社が目指すべき組織の形や、あなたが担うのはCEOなのか、CTOなのかといった役割も変わります。

あなたが実現したい個人としてのビジョンと社会全体のビジョンを想像し、それを実現できる組織と必要なメンバーを考えるところからスタートアップのチーム作りは始まります。起業経験がなく、必要な役割や具体的な組織のあり方がわからなければ、産学連携センターなど身近な専門機関に相談するのも良いでしょう。

「研究室の常識は、会社の常識」にしてはいけない

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大学などの機関にある研究室と、自ら起業した会社の大きな違いはステークホルダーです。
研究室に必要な研究員や事務系のスタッフは、大学が雇用し給料を支払うケースが多いでしょう。一方で会社は創業者の資本や会社としての売上、外部からの投資で得た資金をもとに給料を支払います。

大学発スタートアップでは創業者やメンバーを研究室の人間で固めることは珍しくありませんが、「給料は大学から出ているから」とか「自分たちの研究室の学生だから」という理由で報酬を一切支払わないということはトラブルの原因になります。

大学から支払われている給料はあなたの事業のためではなく、あくまでも大学運営のためであり、学生もあなたの研究やビジネスを無償でサポートするために入学しているわけではありません。すぐれた技術や研究をビジネスに応用し、中・長期的に発展させていくためには、持続可能性のある組織づくりが必要であり、そのためには適切な対価を支払う義務が創業者には求められます。
また、メンバー間の関係性も研究室での上下関係ではなく、一つのビジョンを実現するために、互いに足りない部分を埋め合うフラットな関係を目指すことが重要です。

つまり、お互いにギブアンドテイクが成立する関係がビジネスを実行する組織としては必要不可欠なのです。

売上がないシードステージではストックオプションという形で対価を支払う手法もありえます。起業する際には研究室ではなく、企業として組織を捉えましょう。

「ビジネスにならない=研究としてダメ」では無い

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スタートアップではピボットという言葉が頻繁に使われます。それほどにビジネスモデルや市場を変えることを躊躇してはいけません。

仮にあなたが当初に想定していた市場や顧客に、あなたの技術やプロダクトが合わなかったとしても、もちろんそれは「世の中に役に立たない研究」ではありません。
当初の仮説が外れたのであれば、「早い段階で失敗する要素を見つけられた」と受け止め、別の顧客や市場、解決できる課題を探しましょう。どんな研究でも、それを求めている場は必ずあります。HAX Tokyoチームもプログラム期間中はスタートアップと伴走し、求められる市場開拓をお手伝いします。

HAX Tokyoでは現在Batch 2に参加するスタートアップを募集しています(締切:4/14)

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採用されたチームには、米国シリコンバレー発、世界的に実績のあるハードウェアアクセラレーター「HAX」にて蓄積された知識やノウハウが提供されます。また、ハードウェアに特化したコミュニティが提供され、ビジネスおよび製品開発の分野で世界をリードする専門家や、住友商事をはじめとする日本のパートナー企業とのコラボレーションの機会が得られます。

さらに、3ヶ月後のDemo Day後には、HAX Shenzhen、HAX San Franciscoのプログラムに参加し、ベンチャーキャピタル等から資金を得て事業を拡大できる可能性があります。

詳しくはウェブサイトでご確認ください。

HAX Tokyo オフィシャルウェブサイト https://www.hax.tokyo/
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取材・文:越智岳人