【事例紹介】スタートアップ共創を目指す大企業――住友商事マシネックス・Honda
先日開催されたHAX Tokyo Batch 3 Demoday(以下、Demoday)では、スタートアップとの共創に取り組む大企業の取組が紹介されました。ハードウェア・スタートアップにとって、顧客ニーズに沿ったビジネスモデルの検証や、試作から量産に向かう開発プロセスに大企業の存在は欠かせません。大企業の取組を知ることは、起業家にとって自分たちに合ったパートナーを探す上で重要なインプットになります。
本記事ではDemodayで登壇した住友商事マシネックスとHondaの取組をご紹介します。
現場を知る専門商社としての強みを持つ住友商事マシネックス
住友商事マシネックスは住友商事100%出資の機電総合商社です。国内大手メーカーを中心とする取引先との営業基盤をベースに産業機械や電機、建築設備、環境エネルギー、情報通信を中心とした領域で事業を展開しています。
取引先企業との商談でスタートアップの製品やソリューションを追加提案することもあり、たとえばHAXの投資先でもあるbreeziとの事例が紹介されました。住友商事マシネックスの取引先企業にbreeziが開発する空調用フィルターのモニタリングシステムを提案し、屋内の温度や湿度、二酸化炭素濃度を手軽に計測できるソリューションの日本市場展開をサポートしているとのことです。
また、2021年5月にはSMX Open Innovation Labという共創拠点を東京都大田区に開設。160平方(約12.7m×12.7m)の実証・検証スペースをスタートアップなど各種企業と活用しながら、製造業におけるDX推進と新事業創出を目指します。
登壇した住友商事マシネックスの渡邉隆夫氏はSMX Open Innovation Labを立ち上げた経緯を「製造業における人材不足やノウハウ・技術承継などの普遍的な課題解決や、各現場が抱える課題を解決する場所であり、新しい技術を現場に導入できるよう、リアルな実証の場を提供することで、既存の枠組みにとらわれない価値創造を目指します」と説明。同社の強みである、さまざまな現場に入り込んで課題を吸い上げるネットワーク網を活用し、スタートアップの技術を現場の課題解決に適した形で提供できるよう、サポートしたいと意気込みを語りました。
既に進めている実証実験の例としては倉庫や工場内での資材・部材の搬送の自動化や省人化に寄与する協働ロボットや、エッジAIを組み込んだデバイスを活用し、現場作業員の作業時間のモニタリング算出による生産性向上、またHoloLensを活用した設備点検、遠隔指示ソリューションに取り組んでいるとのことです。
渡邉隆夫氏からHAX Tokyoへのメッセージ
ハードウェア製品開発に取り組むスタートアップ向けのプログラムのため、従来より機械/電気系の専門としてビジネスを行っていた住友商事マシネックスと親和性が高く、HAXから始まる新たなビジネスに非常に期待しています。
グローバルでスタートアップの製品化を支援するHonda
自動車やバイクを始めとする輸送機器のグローバル企業であるHondaでは、スタートアップ向けのアクセラレーションプログラムHonda Xcelerator(ホンダ・エクセラレーター)を通じて世界中のスタートアップを支援しています。自動車などのモビリティ関連のスタートアップのみならず、AI・ロボティクスやインダストリアル分野やエネルギー分野も対象の領域に含めています。
アメリカのシリコンバレーを含めた米国3拠点、カナダ、欧州、イスラエル、中国、日本を拠点に、各地のVCとも連携しながらスタートアップを支援―−具体的にはPoCの実施や試作開発から量産までのサポートに加え、Hondaの技術者によるメンタリングなど、「Hondaがやるべきこと、事業会社だからこそできるスタートアップ支援のあり方」(本田技研工業 羽根田 里志氏)を特徴としています。
過去の事例として、羽根田氏は2019年10月に完全子会社化したDrivemode社の事例を紹介しました。Drivemodeはスマートフォンを活用したコネクテッドサービスを開発するスタートアップで、2015年からHonda Xceleratorの支援を受けていました。
同社が開発するナビゲーションシステムの導入を社内に提案した当初は「既存のナビゲーションシステムとの競合を心配する声もあった」(羽根田氏)とのことでした。その後、開発チームとDrivemode社によるユーザーの声を重視した粘り強い提案を経て、2015年に開始したコラボレーションから4年後に子会社化、そして二輪での量産が実現しました。
Hondaに限らず新しい技術を外部から導入する際、既存技術との競合を懸念するケースは珍しくありませんが、羽根田氏は「お客様が真に求めているのは何かを伝えていくことが重要」と語りました。
2021年6月には新事業創出プログラム「IGNITION」をスタート、第1号案件として視覚障がい者向けナビゲーションシステム「あしらせ」を発表するなど、社内外を問わず新しい事業創出を目指しています。
羽根田里志氏からHAX Tokyoへのメッセージ
Hondaにおけるベンチャー企業との共創において、HAXは最も重要なパートナーの一つです。特にHAX Tokyoとはローンチ以前からのお付き合いということもあり、今回二周年を迎えたことを自分のことのように嬉しく思います。
私がHAX Tokyoのメンタリングに参加して驚いたのは、採択されたスタートアップの短期間での変化量です。プログラムを開始した時と、Final Demo dayでは全く異なる印象を受けました。HAX Tokyoのプログラムを通して、数々のメンターやパートナー、顧客からのフィードバック集中的に受け、事業や顧客の解像度の高さが格段に増していることがよくわかり、場合によってはピボットも厭わず、目指すビジョン、解決したい課題に徹底して取り組む起業家としてのEntrepreneurshipをこの目で見ることができました。
特にHardと言われるHardware Startupにおける唯一無二の強力なプログラムとして、かつてのHardware StartupだったHondaも、引き続きHAX Tokyoのエコシステムに全力で協力していきます。
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