【怪の蔵】二の蔵~自分の不可解な行動
ありふれた日常の怪を収めた蔵の扉を
ひとつひとつ
開け放して覗いてみようではないか
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二の蔵~自分の不可解な行動
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前の蔵での
かけがえのない友人の自死のお話
会う時はいつも
静かな語り口で色々な事柄を語ってくれた友
精神世界の扉を開け放ち
その向こうに広がる高みや深みを
そこに自由に飛び回る楽しみを
教えてくれた友であった
事が起きてしまえば
…ああ…
こんなふうに彼女は逝くのだったのかも知れない
そう思える死の形ではあった
しかしその直前までは
よもやその日にあのように
この世から姿を消してしまうとは思うだに出来なかった
だが
その死の2ヶ月ほど前に遡ると
自分は不可解な行動をしていた
実は彼女が亡くなる一ヶ月ほど前から
新聞の事故・自殺欄を
毎日、無意識にチェックしていたのだった
彼女の名がそこに無ければ
なんとなく安心していたのだ
それから
非常に不可解な事がある
ノートにこんな詩が残っているのだ
自分で書いたものである
『色とりどりの花に囲まれて
とても綺麗よ貴女
胸に組まれた手の形が
少し淋しいけれど……』
これはなんであったろう
自分で書いていて不可思議な気持ちであるが
そう、紛うことなく
彼女の葬儀のイメージであった
彼女が亡くなる2ヶ月前に
何故このような詩を自分が書いたのか解らない
書いた時の気持ちも憶えていないが
おそらく淡々と浮かんだ言葉を
書き留めたのだと思う
ただ、おおもとの答は解る
彼女という人間に愛情を抱き
その想いが何か見えないもので
彼女に、宇宙に
通じていたように思うのだ
なぜなら『友』と
ひと言に表わせぬほど
彼女を失ってから後の数十年は
『世界の半分を失った』
そう思えたほどであったからだ
.
最後まで読んで戴きまして感謝申し上げます。心の中のひとつひとつの宝箱、その詰め合わせのようなページにしたいと思っておりますです。