脳卒中片麻痺患者に対しての歩行練習

「歩行練習」は多くのセラピストのみなさんが常日ごろの臨床業務にて行っていると思いますが、どのように行っていますか?

「歩行練習」はとても重要ですが、理学療法士が考えなければただの「歩行」になってしまいます。私たちが常に患者さんや利用者さんを見て、触って、そこから考え出した「練習」の一つとして「歩行練習」を行わなければなりません。

脳卒中患者の歩行の特徴をとらえ、バイオメカニクスや脳卒中片麻痺患者特有の歩行についての概要をお話していきます。

明日からの臨床で患者さんや利用者さんの歩行を見た時に、考えの一助になれば良いかと思います。そのために歩行の基礎とポイントを整理していきます。


1:脳卒中患者の歩行の検討項目

列挙していくと、バランス機能、耐久性(持久性)、筋力(筋出力)、筋緊張、高次脳機能、関節可動域、感覚障害、運動麻痺などなど多岐に渡ります。これらの能力低下から発生する異常歩行はさらに多く、考えさせられるのではないでしょうか。

分析や解釈を行っていくにあたり、重要なこととして歩行を理解するためにはまず、はじめに

○正常歩行のバイオメカニクスを理解する

○正常歩行と脳卒中患者の相違を理解する

○脳卒中患者の特性を理解する

これらが必要になってくると思います。

今回はその中でも「倒立振り子モデル」について説明していきます。

画像1

※Honda歩行アシストより画像引用

https://www.honda.co.jp/walking-assist/about/

正常歩行を最も単純化した力学モデルは支点が床に固定され、振り子のように動くことから「倒立振り子モデル」と呼ばれています。

歩行動作では、イニシャルコンタクトの時に、進行方向への身体重心の移動速度は最大になり、運動エネルギーは最大となります。次にミッドスタンスに向かい、運動エネルギーは徐々に失われます。ここで運動エネルギーは単に失われるわけではなく、身体重心が上昇することにより位置エネルギーに変換されています。ミッドスタンスで位置エネルギーは頂点に達し、後半に入ると身体重心の低下に伴って、位置エネルギーが徐々に失われます。
ここでの位置エネルギーも単に失われているのではなく、重力により加速され、運動エネルギーに変換されています。

つまり、立脚期の間に運動エネルギーから位置エネルギー位置エネルギーから運動エネルギー、というようにエネルギーを変換することにより、トータルの力学的エネルギーはほとんど変化しないことになります。
このような倒立振り子モデルによる力学的なパラダイムが、効率的な歩行を可能にしています。

重心位置が上下せず、ずっと同じ高さで歩いた場合、位置エネルギーを運動エネルギーに変換できないので、前に進む力が発生しません。そのため余計な力を使うことになります。歩行距離が拡大出来ないのも納得です。

効率良く歩くために、重心が上下移動することは大変重要ですね。


参考・引用文献

○キルステン・ギョッツ・ノイマン:月城慶一、山本澄子、江原義弘、盆子原秀三(訳):観察による歩行分析.医学書院.2005

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