2023年5月の選歌
荷を運び匂い残れる娘(こ)の部屋に孫と遊んだパズルのひとかけ
伊藤美枝子
焼き立てのクッキー見るや「コーヒー」と無口の夫(つま)は注文しくる
楽満眞美
里からの電話の向こうにウグイスの声高らかに春は爛漫
藤代敏江
お互いの命が今日もあることを確かめ合える電話の温もり
今森貞雄
無人駅旅人ひとり降り立ちてゴトンゴトンと列車は消える
関本なつ
無農薬で母の育てたふぞろいの苺は程よい甘味と酸味
藤代敏江
無意識に手から離れし鍵スマホ探し物する時間増えゆく
森田郁代
犬の毛を引っ張り絵本の角をなめ無垢から無邪気へ変わる五ヶ月
大室やよい
無から無へ帰る短き我が命今日爛漫の桜眺める
小島夢子
無表情に座る男は「空腹」の札を掲げて雨に濡れおり
鵜川登旨
香り良き風にふかれて乱れ髪太陽に梳けば光もれくる
楽満眞美
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