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2022年12月の歌


さくら背に楽しかったね四(よん)姉妹会えぬ間にみなきえてしまえり
仲秋に薄かざりて月待ちし月日も人もまぼろしのごと         
原 葉

老叔父のふるえる文字で綴られたMerry Christmas 今年は届かず
お日様も夏に向かってUターン冬至過ぎれば春はすぐそこ
藤代敏江

日々に増す日本から来る観光客ホノルルハワイの嬉しいニュース    
コロナ禍の二年半なる空白の準備に追わるる我らドーセント      
三浦アンナ

「おしまい!」とパタンと本を閉じるように終わってほしき一年が過ぐ 
食欲の秋を楽しめぬ値上がりに対抗手段は一汁一菜   
森田郁代

カレンダー日々の終わりに斜線引き明るき卯の年待ち望みたり
日を受けてイチョウの大樹黄金に輝く様見て人皆停まる
山下ふみ子

初朝の陽射し浴びつつ白兎庭に入り来て孫と跳ねをり
一年(ひととせ)の恵み数えて夫の背にそっと囁く「ありがとうね」と
楽満眞美

傷癒えて夢取り戻す人と街兎のごとく跳ねよう明日へ 
ばあちゃんの菓子の缶にはチロリアン黒棒ゼリーにホワイトロリータ 
六甲もこ

捨てかねた幼の手紙が菓子箱に小さく畳まれ黄ばめるあまた 
あちこちに旅する夫婦の写メ届く夫亡き我の心ざわざわ 
伊藤美枝子

充分に一次二次戦学びしも生存業(ごう)の闘い止まず 今森貞夫
南海の白き星砂つもり来てみどりの島陰ロマン宿らむ
今森貞夫 

潰さるる乳房の痛みに耐えながら「息を吸って」と技師の声聞く
父母を看取りし後の正月に実家を訪れ独り餅焼く
鵜川登旨

初春の光の中で九十の父は優しくひ孫を抱けり 
冬の陽がダイヤモンドを散りばめた眩しい海をコアエが渡る
大室やよい(注:コアエは海鳥)

それぞれに願い祈りて日々を積み集い交わり育みゆかん
蕪の葉は青くしなやかに立ちあがり白い丸みに養分おくる
小野貴子

新年の短歌会にて久しぶりにかるた読む声聞きたきものぞ
夕暮れに僅かな涼風感じてか母鶏はヒナを羽に匿う
岡まなみ

夢を見る夢又夢の夢の国夢子と名乗りまだ夢を見る   
幸せは運の良い夢見る初年この楽しさの続く嬉しさ   
小島夢子

夢ならばどんなに良いか再びはまみへぬ人をただ恋ており
随筆の六十周年祝賀会逝きにし人らの面影の立つ
近藤秀子

もちをつく白い兎は年いくつ月の砂漠で宴の準備
書初めに心想事成としたためて欲を張らずに願いはひとつ
関本なつ

運がいいそれだけのことしあわせの鍵のありかは我こそが知る
夢がある楽しさゆえに嬉しさの明けゆく空の続く道なり
田中えり

あらたまの年の初めのカレンダーにまず歌会の日時記せり
思い切ってウェブに挑んだ年なりき師走の空に半月かかる
筒井みさ子


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