ノロウイルスの登場で、食中毒は夏のものではなくなった
ノロウイルスは、ごく少数のウイルスが体内に入ると症状が発生するので、感染防止対策をとるのがなかなか難しいウイルスです。
名前は、アメリカのノーウォーク州の小学校で集団発生した急性胃腸炎の患者の糞便から検出されたことからつけられました。
わずか18個のウイルスで発症すると言われています。
アルコールで消毒しても、効き目がありません。有効なワクチンもありません。
人から人への二次感染も起こします。
糞便中に排出されたウイルスが手について、手洗いを十分にしなければ、調理を通じて食中毒を起こすことがあります。
嘔吐したものが床についたまま乾燥して飛沫し、それを吸って感染することもあります。
調理人は、常にノロウイルスのことを考えて、体調管理、手洗いなどを行う必要があります。
感染した調理人の症状が改善したとしても、一か月くらいは糞便からウイルスが出ているのです。
調理人が体調が不良なのに、休まずに調理を担当したときが一番危険です。
冬に食中毒が起こる訳はないと油断しがちですが、ノロウイルスは冬の食中毒の代表です。
まさに食中毒の「冬将軍」なのです。
「智恵子抄」などで有名な高村光太郎の詩に「冬が来た」という詩があります。
きっぱりと冬が来た
きりきりともみ込むような冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ 虫類に逃げられる冬が来た
冬よ
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
覚えておられる方もいると思います。
私が椎葉中学校で使った国語の教科書にも載っておりました。
高村光太郎は、夏を嫌い。冬を愛した詩人でした。
個人的に、この詩はなんとなくノロウイルスを歌ったような気がしてならないのです。
冬よ
ノロと来い、ノロと来い
ノロは冬の力、冬はノロの餌食だ
高村光太郎先生およびファンの方々には、深くお詫び申し上げます。
ノロウイルスの登場で、もはや、食中毒は夏のものではなくなりました。
もし食中毒が夏の季語であれば、それは修正しなければなりません。
ちなみに、昔は、「小型球形ウイルス」と言われ差別され、食中毒の仲間には入っていませんでした。
しかし今では、食中毒チームの「センター」に君臨しています。
「食中毒界のアイドル」と言っていい存在です。
未成年なのに、アルコールをガンガン飲ませても、平気でピンピン!
水が不足して、手洗いができなくなる災害時の避難所などでも起こることがあります。
ノロウイルスによる避難所の集団感染は、熊本地震のときにも発生しました。
ノロウイルスを、このまま食中毒界のアイドルにさせてはいけません。
ノロ推しはダメです。
シンプルですが、料理従事者の手洗いは、感染予防対策の基本です。
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