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いる

私の横に私より年齢を重ねた人がしゃがみこんで座っている。
私はベッドに横たわり、腕を上まで伸ばしている。
下着姿で。

お金はすごい。
ただお金があるというだけで、できることがある。
たとえ僕がなにを出来なくとも、お金があればできる。人にやってもらえる。機械にやってもらえる。
それはお金がなければできない。

脱毛に行った。
初めて行った。
不思議だった。
僕がお金を払うというだけで、その人はほとんど裸の僕から生える毛をただ処理していく。
見せたくもなく、そして見たくもないだろう股間の毛とか、しゃがまないと処理できない脇の毛とか。
人生の時と、自分の心体の活動をすべて、僕の体の毛を処理するために使う。

お金があれば、ご飯が買える。
お金があれば温泉に入れる。
お金があればテーマパークに入れる。
お金があれば子供を育てられる。
お金があれば誰かに懸命に僕のケアをしてもらえる。
お金があれば。

なぜ人は動くのだろう。活動し続けるのだろう。
活動することを求められるのだろう。
活動しないことを咎められるのだろう。
活動すればするほど地球が壊れていくのに。
人が死んでいくのに。
生き物が存在できなくなるのに。

自分でご飯が作れなくても、お金があればご飯を作ってもらえるけれど、それは楽なだけで、ただ楽で、最初だけ自分でどうにかした気になるだけで、幸せではないと思った。

幸せはバランス。
幸せは人生の休憩。
幸せは脳が与える一時的なご褒美。
幸せは手に入れるものじゃない。

幸せについて色々聞く。
幸せって何、とか、幸せって人それぞれだよね、とか、幸せは最低限お金が無いと、とか。

なんで幸せがいい。

この世にふたつだけのものなんてそう多くないはずなのに、何故かふたつにしたがる。
良いとか悪いとか、善とか悪とか、賛成と反対とか、正解と不正解とか、好きと嫌いとか。
ふたつなんてないのになぁと思う。

雨の匂いが好き。
雨はどこに居ても降ったりするから。
雨は触ってきてくれる。
関係してくれる。
したくも無い関係でもなく、したい関係でもなく、したくてできない関係でもなく、関係してくれる。
それは特別なことだと思うから、すき。
そんなに特別なことでもないと思うけど、慣れると気づけなくなってしまうから。

お金を払っていても僕は自分の髪を切れないし、お金を払っていても僕は電車を作れないし走らせられない。
どれもこれもひとりでは、無理。

贅沢すぎること、自分ひとりに多すぎることを、欲が深いのが人間だから、どんどん求めると、壊れる。
溺れる。

溺れて死ぬのは嫌だなぁ。
何があっても死ぬから、どうなってもいいのだけど。

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