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「お金を稼ぎたい」と思いすぎると逆に稼げなくなる受託のジレンマ

こんにちは。デイトラのマーケティング責任者、初芝賢(@hatushiba_ken)です。

このnoteでは、デイトラのマーケティング責任者・初芝が、フリーランスやWebスキル、あるいはビジネスなどについて、普段Twitterでは言えないような話を本音でしていきます。

※このnoteはながれのほとりさん(@nagare0712)に初芝ラジオを文章化してもらって再構成したものになります。音源も聞きたいという方はこちらも併せてどうぞ。


今回は「お金を稼ぎたいと思いすぎると、逆に稼げなくなるジレンマ」というテーマについてお話をしようかなと思います。

1. 稼ぎの効率性を追求し過ぎる弊害

これは別に「稼ぎたいという”欲”があると失敗するよ」というスピリチュアルな話ではありません。ましてや「無欲でやるのがいい」とか「お金を稼ぎたいとは思うなよ」とかいう話では全くないです。

1.1 効率性追及の弊害①作業の手抜き化

最初に結論を言うと、「受託作業においてお金稼ぎを闇雲に追及すると、仕事の質が下がってクライアントが離れていく危険性があるよ」ということです。

これはこの間、デイトラの動画編集コースの講師であるKomatsuさん(@komatsu_edit)と会話したときに「ああ、あるある」となったことでした。実は動画編集やライター界隈ではよくある話なんです。

受託制作で稼ぐという目標を追求すると、結局は、

最終的な収益額=1本当たりの平均単価×納品本数

になります。要するに収益を伸ばすには単価を上げるか納品本数を増やすかするしかないというシンプルな式です。

そこで「稼ぎたい、稼ぎたい」と思ってばかりの人にありがちなのが、単価じゃなくて納品本数をひたすら増やす方向に行くということです。納品本数を増やすというのは、例えばライターの場合だったらとにかく素早く文字を埋めることに専念するといったことですね。

よくあるズレたライター自慢で、
「1,000文字を20分で書き上げました」
とか、
「3,000文字の記事を60分でやったので、時給単価はこれぐらいですよ」
みたいなことを「どやーっ」という感じでやっている人がいます。

しかし、僕は基本的にこういう人への発注は警戒します。そして、僕と同じような感想を持っているディレクターもきっと多いんじゃないかなあと思っています。

納品本数を増やす方向性を追及し過ぎると、究極的には手を抜いて作業時間を減らす方向に行ってしまいがちです。手を抜くというのは、1本あたりの記事を書くためにしっかり考える時間を減らしたり、そもそも誤字脱字のチェックをしないなど、そういう方向性のことですね。
もちろんツールを使いこなすとか独自のマニュアルを作るとか、質を下げずに効率を上げる方法はあります。しかし一般論として、生産作業において品質(Quality)は予算(Cost)・納期(Delivery)とトレードオフの関係にあります。(参考:QCDとは

つまり、個人が受託制作でお金を稼ぐことを極めようとし過ぎると、なるべくたくさんの記事を納品するのが合理的だからと、質を軽視した行動に走ってしまいがちになるんです。

経営においても間違ったKPIを設定してしまい、その水準を上げるために動いた結果、組織的に望ましくない、経済的に非合理的な結果に陥ることがよくあります。多くの記事を納品するために記事の質を落としてしまうのは、正にその典型例と言えるでしょう。

また動画編集の世界でも、数多く納品するために手を抜く人がいると聞きました。動画編集者を募集すると、誤字・脱字がそのままだとか、テロップがずれているとか、編集が何かおかしくなっているといった、表現の質が低いというレベルではなく本当にミスレベルのものがたくさん来るのだとか。つまり、ミスなく納品ができる人が本当に少ないということですね。

けれども、ミスを放置したままで納品してしまうような人は、当然、発注者から落とされていきます。ライターでも動画編集でも、たくさん納品しようと思えば思うほど質を下げる方向に行きがちなため、結果的にクライアントからの信用を失い、リピートの依頼が来なくなってしまう。
1回目はいいかもしれませんが、そのまま継続していくと、どこかでやらかした瞬間に「この人、ちょっとヤバイな」と思われて仕事を切られるリスクがあるというわけです。

1.2 効率性追及の弊害②無許可の外注化

さらに誤った効率化が進んでいくとどうなるか。

実は、手抜きの究極系は外注化なんです。
「ライターや動画編集系でめちゃめちゃ稼ぎました」
とか、
「1か月で200万稼ぎました」
という人のノウハウを見ると、大体外注化していることが多いです。

要は「自分はこれだけすごい人なんですよ」とブランディングだけに特化してお客さんから仕事を集めるものの、受けた仕事を全部は自分でこなせないから、実際の作業は誰か別の人にやらせるということです。

例えば「自分はこれだけ優秀だから、文字単価5円、あるいは10円でやります」と言ってお客さんから案件をもらう。しかし、実際は別の人に文字単価1円で発注して間を抜く。こういうことを繰り返すことにより、売上を大きく見せる。

そして「売上がこれだけある私が、その方法、ノウハウを解説します」とノウハウを売って稼ぐ。そういうやり方がどこの業界でも結構流行っているみたいです。

僕個人としては、このやり方は結構危ういなあと思います。

良し悪しで言うならば、ライターからディレクターに回ること自体は悪いとは思っていないです。ライターだった人がディレクターになって、自分のスキルを用いて、もっとたくさんの良質な記事を納品していく立場になる。これは真っ当なキャリアのステップアップであって、全然問題はありません

では、ここで明らかにアウトになっている行為とは何なのか。

それは、「自分が納品しますよ」と言ってフリーランスとして自分の看板で仕事を取っているにもかかわらず、作業をごっそり他人に横流しすること。さらに丸投げしたことをクライアントには黙っていることです。

実はこのような外注化を推奨する人が結構いるんですが、僕はあまりオススメしません。もし仕事を外注化するのであれば、

「自分が全ての作業をするのではなく、プロダクションとしてやっています。こういう制作管理体制でやっているので、クオリティーは担保できます」
という制作体制の話を前もってお客さんにちゃんと説明して、その上で了解を得るのが望ましいです。ここまで説明するかはさておき、クライアントから「あなたにこそお願いしたいです」と言われたのに他人に丸投げしていたらトラブルになりかねません。(納品物が良ければそれでいい、という人もいるとは思いますが)

僕がクライアントの立場なら、自分が依頼した仕事を無許可で外注に出されたと判断したら、その人には今後仕事を依頼しません。依頼するのは「その人だから」ですし、仮に成果物が良かったとしても、「これからもクオリティーが落ちないかチェックしなきゃな」という確認コストが増えるからです。

また、依頼した案件が事故ってその背景に丸投げがあるとわかった場合は親しい人に注意喚起します。
経営者のネットワークって意外なほど繋がっています。そして経営者や発注者の集まりでは「こういうことできる人いません?」という話がしょっちゅうされています。そういうときにひときわ話題に上がるのは、アウトなことをやっている人の情報です。

あまり公に言う人はいませんが、発注者が一番求めている情報は、実はブラックリストなのではないかと思うことがしばしばあります1回ヤバいことをやった人は、何回も同じことを繰り返す可能性が高い。そんな人に発注してしまったり、そんな人と知らず紹介してしまったりしたら大きな損失や信頼問題に直結します。だから1回NG行動をやってしまった人については、裏で情報が結構出回るんですよ。本人が知らないだけで。

このように、お金を稼ぎたいという思いが強すぎるあまりグレーな行動を取ってしまうと、最終的には本当に仕事を干されます。つまり、仕事が回ってこないという結果に陥ってしまうんです。

2. お金を稼ぐためには質を上げよう

では、グレーな行動に手を染めずにお金を稼ぎたいのであれば、どうすればいいか。

僕は先ほど、「稼げる額=1本当たりの平均単価×納品本数」という話をしました。

ただ、仕事を捌くスピード、つまり「仕事量」を闇雲に上げていこうとすると、どうしてもクオリティーとのトレードオフになり、結果的には仕事の質が下がってしまいます。

ですから、仕事の量ではなく質を上げることで勝負して、単価を上げていくほうがいいと考えています。当たり前すぎる結論ですが、これを実際に行動へ移せず疲弊している人は多いと思います。

「仕事の質を上げるって、どういうこと?」

僕は、具体的には以下の2つの観点で頑張ればいいと思います。

1つ目が、成果を出す
2つ目が、手がかからない人になる
です。

2.1 仕事の質を上げる手段①成果を出す

1つ目の「成果を出す」とはどういうことか。

Webメディアであっても、YouTubeであっても、Web系の納品物をやっているのであれば、最終的な目的はお客さんの売上にいかに貢献できるかです。何かしらの形でお客さんの売上に貢献することがWeb系の受託における最重要事項になります。

例えばライターだったら自分が納品するもの、つまり自分の書く記事がお客さんの経営目標にどれぐらい寄与しているのかを考えるべきです。例を挙げると、もし記事の目標がコンバージョンだったら、コンバージョンにどれぐらい寄与するのかを考えた上で、そのためにどうすればいいかという視点で記事を書くことが非常に大事になってきます。

そして、コンバージョンを上げるためには、SEOの検索順位が上位であることに加えて、お客さんを誘導したいと思っている記事リンクや、何かしらのLPへのリンクなどのクリック率を高めることが非常に重要です。

だからその目的をしっかりと意識して、「検索上位に出せるだけの記事が書けますよ」とか、「目的のリンクをクリックしてもらえるような記事が作れますよ」と言えるだけの成果を作ることを念頭に記事を作成します。

このように成果を出すことにコミットし、実際にそれを成し遂げられる。そんな人は非常に価値の高い人材なので、たとえ高単価でもガンガン発注されるようになるでしょう。

お客さんにとっての「成果」を出せるライター。こんな人は、お客さんが「この人にたくさんお金を払ってもすぐに回収できるから、投資対効果がいいな」と考えやすく、成果も計測しやすい。自分がお客さんにとって投資対効果がいい人材であると分かってもらうためにも、お客さんの持っているKPIに寄与するような実績を作りにいく。

これが単価を上げるための1つ目のコツになります。

2.2 仕事の質を上げる手段②手がかからない人になる


仕事の質を上げるためのもう一つの手段は、「手がかからない人」になることです。

手がかからない人とは、ディレクターの手を煩わせない人のことです。

2.2.1 手がかからない人になる①ディレクターの手を煩わせない

このことに関して、以前、東京フリーランスのライターであるふじい編集長さん(@fk_promotion)がこんなツイートをしていました。

「僕が思う究極のライター。それはディレクターに手をかけさせないで、一発納品できる人だ」

という内容のことを言っていて、僕はこれに強く共感したんですね。

ただ、Twitterでは「いやあ、編集者とライターは何回もやり取りをして、そうやって一緒に共同作品を作っていくのがいいんだよね」という意見も見られました。

たしかに世の中には、時間をかけて一緒に作品を作っていきたいディレクターさん、ライターさんもいるかもしれないです。それはそれで一つの考え方としてありえると思います。

ただ、シンプルに経営上の効率性・合理性の話をすれば、ディレクターの時間を取るということはディレクターの工数を奪うということ。つまりその分がコストとして乗ってくるわけですよ。

だからこそ、ディレクターの時間を奪わないライターは非常に優秀だと言えます。

僕個人の見解としても、ディレクターはとても忙しいので、手がかかるライターさんは極力避けたいという意識が強いです。実際、これに共感するディレクターは多いのではないでしょうか。

はっきりいって「全部書き直さなくちゃいけないのか」とか、「ここまで指示しなくちゃいけないのか」とか、「誤字・脱字レベルでこんなにあるのか」となってくると、「この人に依頼する必然性はないなあ」とか、「自分で書いた方が早いよな」とかいうことになってしまうんです。

例えば、納品された文章の添削で僕の時間が1時間取られるとしたら、それは僕の1時間分の作業費が奪われたのと同じ、僕の時給が奪われているのと同じことになるんです。だとすると、たとえその人の見た目の単価が安かったとしても、実質的なコストが高くなってしまうんですね。

そういう意味でも、ディレクターに手をかけさせないことが非常に大事になってくるんです。

逆に、同じような仕事をする人が文字単価2円をもらっている状況で、文字単価4円の人がいたとしても、毎回一発OKなクオリティーで提出してくれるとか、毎回ディレクター側の手を煩わせないような工夫をしてくれる人だったら、単価が高くてもこの人に絶対継続発注をしたいなあって思えるんです。

加えて、採用コストの問題もあります。

たとえ「もうこの人には継続依頼したくないなあ」と思ったとしても、実際にその人との契約を止めて新しい人を採用するのは結構大変なんですよ。人を集めて、審査して、実際にやってもらって、その中でルールも教えて、慣れてもらってとかいうことを考えると、できればなるべく同じ人に継続依頼していきたい。こういうインセンティブがあるんですね。

雇う側にしてみれば、元々手がかからなくて、しかも自分のメディアに長く書いてくれる人だったら、多少単価を上げてでも継続していきたいというインセンティブは働きやすいといえます。

そういう意味からも、手がかからない人になることは大事です。

2.2.2 手がかからない人になる②ディレクターの仕事を巻き取る

手がかからないことを目指すなら、その究極系はディレクターの仕事を巻き取ること。これが一番だと僕は思っています。

ディレクターの仕事を巻き取るとは、どういうことか。

ディレクターには、企画を考えなくちゃいけないとか、このメディアでこういう結果を残さなくちゃいけないといった目標があります。

だから、そんなディレクター側の立場に立って、

「このメディアの目標は、このLPに月間〇人流すこと。だったら、そこに流せるような見込み客を取れるキーワードを考えよう」
と実際にキーワードを考え、こういう記事にしたらいけるという所まで調べた上で、ディレクターに
「こういう記事を書きたいんですけど、どうですかね」
と提案してくれる。こんなライターさんがいたら、もうめちゃめちゃバリューが高いです。こういう人をディレクターは絶対離したくないし、単価を上げてでもずっと雇っていたいと思うでしょう。

これは、ライター以外でも同じだと思います。

動画編集でも、
「最近、YouTubeではこういう内容が流行っているので、こういう企画はどうでしょう」
といった感じで提案してくれる動画編集者がいたら、絶対重宝されるのではないでしょうか。

このように、いろんな方法で自分より1個上のレイヤーにいる人の仕事の手間をなくし、仕事を巻き取っていくことが可能です。ライターがディレクターの視点を持ち、ディレクターが経営者の視点を持つといったように。
この視点を持って行動にまで移せている人はごく稀なので、ぜひ明日からの立ち回りのヒントにしてみてください。

おわりに

まとめると、受託作業においてプレーヤーとして稼ぎたいのであれば、案件の単価を上げるか、案件を捌くスピードを上げるしかない。けれどもスピードを上げるには限界があって、あまりにも無理をするとクオリティーが下がっていくので、あまりオススメはしない。それよりも、クオリティーを高めて単価を上げていく方向で勝負したほうがいい。それが今回の話で言いたかったことです。

そして単価を上げるには大きく二つの方法があります。
一つ目は、その納品物がお客さんにとってより大きな利益を出せる、成果を出せるようなものを作ること。
二つ目は、なるべく1個上のレイヤーの人の仕事を巻き取れる、手がかからないプレイヤーになること


以上が、今回の「お金を稼ぎたいと思い過ぎると逆に稼げなくなることがあるよ」というお話でした。

もし、感想などがありましたら僕のツイッター(@hatushiba_ken)へのリプをつけてくれたら見落としがないので非常に嬉しいです。DMでも、ここでのコメントでも何でもいいのでご意見ください。

また、stand.fmの初芝ラジオではいつもこんな感じの話をしています。



「こういう話をしてほしい」という要望があったら、ぜひぜひ、リクエストしてください。

今回もお読みいただき、ありがとうございました! 





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