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#1 ”スキルの掛け算”を活かす二つの発想とは?

皆さん、こんばんは。「大人の独学ラジオ」へようこそ!
このラジオでは、フリーライター、外資系IT企業エンジニア、ITベンチャーCMOとキャリアを渡り歩いてきた初芝賢(@hatushiba_ken)が、仕事や学びに関する発見といったディープな話をお届けします。

第一回のテーマは「スキルの掛け算ってよく言うけど、実際のところはどうなの?」です。

※このnoteはながれのほとりさん(@nagare0712)に大人の独学ラジオを文章化してもらったものになります。僕の声で直接聴きたい人はYouTubeも併せてどうぞ。

「何か専門性を見つけて、それを活かして活躍していくためにはどうしたらいいの?」
「では、スキルを掛け算しましょう」

これは、このような問いの答えとして昔からよく言われてきたことです。

例えばある人に、10人に1人しか持っていないスキルがあったとします。もしもそんなスキルを2つ併せ持っていたら、
「10分の1×10分の1=100分の1だから、100人に1人のすごい人材になれるよね!」
という発想です。

これは実際、僕自身が就活をしていたときにもよく耳にしましたし、ある種のクリシェ(常套句)にすらなっている気がします。

もちろん、そこには正しい面もあるでしょう。しかし僕は、定型句だけを鵜呑みにしてしまうと誤解が生じると思うんです。

そこで今回は、
・役に立つ掛け算
・役に立たない掛け算
この2つの掛け算について話をしていきます。

1. 役に立たない掛け算とは

「役に立たない掛け算」には、大きく分けて2つのパターンがあります。
このような役に立たない掛け算をしているパターンを実際によく見かけるので、皆さんには気をつけていただきたいと思います。

1-1 超ニッチすぎて役に立たない

1つ目のパターンは「超ニッチなスキルによる掛け算」です。
要は「確かにそれは珍しいけど、何の役に立つの?」というやつですね。

ライターを例に挙げて考えてみましょう。
あるところに、ダイオウグソクムシについてめちゃくちゃ詳しい人がいました。そして、この人がダイオウグソクムシ特化ライターを名乗り活動を始めたとします。しかし、そこで希少性は上がるでしょうか?

確かにダイオウグソクムシ特化ライターには、珍しさがあります。でも、それを求める人は恐らくほとんどいないでしょう。だから結局のところ、ダイオウグソクムシ特化ライターの価値が上がることはないんです。

これがもうちょっと範囲を広げて、「水辺の生物の特化ライター」になれば、タレントのさかなクンのように、活躍できる場面は増えてくるでしょう。

けれども、ダイオウグソクムシのようにめちゃめちゃニッチなものに特化し過ぎてしまうと、あまり意味がない。

実はこういうパターンって、本当に多いんですよ。

1-2 スキル間のシナジーがない

2つ目のパターンは「スキル間のシナジーがない」掛け算です。

要は、「関係ないスキルを複数学んでも、それらで掛け算を効かせるのは難しいよ」ということです。どちらかというと、現場では1つ目よりもこちらのほうが目にする機会が多い気がしますね。

例えば、僕は昔から趣味で麻雀を打つのが好きでした。そこで、僕がめちゃくちゃ麻雀が強かったとします。

すると流れとしては、「自分には秀でたスキルが2つもあるから、これを使わなきゃ!」と、「麻雀プロ × Webデザイナー」を名乗りたくなると思うんですよ。

でも、これも結局は、
「麻雀とWebデザインのスキルには何の関連性もないよね」
「それって珍しいけど、役には立たないよ」
となってしまいます。

もちろん、自分が資産だと思っている複数のスキルを活用しようとする姿勢は良いと思います。けれども、余りにも両者の業界や業種、仕事などが飛び過ぎると、いくら珍しいスキル同士を組み合わせても、余りシナジーが生まれず、結局お客さんにとっての価値にはならない。こういうパターンもよくあるんです。

つまり掛け算とは、何でもかんでも掛け合わせればいいというものではありません。たとえ掛け合わせることで珍しさが生まれたとしても、その結果、お客さんに与えられる価値が増大しないことには、何の役にも立たないんです。

2. 役に立つ掛け算とは

一方で、もちろん役に立つ掛け算もあります。
こちらにも大きく分けて2つのパターンがあるんです。

2-1 仕事を横に伸ばす~巻き取る範囲を増やす  

役に立つ掛け算の1つ目は「仕事において自分の巻き取る範囲を増やす」。つまり自分の仕事を横に伸ばしていくことです。

どういうことかというと、自分の仕事の守備範囲を増やすことで、今の仕事だけでなく、さらに他の仕事も受けられるようにすることです。これはすごく汎用性があり、再現性も高いと言えます。

分かりやすい例の一つが「コーディング × Webデザイン」です。
ある人がコーディング単体で仕事の依頼を受けていたとします。もしもこの人がHTMLやCSS、JavaScriptといったコーディングスキルに加えて、実はWebデザインも出来たとしたらどうでしょうか。

そうであれば「これ、両方できますよ」ということで、現在の業務だけでなく、コーディングからデザインまでを一気に巻き取ることができる。当然、仕事の範囲が増えますよね。

それ以外にも「Webデザイン  × マーケティング」とか。
例としては、広告運用やLPOです。LPOとはLP(ランディングページ)の最適化、つまりLPを分析して、もっとイケている内容に改善していくことです。Webデザインに加えてこの辺りのスキルがあると、作った先の運用フェーズも巻き取れるようになります。

実際、最近LPデザイナーを名乗る人が多いんですが、僕はそれを見ていて「もったいないな」と感じることがよくあるんですよね。
なぜなら、
「LPデザインができます」
と言って、その宣言だけで終わっている人が多いからです。それだけでは、仕事に対する解像度がまだまだ低いなと感じます。

ここで、仕事への解像度をさらに上げていく必要があります。
具体的には、LPを作ってそれで終わりではなく、その後に、
「このLPは広告として回していきますよね」
「そうしたら、お客さんからのアクセスログやクリック率などを見ながら、LPを改善していく必要がありますよね」
こうした発想が生まれてくるはずなんです。

このように、後工程の業務まで明確に意識できている人とできていない人とでは、仕事に対する解像度が全く変わってきます。

ここで更に「自分なら後ろの工程までできますよ」と言うことができれば、自分にとってのかなりの強みになるでしょう。

これは僕が個人的に開催している勉強会「初芝ゼミ」でも、よく言っているポイントなんです。
「LPデザインをやるんだったら、LPOまで出来るようになった方がいいよ」
「ただLPを作るだけじゃなくて、その後の分析や改善点の指摘が出来れば、お客さんへの提案が可能になる。それは当然、次の案件にも繋がっていくよ」

これが出来れば、自分の提供できる価値もどんどん大きくなりますし、受け取れる報酬も増えていくでしょう。

これは、自分の一つの仕事を起点にして、それに付随する業務を横に伸ばしていくイメージですね。

この発想は、他にも様々な所で活用できます。

例えば、あるWebメディアにライターとしてSEO記事を納品するとします。でもそこで言われた通りにただ記事を書いているだけだったとしたら、これはとてももったいない働き方なんです。

どうせWebメディアに記事を納品するのであれば、
「Webメディアだったら、リストを取るんだろうな」
という所まで視野を広げてみましょう。

「リストを取る」とは、自社のサービスに関心がある人をメルマガや自社の公式LINEに登録させることです。つまりは見込み顧客を集めることであり、これは多くのWebメディアにおける主要な目的の一つとなります。

こうした全体像さえ見えていれば、ただ言われた通りにSEO記事を納品するだけではなく、
「メルマガやLINEに登録したくなるような特典や資料を作りますよ」
「イケてるデザインのホワイトペーパー(会社の資料)を作るのが得意なんです」
「こういうホワイトペーパーを載せれば、CVR(成約率)や、メルマガやLINE登録してもらえる確率が上がるから、これだけのコスト削減ができますよ」
といった提案が出来るようになっていくんです。

このように一歩上から俯瞰したときに、自分がやっている仕事は、他にどういう所に繋げられるかを常に考えて、自分の仕事を「横」に伸ばす。

こうした考え方を身に付けることで、仕事の守備範囲が広がり、巻き取れる範囲が増えていく。そして結果的には収入も増えていくでしょう。

なぜならば、クライアントから、
「この人に任せれば、全部まるっとやってくれる。採用コストやコミュニケーションコストも下げられて、本当におトクだよね」
と思ってもらえるからです。まさにあなたという存在が、お客さんにとっての明確な価値になっていきます。

皆さんには、ぜひこの役に立つ掛け算を意識した上で、自分の今後のキャリア形成について考えていただきたいです。

2-2 仕事を縦に伸ばす~メイン業務の価値を上げる補助的知識・スキルの習得

もう一つのパターンは、「メイン業務の価値を上げる補助的知識・スキルの習得」、要は仕事を縦に伸ばしていくことです。この掛け算ができると、バリューもさらに上がっていきます。

例えば、特定の業界についての専門知識を持ち、それに、珍しく、かつ人が求めるようなポジションを掛け合わせることです。

一例として、「IT業界の専門知識 × Webライター」があります。
実はこのパターンは、僕が実際に体験したものです。

昔、まだライティングの仕事を受けていた頃、IT企業の採用媒体に載せるためのインタビュー記事の執筆を依頼されたことがありました。目的はその企業における採用の強化。つまり社内のエンジニアにインタビューして、その企業に興味を持っているエンジニア層に「この企業っていいな」と思ってもらえるような記事を書くというミッションだったんです。

この仕事の難しさは、単にライティングスキルがあるだけでは務まらない点にありました。

なぜなら、ITエンジニアにインタビューしようと思ったら、エンジニアが用いる専門用語を知っているのはもちろん、その業界における問題観や、その人が現在置かれている状況を知っていなければならないからです。
その上で、
「アジャイル開発ではチーム間コミュニケーションに課題がありますよね。御社ではこの課題に対してどのような取組をしているのでしょうか?」
みたいに高い解像度で突っ込ん質問をする必要がありました。

でも、依頼者さんの周りには、IT業界について詳しく知っているライターがいなかった。そこで、外資系企業でのITエンジニア経験を持つ僕に白羽の矢が立ったというわけです。

このように、ある特定の業界に対する深い知識があることは、ライターなどのメイン業務の価値を上げることに大変役立ちます。

こうした特定の業界軸と専門性を組み合わせる手法は、汎用的に使えます。つまり何かの業界に対する知識を深めるだけでも、本業のスキルの価値を上げられるんです。

なお「掛け算」というと、多くの人がまずスキル同士を掛け合わせることを考えます。しかし、一つのスキルを取得するにはそれなりの時間が掛かります。一方で、業界知識の習得であれば、やり方次第で習得にかかる時間を減らしていくことが可能なのです。

このように、ある業界についての専門知識を習得することによって、自分が持つ専門性のバリューを上げていく。

特に
・ライター
・マーケター
・デザイナー
この辺りの方々にとってはかなり使える話なんです。

僕は、単なる思い付きでこんな話をしている訳ではありません。実はこうした手法は、コンサルティングファームにおいては割と一般的なんです。

コンサルティングファームに所属するコンサルタントは、大抵「業界軸」と「専門性軸」という2つの大きな軸を持っています。「業界軸」とは、金融や保険、メーカーといった「この業界に詳しいですよ」という強みのこと。そして「専門性軸」とは、会計、マーケティング、人事といった専門性です。

フリーランスとして活躍するに当たっては、コンサルティングファームやコンサルタントの働き方がものすごく参考になります。なぜなら、両者には類似点が多いからです。ですから、コンサルタントが「業界軸」と「専門性軸」の2軸において自分のポジショニングをし、バリューを発揮する手法は、フリーランス業界でも大いに役に立つと僕は強く思っています。なお、これについては話し出すと長くなるので、また別の機会にまとめてお話しますね。

このような業界の専門知識の他にも、分かりやすい例としては「発信系」があります。

最近では、
・税理士
・会計士
・弁護士
こういった士業の方々がYouTubeで発信されているのをよく目にします。こうした「専門性の高い職業 × YouTuber」のように、専門領域の知見を分かりやすく発信できる人も、明確なポジションを取得できるんです。

先程説明した「巻き取る範囲を増やす」。これは仕事を横に伸ばすイメージです。

一方でこちらの「業界軸 × 専門性」仕事を縦に伸ばす。つまり自分が持っている強みをより深くしていくイメージです。

このようにしながら、「〇〇といえばあの人だね」と言われるようなポジションを取ることが一番いいと思います。

注意点~まずはメインとなる軸を持つ

ここまで、役に立つ掛け算として2つのパターンを紹介しましたが、1つ注意点があります。それは、掛け算をするためには、何か一つ軸となるものがあることが望ましいということです。つまり、仕事を横に伸ばすにしても縦に伸ばすにしても、まずはメインとなるスキルを持つことが大事なのです。

ここで、横に伸ばすパターンである「コーディング × Webデザイナ―」を例に挙げてみましょう。もしもこれらのスキルが両方とも中途半端ならば、仕事を獲得するとっかかりができません。

リアルな仕事の現場でいうと、まずはデザインがしっかり出来ることが第一段階となります。デザインのスキルを磨き、ちゃんとした物を納品する。さらに的確なコミュニケーションが取れるなど、クライアントから「この人いいな」と思ってもらえる人材になる。

つまり、自分の強みを一つ持って、お客さんからの信頼を獲得すること。これがファーストステップです。

そうした上で、
「実は私、コーディングも出来るんです」と仕事を巻き取る。これがセカンドステップになります。

クライアントから仕事を巻き取るためには、普段から信頼性を深めておくことが重要です。そして、その信頼を獲得するためにも、最初に自分の軸となる強みを一つ持っておくことが必要なのです。

一方、パターン②の「メイン業務の価値を上げる補助的知識・スキルの習得」においても、やはり最初にメインとなる仕事のスキルを磨くことが必要です。

税理士YouTuberの例で見ると、最初にYouTuberありきではなく、まずは税理士というめちゃめちゃ強い希少性と専門知識がある。それに加えてYouTubeでおもしろおかしく、かつ分かりやすく配信できるスキルがあるからこそ、税理士としての価値が跳ね上がる。

このように、メインとなる物があって初めて、業界知識や発信が生きてくるのです。

実際の計算でもそうですよね。
「2×2」のように、メインとなる数字が1より大きければ、その結果は掛け合わせる前の「2」よりも大きくなります。

一方、「0.5×0.5」のように、メインとなる数字が1よりも小さい場合は、掛け合わせることによって、掛け合わせる前よりも小さい数字になってしまうのです。

ですから、もし今何かを学習中だったり、あるいはこれから何かを学習したいという方は、最初に「これは自信を持って出来ます」というものを一つ見付けましょう。まずはそれを集中して身に付け、一人前に仕事ができるようにすることが重要です。

その上で「どうやって今のスキルを伸ばしていけるか」を考えていけると、自分の価値がどんどん上がっていくでしょう。その感覚が分かってくると、既にメインである自分の核となるスキルがある状態なので、どんどんスキルアップしていけるのです。

そうなると、スキルを伸ばすことがとても楽しくなっていきます。まるでドラクエのレベル上げのように、
「次は何を伸ばそうか」
「どうやってレベルを上げようか」
とワクワクしながら考えることが出来るのです。

僕は、オンラインスクール「デイトラ」という教育業をやっていく中で、これまでいろいろな生徒さんを見てきました。その結果、本当にうまくいく方は、最初に何か一つのスキルを身に付けて、それを用いてお客さんに価値を提供する。そこで認められて自信を付け「もっともっと価値提供できるようになりたい」との思いを抱く。さらにそこからどんどん新しいことを学んでいける。こんな人です。

こうなると、もうエンジンがフルスロットルで動いている状態なので、ターボエンジンを乗せたモーターボートのように突き進んで、ガンガンスキルを身に付けていける。このようなとってもよい循環に入っていけるんです。

まとめ

ここまでの話をまとめます。

まず前提として、スキルの掛け算とはいうものの、必ずしも
「いろいろなことに手を出さなければならないのか?」
と思う必要はありません。

将来的に自分のキャリアを伸ばしていきたいのであれば、まずは一つ、自分の軸となるものを身に付けましょう。そして、それを横に伸ばしていくか、縦に伸ばしていくか。
このような発想でキャリアを築いていくのがよいでしょう。

今回はここまでです。
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最後までありがとうございました。
また次回お会いしましょう!


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