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進まない時計

 ここは大企業のコールセンター。顧客からのクレーム電話がひっきりなしにかかってくる。
 ぷるるるるるるるるる ガチャ
「はい、こちら株式会社ロイド、カスタマー担当のマキです。ご用件はなんでしょうか。えっ、はい。おたくで買ったアナログ時計が壊れている、ですって!大変申し訳ありません。お客さま、サービス改善のためにも、どのように故障しているのかを教えていただければ。はい、なるほど。
・いつまで経っても12時にならない。
・時計の針が進んだり、戻ったりしている。
・最初のうちは、調子よく進んでいたのに、最近は針が全然動かない。
 恐れ入りますが、お客さま。お仕事は何をなさっているのでしょうか。
ああ、なるほど。それは大変ですね。人間という種族は、なんとも身勝手でございますから。私どもの仕事も、それを痛感させられる毎日です。だからこそ、お客さま。人類はこう思っているのです。
 12時が来るまでは魔法にかけられているし、それを過ぎたとしても、案外ハッピーエンドになるとね」

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