新入社員への債券学習のガイド(アップデイト版)

今年の4月に、「新入社員への債券学習のガイド」という文章を書きました。これが私のnoteで一番読まれているのですが、「日本国債入門」をリリースしたので、この点を踏まえてアップデイトしようとおもいます。

金融機関に就職したり、公的セクターで金融に係るセクションについた場合、債券の知識が必要になることがあります。特に、最近では金融政策の理解や為替の理解においても、債券(国債)の知識が必要になります。そのような方にとってはこれまで私が記載してきた債券の入門シリーズが参考になると思います。

ありがたいことに若い人や役所の人が読んでくれているという声を聞くことが増えてきた気がします(役所の人を一定程度想定読者にしていることはここで記載しました)。2020年くらいからコツコツ記載してきましたが、今見ると膨大に記載しているので、どこから読み始めて良いか分からないかもしれません。完全に自著の宣伝になってしまうのですが、まずは下記を頭からよんでいただければとおもいます(2024年5月からキンドル版もリリースされました)。

この書籍は320ページあるのですが、頭からどんどん読んでいけるとおもいます。読者から感想をいただき始めましたが、一日で読み切ってしまったという声もありました。各章ごとに読めるので、難しいと感じたらすぐに次のセクションに移動して、読み進めるのが良いと感じています。

BOXについては少し発展的な内容やマニアックな内容も多いので、必要に応じてみてください。私が「ファイナンス」で記載した金利スワップなどの文章もあるのですが、以前記載した文章は古くなっている部分がある点に注意が必要です。例えば、LIBORが今は公表が停止されていますが、「金利スワップ入門」などはLIBOR公表前の情報に基づいています。「日本国債入門」では大幅にアップデイトし、例えば、通貨スワップなど、現時点で最新の情報に基づいて記載しています(金融政策については毎回のMPMで変わりえるため、徐々に古くなっていく側面は否めないですが)。

「日本国債入門」には、発展的なものについては適時必要な文献を引用しています。私のウェブサイトに各項目について発展的な内容を記載しており、これは完全に無料で読めるので、関心があるところを読み進めてください。例えば、オプションを知りたければJPXからでている「国債先物オプション」へ進めばいいですし、金融規制について知りたければ「バーゼル規制入門」へすすめばよいということになります(バーゼル規制については下記も参照してください)。
バーゼル規制(銀行規制)を勉強したい人向けのガイダンス(アップデイト版)|服部孝洋(東京大学) (note.com)

「ファイナンス」では今後も継続して記載していくので、債券のカバレッジがどんどん増えていくことになるとおもいます。すいません、著書になると手に取ってもらうのに費用が発生するかとおもいますが(きんざいさんから出す平均的なプライスになりました)、原則、無料でウェブ公開というスタンスを継続していきます。今回は日本国債に絞りましたが(これがスタートとしてよいとおもったからですが)、将来的に、債券全般やバーゼル規制、金融政策についてもリリースしたいと考えています。
Takahiro Hattori's page - 日本語の文章 (google.com)

私の「日本国債入門」で引用しましたが、国際金融の書籍は2024年の春頃リリースする予定です。IMFの経験が長かった植田先生との共著になるので、従来の国際金融のテキストに比べ、IMF内部や財務省での議論なども包括的に扱っている点が特徴になります。我々が日本の財務省の研修等で説明してきた内容にも大きく立脚しているので、金融機関の実務家だけでなく、日本政府に勤める役人や日銀の職員にとっても参考になるとおもいます。そこでは為替やデリバティブだけでなくて、経常収支やIMFが有する経済モデルの解説なども含みます。

もしより一層厳密に債券理論を勉強したい読者は、タックマンの「債券分析の理論と実践」を手に取ってみてください。私の「ファイナンス」で記載したものとそれほどレベル感は違わないとおもいますが、別の角度で同じ概念を整理するという意味で、参考になると思います(タックマンの場合、オークションや発行計画など供給面の情報の記載はない点に注意してください)。下記をぜひ参照してください。
服部JGB本(日本国債入門)とタックマン「債券分析の理論と実践」との比較|服部孝洋(東京大学) (note.com)

また、もし大和証券の「債券の常識」が手にあれば、債券全体の内容をカバーする上で参考になるとおもいます。下記のメモを参考にしてほしいですが、多様な商品を知りたい場合(特にESG債)や、会計処理・税制については服部本がカバーしていない内容を把握できます。手元に置いて辞書のように使うのが良いと思います。ESGについては、これからGX経済移行債が出るので、私のnoteでも記載を充実させていこうとおもっています。
大和証券「債券の常識」の読み方|服部孝洋(東京大学) (note.com)

服部本の特徴は、短期金融市場を丸まるカットしているという点です。この部分を知りたい読者は。「東京マネー・マーケット」が参考になるとはおもいますが(このように書くと東短リサーチにもうしわけないですし、著者は尊敬しているのですが)、「東京マネー・マーケット」は実務家にも非常に難しいと思われていると感じています。この本を読むたびに、「私だったら全然違う角度で書くのに」と感じているので、この内容については日銀が利上げが現実化し、短期金融市場の話題が出てきたら、別の書籍をリリースしようとおもいます。
東京マネー・マーケット 第8版 (有斐閣選書) | 東短リサーチ(株), 加藤 出 |本 | 通販 | Amazon

短期金融市場については「藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義」について記載が充実しています。同書では、マーケット関係を中心に、為替・金利およびそのデリバティブについて包括的に取り扱っています。藤巻さんによる一橋大学の講義を活字化しており、講義をきいているように読み進められます。この書籍は30-40代で市場関係者で広く読まれている本であり、私の周りでは評判が良い本です(値段も1000円以下で手に取りやすいです)。下記も参照してください。
「藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義」と服部本の比較|服部孝洋(東京大学) (note.com)

来年の春には、私は大学で「金融論」を教える予定ですが、例年よりは債券理論や国際金融について少し時間を説明しようとおもいます。これとは別に、中央省庁から補佐ランクの役人が毎週ゲストで来てくれる実践的な講義も運営していますが、国債については私が今年は教えようと考えています。今年の一回目は神田財務官にゲストで来ていただきましたが(学生からの質問も多く、Q&Aも1時間以上やりました)、来年も、著名なゲストを調整中です。履修できる学生は奮って参加していただければ幸いです。

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