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鳥取で臨床検査技師がフリーランスになってみた

みなさんこんにちは。

鳥取県で臨床検査技師として活動しております、服部と申します。

このお題をみて、臨床検査技師という仕事自体も知られていないし、フリーランスってどういうこと?と思う方も多いのではないかと思い、ちょっと書いてみることにしました。

つらつらと書きますので読んでみてもらえたら嬉しいです。

臨床検査技師ってどんな職業?

今、話題になっているPCR検査なども実は臨床検査技師が担当している施設が多いのですが、いったい何をやっている職業なの??

きっと同じ医療従事者でもわからないブラックボックスのような存在です。

実は日本の臨床検査技師は海外と違って、幅広い検査を「臨床検査技師」というひとつの国家資格で対応することができます。

例えば、採血、血液検査(血液の検査の中でも幅広い種類があり、それぞれに臨床検査技師が配置されます)、微生物検査、病理検査、生理検査、遺伝子検査…最近はタスクシフト事業で内視鏡検査なども加わり、多くの検査を手掛けています。

私の専門は生理検査です。その中でも超音波検査を得意としており、その道を極めるべく大学院にまで行ったほどです。

臨床検査技師のフリーランスって?

一般的には臨床検査技師は総合病院に所属し、その病院にだけ勤務する形態がほとんどです。

クリニックや大学の教員、医療機器メーカーで務める人もいますが令和3年度の日本臨床衛生検査技師会の調査によるとまだまだ少数派のようです。

さて、フリーランスっていったいどういうこと?というお話ですが、私はひとつの病院に所属するのではなく、クリニックを中心として別の病院にも行くという勤務形態をとっています。

鳥取ではほとんどの総合病院の規定に正規職員(常勤)は副業禁止とされております。

また法的にもチーム医療の観点から臨床検査技師の「派遣労働」のようなものは禁止されております。

しかし、「個人事業主」つまりフリーランスとして複数の病院と契約することは禁止されてはいません。

私はとある思いがあって鳥取県でフリーランスをやってみました。

(ここでやっとタグのお話しです。)

どうしてフリーランスになったの?

医療職ではない方だとなかなか実態がわからない部分もあると思いますが、病院の給与報酬はほぼ年功序列です。(都会では違うところもある?)

いくら頑張って技術を取得して、学会に参加もして、認定資格をとって、たくさんの検査をこなして、、と頑張った人も、それをしない人も同期であれば同じ給与です。

「患者さんのために」、私もそう思って頑張って技術向上に努めました。

しかし、「患者さんのために」ができるのは「自分が安定している状態」ではじめて達成されるのです。

自分愛せなきゃ、他人も愛せない
ーDon't say Lazy  の一節

私はうつ病による休職や他の持病もあったため、金銭的に苦労する場面が多い中で認定資格などを目指したため、資格維持や学会費などの捻出をすると貯金などほとんどできない状態でした。

まさに働くために働いているような状態です。

これって本当にいいのかな??

そう思ったときに、なぜ臨床検査技師は専門職なのに病院が規定した給与通りに働き、そこに不満を持つことは悪とされてしまうのか。という疑問が生じました。

これはフリーランスになる動機のたった一因でしかありませんが、紆余曲折あって私は病院の決めた枠組みから解放される道を選んでみました。

フリーランスで何が変わるの?

一番大きな変化は

「報酬の交渉が可能である」

ことです。

臨床検査技師の求人などをみても、基本的には病院が一方的に決めた報酬や待遇でそれを飲める人が応募してくださいね?という形式です。(これは他の職種も同様かと思います。)

そこを私は、個人の伝手などをたどって病院と面談して交渉し、双方の納得いく報酬と待遇で働くことができるようになりました。

もちろん、最初からうまくいくなんてことはなく、つらい思いもたくさんしましたが、今現在はとても楽しく働けています。

給与を気にするのは悪いこと?

たまにTwitterなどで、医療職は「やりがい」が報酬であり、お金の話なんてするもんじゃない。といった労働への対価を「やりがい」で払おうとする思考を持つ方がいます。

「やりがい」、たしかに大きいです。私は臨床検査技師になってたくさんの患者さんの検査をさせてもらって、とてもやりがいを感じています。

時にはひとりの患者さんの検査所見について、文献をあさってどのように結果を解釈して医師に伝えるべきかたくさんの時間をかけて考察し、検討することもあり、それすらも喜びだと感じています。

ただし、それはやってる本人にしか「やりがい」だからやってますと言えないと思います。赤の他人が「やりがい」あるんだからその労働の対価となるお金は労働ほどあげませんよ?というのは違うんじゃないかなと思います。

等価交換の法則
~鋼の錬金術師より~

私はこの法則はとても重要で、人間社会において意識しておくべき法則だと感じます。

労働にはそれ相応の対価を。

私がこれを勧める理由は他にもあります。それは臨床検査技師の技術向上を促すためです。

実のところ、臨床検査技師の中でも日々学び、日々努力する人材と、そうでない人材がいます。

もしあなたが頑張っても頑張らなくても給与は一緒です、と言われて頑張り続けることができるでしょうか?

おそらく、私が目にしてきた「あぁ、疲れてしまわれたのだろうな」という先達たちは、頑張り続けるモチベーションを自力で保てなくなったのだと思っています。

臨床検査技師はいらなくなる?

たまにそんな声も耳にします。

いらないならとっくにいらなくなっていると思います。なぜならすでに臨床検査の検体部門は自動化機器が普及しているからです。

だから人件費カットの対象にもなりやすいのですが、それは臨床検査技師の仕事をわかっていない経営陣の判断の誤りだと私は思います。

自動化機器といえどエラーを起こします。たとえば検体不良、たとえば特殊検体。さらには日々の精度管理が必要です。試薬調整や試薬管理、無駄なく試薬を使うための工夫、これらを平日にしっかりと検体検査担当の臨床検査技師がしてくれているので、例え夜間の緊急検査や休日であってもうまく検査ができるのです。

私の担当している生理検査もいつかはAIが普及して、今ほどの技量を要求されなくなるかもしれません。しかし、AIの判断の誤りの修正、患者の状態にあわせた検査の組み立て、これらは人間だからこそできるものだと思います。

話をもどします!

思うがまま書いていたら話が逸れてしましました。

話をもどしますと、フリーランスになることで「交渉」が可能になったのです。

東京や大阪などの都市部では私よりも前にフリーランスとして活躍されている方がいました。

都市部では病院数も多く、複数の病院にこの時間だけ勤務などがしやすいうえにある程度、フリーランスという存在を受け入れる土壌が整っています。(都市部では都市部ならではの苦労があるとおもいますが。)

私のいる鳥取県ではフリーランスなんて聞いたことないし、病院同士も離れているし、私がはじめてだし、とても大変でした。

しかし、私がフリーランスとして「交渉」をやってみたことで前例ができました。

今まで臨床得検査技師はどんなに技術をもっていても病院と交渉するという立場にいなかったところを、技術さえ認めてもらえれば「交渉」することができるということが現実になりました。

まだまだ、そんな病院が多いわけではありません。

しかし、私が今後、この活動を通じてアピールしていくことで、臨床検査技師の働き方を改革し、そのことが患者さんや地域医療への貢献につながっていくのではないかと期待して、これからも頑張ろうと思っているところです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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