カサンドラ症候群脱却のための4ステップ その②ASDの特性を理解する 『ASDに付随する性質について』 (1)失感情症(アレキシサイミア)

前回の記事ではASDの特性について書きましたが、今回は“ASDの特性として語られているわけではないけれども、ASDの人に現れることが多い性質”について書いていきます。

「ASDの特性ではないなら敢えて学ばなくても良いのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、むしろこちらを学ぶことで目の前にいるASD者の行動への理解が進むことも多くあるはずですので、しっかり押さえておきたいところです。

まずは失感情症から見ていきましょう。


『失感情症(アレキシサイミア)』とは


失感情症とは、自らの感情を自覚・認知したり表現することが不得意である傾向のことです。

感情を失うと書きますが、感情がないということではないので注意が必要です。

具体的には、怒りや悲しみ、あるいは喜びなどの感情が芽生えたときにそれに気づけず「なんかもやもやする」「何か分からないけど苦しい感じがする」といった認知になります。

これにより、嬉しい気持ちであるにもかかわらず「胸がざわついて嫌な感じ」と捉えてしまったり、怒りや悲しみを上手に他者に伝えることができずにストレスを抱えてしまうことがあります。

失感情症とは別ですがASD者は表情を使うことも不得手としていますので、辛い思いを抱えていたとしても他者に気づいてもらいづらく、ケアやサポートなどの配慮的アプローチを得づらいこともASD者の日常的困難として挙げられます。
このようなとき定型者は「まさかそんなに思い悩んでいるようには見えなかったし気づかなかった」というような感想を抱くでしょう。

また、他者から何かを言われた時に、その場では何も感じていないつもりが後になってよくよく考えると腹が立つなど、時間差で感情に気づくこともあるため、リアルタイムでの議論が難しいところがあります。

こういったところからASD者のメンタルが拗れていってしまう恐れがありますので、より早期に発見し効果的な配慮やアプローチをしていくことが大切です。


【失感情症を持つASD者への効果的なアプローチとは?】


例えばASD者が悶々と考え込んでいたり無表情で黙り込んだりしている時には「今どんな気持ち?」「何考えてるの?」といった質問をするとASD者の思考をサポートしてあげることができます。

ただし注意したいのは、このときにはしっかりとした信頼関係ができている必要がある点です。
これは長く一緒にいるからとか家族だからと言っておろそかにはできません。
『私はあなたの敵ではありません』『私はあなたを決して攻撃しません』という段階から『私はあなたの味方です』『私はあなたを助ける存在です』という段階まで、ASD者が無意識レベルで理解(信頼)していなければ全くの逆効果になりかねないためです。

このように苦労してやっとASD者の口から言葉を聞き出せたとしてもおそらくはあいまいな表現であったり、本人が心の状態を正確に捉えられていないことによる誤表現や微妙なニュアンスの違いなどがあるかもしれません。
そのため、さらにサポートが必要です。
それは要約や掘り下げの質問と軌道修正です。

要約は「それってつまりこういうこと?」
掘り下げは「それってどういうこと?」「もう少し詳しくお願い」
軌道修正は「他にはどんなことが考えられる?」「そっちよりもこっちのほうが正確じゃない?」

といった形になります。
ここで大事なのは(というよりいつでも大事なのですが)決して否定をしないということです。
そしてASD者が考えている間はじっと待つことです。
「問いかけたら黙り込んでどこかに行ってしまい、3日後に返答をされた」といったエピソードもしばしば聞きますが、実際ASD者にはそのくらい思考時間が必要なこともありますし、3日後であれ返答があったということはその間考えていたということの証明でもあります。
無言でどこかに行ってしまうのも無視をしているのではなく、一生懸命考えていて周りが見えなくなってしまっているだけかもしれません。

長くなってきた&脱線してきたので今回はこの辺で。
失感情症(アレキシサイミア)について大まかにではありますがお話ししました。
次回はASD者と定型者の価値観の違いについてお伝えできればと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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