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夏の運動、水は飲むより先に、掛けるべき

猛暑シーズン到来。世間では「外出時には水分補給を!」というフレーズが乱発されるが、騙されるな。真実は、

水 を 身 体 に か け ろ

なぜなら、

「熱中症」の本質は「熱」であり、「水」ではないから

水をかけて体温を下げれば、発汗量が減って、そもそも水分補給が必要な状況を遅らせることができる。結果、胃腸にも優しい。あたりまえの話だ。

そんなことを書いてる僕は、酷暑&多湿の真夏のトライアスロン大会に何度も出て、国内大会20レース連続表彰台などなど、暑さ対策を失敗したことがない。気温35℃とかでも人類は2時間くらい動き続けることは可能だ。その経験ふまえて説明しよう。

※あえて暑くしたいなら別。水をかけずに走って体温を上げよう。流行りのサウナが無料で実現するようなもので、これはこれでオトクなライフハックだと思ってます。適量は守りましょう。

汗の冷却効果は不十分

汗とは、皮膚表面に水分を浮かせ、蒸発させた気化熱で冷却効果を得る仕組みだが、効果が低すぎる。

汗の問題点:
1.水分量に限界がある
2.水温(=汗温)は体温、ぬるま湯を塗っているようなもの
3.湿度が高いと、気化熱が機能しにくくなる

そもそも野生動物と全く同じ仕組みなわけだ。まあ人類は他の多くの動物よりも汗腺が発達しているそうで、汗だけでなんとなってきた、という成功体験はあるだろう。水さえ飲んでおけば、勝手に体温調整してくれるのだから。

しかし、いまや文明すら操る人類が、そんな原始的システムにいつまで頼り続ける気なのか? まして高温化が進み、かつ運動の健康効果が明らかになってゆく現代社会において。それはもはや思考停止とすらいえる。

水を掛ければ解決

かわりに、水を掛け続ければ、これら問題をクリアできる。

水を掛けるメリット:
1.無限に水をかけられる(公園などの水道が使える)
2.水道水は体温よりはるかに冷たい
3.蒸し暑くても、水温、水の流れ、など体温低下要素が複数

体温が上がるから汗が出て水不足になり、「水分補給を」と言われてるわけだが、そもそも体温上昇自体を防げばよい。単純な理屈だ。

移動速度が速いほど効果があるので、自転車では基本テク。ランニングでも速いほど効果ある。散歩とか低速だと、風の強さ次第になるので、扇子など持ち歩いて風と併用するがよい。手持ち扇風機という手もあるが、扇子団扇のほうがエコだし手の運動になって痩せられるぞ。

<短期的効果>
水を掛けた瞬間は、冷たい水との温度差で、皮膚表面から熱が急速に水に移動し、瞬間冷却効果が高い。
これにより、メンタル的な効果もあるはず。脳さんを「OKまだいける!」と騙してあげるのは、元気なうちなら、結構大事。

<中長期>
その短期効果が消えた後でも、表面に水分が保たれている限りは、気化熱が効き続けて、体温上昇を抑制してくれると思う。

熱中症を防ぐために最も大事なのは、深部体温を上げないこと。その前に、あらゆる方法で、体温上昇抑制を図るのだ。結果として、発汗トータル量も抑えられ、水とミネラル分の欠乏も避けられて、内臓レベルでの疲弊も抑制できる。

方法いろいろ

方法は簡単。水道水を空のペットボトルにでも入れて、少しづつウェアに水を含ませる。頭、首は冷却効果が高いからこまめに。暑さによるパフォーマンス低下は、頭を冷やすと、脳がある程度は騙されてくれて、効果がある気がなんとなくしている。

ウェアに水を含ませておけば、気化熱の効果を継続的に得ることができる。「冷却タオル」など首に巻くなどして、水を掛けていくのも、レビューなど見聞きする限りなかなかよさそう。

上記商品ページの、5-6-7あたりが基本。頭は髪と帽子とを濡らしておく手もある。

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冷却材をグローブ的に、てのひらにハメるタイプのもある。すぐ温まってしまうだろうけど、凍傷おこさないレベルに凍らえて、取り替えながらで、サッカーとかで使えるかもだ。

<自転車の場合>
自転車に載せたボトルから常時掛けられるし、常に風を浴び続けるので、効果が高い。そこで夏のスポーツといえば(水泳を別格として)、自転車がいいと思っている。ただ、実際は路面温度が60℃とかになってたり、環境の問題には注意。

<ランニングの場合>
は、公園などで周回コースを取れば、合間で水道水を使える。真夏でも、木の多い公園だと日陰も多く、意外と涼しい。

<トレイルランニングの場合>
Twitterで情報いただきまして、

トレランの場合、エイド間が長く、水をジャブジャブ使えないのもあり、ウェアを濡らすのが基本かな。

いかにも、汗=電解質の喪失。塩分ミネラル分補給が必要になる。気安くいわれる「水分補給」とは実は簡単ではないの。その状況をまず予防すべきだ。

<暑すぎたり湿度が高すぎたりな場合>
冷たい水を流し、温度差で体温を下げることも必要だろう。

<僕の場合>
暑すぎて極端に人が少ない(笑)砧公園などを走りながら、インターバルのレストで蛇口の下に頭を置いて水を流し続けて冷却するのが好き。犬レベル笑。自転車では腕、脚、を紫外線防止でカバー着て、レストで水を掛ける。静止時には蒸れて不快ですらあるが、時速40kmで走り始めればすーっと冷えていく。

注意点:バシャー!!と豪快には掛けない

これは初歩的な、しかし意外と知られていない(気がする)注意点だが、「バシャー!!」と豪快にかけない方がいいと思う。なぜなら、

1.水の消費量が無駄に多くてエコではない
2.水の補給が無駄に必要になる
3.周りに人がいたら迷惑(当然)
4.シューズまで水が入りがちで、靴ずれ、マメ、などの原因になる。

目的はスポーツ時の「効率のよい体温調節」なのであって、シャワーのような「気持ち良さ」まで求めるべきではない。

もしかして日本人、【水垢離】みずごり のイメージが強いのかもだ。

神仏に祈願するため、冷水を浴びて体のけがれを去り、清浄にすること。冬とかにやると映えるやつだが、こっちはシチュエーション逆。去るのは体のけがれではなくて熱。目的が違う。

なぜ「水分補給」といわれるのか?

以上、アタリマエのことを淡々と書いてきたつもりだ。それでもTVとかではあんまり言われない。なぜなのか?

たぶん大きいのは、「運動習慣のない一般人」と「鍛えているアスリート」との差だ。医学研究の主対象は圧倒的多数派である一般人向け。マスメディアに載るのもそっち。そして僕らスポーツする人は、例外、であるのに、どうしても情報量の多い一般人向けの影響を受けてしまう。

あと、お行儀が悪い、という理由もあるだろう。特に学校などマナーを重視する場では。しかし、お行儀を守るより、まず自分の体を守るべき。もちろん実行時にはマナーを守ってやるのは当然。

あと民放なら、CMをチェックするといいかもしれないね?(詳細自粛)(1つだけいうと、スポーツ●●●●と呼ばれる商材を飲み過ぎてオーバーカロリーにならないようにしましょう)

水分補給の新常識

念のため、水分補給自体は必要なことだ。ここで書いているのは、「水分補給が必要となるタイミングを遅らせ、その量を減らす」ための方法だ。
水分補給について、この数年間の最新情報を整理すると、

スポーツ時の水分補給の注意点:
ルール1.喉が渇いた時にだけ飲め
ルール2.塩のバランスを保て 

今の報道やSNSなどの状況から、「水を飲めばいい」と誤解されると危険だと思う。ガブガブと水分を飲みすぎるとお腹が無駄にガブガブになる。レースではこの失敗が多い。塩分が足りないと低ナトリウム血症のリスクがあり、スポーツドリンク類は無駄カロリー摂取。(カロリー抜きのスポーツドリンクは不味くて商品化されない)

くわしくは2015年ブログを↓

東京五輪2021の場合

酷暑化でのパフォーマンスが予想された昨夏のオリンピックでは、各国とも、暑さ対策を入念に準備してきた。結果、東京の真夏程度なら2時間くらい動き続けてもOK(自転車ロードでは6時間以上)と証明された。

ただ、彼らはサポート体制が厚くて、ベストコンディションの氷などを潤沢に使うことができ、われわれ一般人が普段使いするのは難しいものも多い。その中で、最も手軽で、効果あるのが、「水かけ」だ。十分に冷やされたボトルが潤沢、というくらいの差はあるが。

女子ロードレースで奇跡の金メダル獲得した数学博士キーゼンホファー選手も、単独エスケープ中に、モーターバイクの保冷庫から何度も水ボトルをもらって、身体に掛けていた記憶があるし、

お台場の海を泳ぐ会場設定で炎上していたトライアスロンも、とくに男子は酷い暑さだったが、水を掛け続けながら、BMI25超、174cm77kgの肉弾ブルンメンフェルトが優勝したし

(さすがに暑すぎてゴール後に熱中症気味に吐いていたが〜なおお台場汚水原因の吐き方ではない)

レースの場合

トップ画像は2015年の愛媛県・愛南トライアスロンでのランパート。バシャーとかけるなといいつつも、時速15kmを超えて走り続けながらコップを操るとまあこうなりますーー

長距離トライアスロンでは、バイクのエイドステーションが長い。ハワイ世界選手権では高速道路の路側帯部分に、体感的には100m以上の長さがあった気がする。そこで、水ボトルをもらって「1つのエイド内で掛けきってゴミ箱に捨てる」と良い。エイドの最後には必ずボトル捨て場がある。ここ逃すと次のエイドのゴミ捨て場まで空のボトルを運ばねばならない。エイド内で捨てられればその分だけボトルを貰って持っていける。

掛水専用の水ボトルを積むと、当然その分重くはなるけど、パフォーマンス向上効果がはるかに上回る。重量増のダメージはわずかだが、体温上昇してしまうと破壊的ダメージすらありうる。

実際、レース中に、ウェアに汗の塩が白く浮いてる人たちは多い。この人達は水を掛けていなんだろうなあとみている。

拙書もご覧ください:

動きの少ない競技では?

この方法の難点として、野球のような移動量が少ない競技では、風が出ていないと、十分に気化熱が効果発揮してくれない気がする。(僕は経験あまりないのでよくわからないが)

この場合、早朝や夜に練習試合するのが現実的かなと思う。とはいえ高校野球とか試合数の都合で、昼間にやらざるを得ないのはあるか。

※早朝や夜の涼しい時間帯、あと、木陰など、環境面の工夫は、どんな活動でも有効 (当然すぎるので省略)

できれば、工事の人とかが使ってる「空調服」=扇風機を服に仕込んだのを使えるとよい。

ルール上だめなら改正すべき、それくらい大事なことと思うが。

・・・

このnote書いた後でおもいだした、2019年に同じテーマで書いたもの:

酷暑下のトレーニング術 -- 戦うな、和解せよ(2019年8月3日)

スポーツ熱中症対策は、まず水を掛けろ!(2019年8月11日)

(ほぼ同趣旨、同内容でしたー笑)

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